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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第64話「通知が鳴る夜」

三月下旬。

夜。

玲緒菜の部屋。

机の上には、 開きっぱなしの参考書。

もう受験は終わっている。

……はずだった。

でも。

心だけが、 まだ終われない。

スマホを開く。

メール。

大学サイト。

更新なし。

篠田玲緒菜

「……はぁ」

ベッドへ倒れる。

天井を見る。

静かすぎる。

コンコン。

「玲緒菜ー?」

「入るよー」

扉が開く。

母がマグカップを持って入ってくる。

「カフェオレ置いとくね」

玲緒菜

「ありがと」

母は少しだけ娘を見る。

「……まだ見てるの?」

玲緒菜は苦笑い。

「まあね」

「そんな何回も見ても変わらないでしょ」

玲緒菜

「分かってるって」

「でも見ちゃうんだよ」

母はベッドに座る。

「不安?」

玲緒菜は少し黙ったあと、 小さく頷いた。

「……うん」

「なんかさ」

「中途半端なんだよね」

「落ちたなら落ちたで切り替えられるのに」

声が少し掠れる。

「期待していいのか分かんない」

母は静かに聞いていた。

玲緒菜

「みんな進路決まってるのに、 私だけ止まってる感じするし」

「でも、ここまで頑張ったじゃん」

玲緒菜

「結果出なきゃ意味ないよ」

言った瞬間。

自分で少し後悔した。

母は怒らない。

ただ静かに笑った。

「じゃあ、お母さんは意味ない娘育てたの?」

玲緒菜

「……そういう言い方ずるい」

「結果だけで頑張り決まるなら、 世の中ほとんど無意味になっちゃうよ」

玲緒菜は視線を落とす。

「まあでも」

「今、不安なのは本気だった証拠だね」

その言葉が、 少しだけ胸に残る。

ピコン。

玲緒菜

「っ!」

反射的にスマホを掴む。

通知。

LINE。

龍也

『生きてる?』

玲緒菜

「……なんなのこいつ」

母が笑う。

「いい友達じゃん」

すぐに追加通知。

瑠姫愛

『病んでそうだから通話しよーぜ』

結衣

『玲緒菜、絶対今ネガティブ入ってるでしょ』

一将

『龍也がうるさいから集合になった』

武田雷斗

『来い』

玲緒菜

「雑」

でも。

少しだけ笑っていた。

数十分後。

グループ通話。

龍也

『よぉ補欠ヒロイン』

玲緒菜

「ぶっ飛ばすぞ」

結衣

『あ、元気じゃん』

瑠姫愛

『思ったより声死んでなかった』

玲緒菜

「お前ら失礼すぎない?」

龍也

『いや絶対ベッドで天井見ながら“私だけ取り残されてる……”とかやってると思った』

玲緒菜

「……」

沈黙。

龍也

『え、図星?』

玲緒菜

「うるさい」

全員吹き出す。

結衣

『分かりやすすぎるでしょ玲緒菜』

瑠姫愛

『かわいいかよ』

玲緒菜

「かわいくない」

その空気を、 雷斗が静かに切る。

武田雷斗

『で』

『飯食った?』

玲緒菜

「……まだ」

雷斗

『だから病むんだよ』

玲緒菜

「関係ある?」

雷斗

『ある』

『腹減ると人間ネガティブになる』

龍也

『それはマジ』

一将

『意外と正論』

瑠姫愛

『雷斗ってたまに生活力あるよね』

雷斗

『たまにってなんだ』

玲緒菜は少し笑う。

その笑い声に、 結衣が安心したように言う。

『よかった』

玲緒菜

「え?」

結衣

『最近ずっと張ってたから』

『今の玲緒菜、ちょっとだけ普通に戻った』

玲緒菜は言葉に詰まる。

龍也

『まあでもマジで』

『補欠って一番しんどいよな』

急に真面目な声。

『落ちたなら次考えるしかないけど、“まだ可能性ある”って逆に心休まんねーし』

玲緒菜

「……うん」

一将

『でも可能性がゼロじゃないなら、待つしかない』

瑠姫愛

『玲緒菜ってさ』

『ずっと“頑張らなきゃ”で走ってたじゃん』

『だから今、“待つだけ”が苦しいんだと思う』

玲緒菜は静かになる。

図星だった。

何かしていれば安心できる。

勉強して。

努力して。

積み重ねて。

でも今は。

待つしかない。

それが一番苦しい。

その時。

雷斗がぽつりと言う。

『玲緒菜』

「ん?」

『お前、受かるために何年頑張った』

玲緒菜

「……え」

『数日待つくらいで、自分の全部疑うな』

空気が静まる。

雷斗

『お前がやってきた量、俺ら全員知ってる』

『だから今さら一人で否定すんな』

玲緒菜の目が熱くなる。

龍也

『うわ』

『今日の雷斗なんか主人公感ある』

瑠姫愛

『それな』

結衣

『刺さったわ今の』

一将

『珍しくいいこと言った』

雷斗

『うるせぇ』

玲緒菜は笑ってしまう。

涙が滲む。

でも。

今度は苦しい涙じゃなかった。

玲緒菜

「……ありがと」

誰も茶化さない。

静かな空気。

その時だった。

ピコン。

玲緒菜のスマホが震える。

全員止まる。

玲緒菜

「……え」

画面。

大学からのメール通知。

息が止まる。

龍也

『おい』

瑠姫愛

『待って』

結衣

『来た!?』

玲緒菜の手が震える。

雷斗

『開け』

玲緒菜

「む、無理……」

心臓が痛い。

指が動かない。

一将

『玲緒菜』

『大丈夫だから』

玲緒菜は震える息を吐く。

そして。

ゆっくり。

通知をタップした。

画面が開く。

数秒。

沈黙。

玲緒菜の目が、 大きく揺れた。

「……え」

全員が息を呑む。

玲緒菜の唇が震える。

そして。

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