第63話「止まったままの通知」
三月下旬。
☆
補欠合格。
その言葉は、 思っていた以上に曖昧だった。
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“希望がある”
でも。
“安心はできない”。
☆
玲緒菜は、 毎朝スマホを見る癖がついていた。
通知。
メール。
大学サイト。
何度確認しても、 画面は変わらない。
☆
篠田玲緒菜
「……まだか」
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自分でも分かっていた。
数日で変わるものじゃない。
でも。
待つしかない時間は、 想像以上に苦しかった。
☆
春休み。
学校には、 もう人が少ない。
卒業式も終わった。
教室の空気は、 どこか抜け殻みたいだった。
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玲緒菜は窓際の席に座りながら、 外を見ていた。
校庭。
部活。
笑い声。
全部が少し遠い。
☆
ガラッ。
教室の扉が開く。
武田雷斗。
☆
雷斗はいつものように、 無言で隣に座った。
玲緒菜
「……今日も来たの?」
武田雷斗
「悪いか」
「いや、別に」
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少しだけ沈黙。
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雷斗が缶コーヒーを机に置く。
「ほら」
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玲緒菜は少し笑う。
「ブラック飲めないんだけど」
「知ってる」
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雷斗がもう一本、 ミルク多めの缶を出す。
玲緒菜
「最初からそっち渡してよ」
武田雷斗
「ネタ」
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思わず吹き出す。
久しぶりに、 自然に笑った気がした。
☆
でも。
笑ったあと、 また不安が戻る。
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玲緒菜
「……怖いんだよね」
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雷斗は何も言わない。
玲緒菜は続けた。
「期待して、落ちたらどうしようって」
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声が小さい。
「“補欠”ってさ……」
「待ってればいいのか、 諦めればいいのか分かんない」
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雷斗は窓の外を見る。
しばらくして。
静かに言った。
「まだ終わってないなら、 終わった顔すんな」
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玲緒菜は目を丸くする。
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「お前、最後まで足掻いてただろ」
「今さら途中で止まんな」
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不器用。
でも。
その言葉は、 真っ直ぐだった。
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玲緒菜は小さく俯く。
「……うん」
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その時。
教室の扉がまた開いた。
天野一将。
結衣。
瑠姫愛。
龍也。
全員集合。
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龍也
「なんか暗くね?」
結衣
「空気重い!」
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瑠姫愛が玲緒菜の前に座る。
「ねえ、今から遊び行こ」
玲緒菜
「え?」
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「待ってるだけだと病むよ」
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結衣も頷く。
「受験終わったんだから、 一回くらい息抜き必要」
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一将が静かに言う。
「それに」
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全員が見る。
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「玲緒菜だけ置いて、 春始める気ないし」
空気が止まる。
玲緒菜の目が揺れる。
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龍也
「お前が決まるまで、 まだ“全員終了”じゃねーから」
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その瞬間。
玲緒菜はとうとう笑ってしまった。
涙を滲ませながら。
「……重いんだけど、みんな」
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結衣
「今さら?」
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教室に笑い声が広がる。
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まだ結果は出ていない。
まだ不安はある。
でも。
一人じゃない。
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春はきっと、 もうすぐそこまで来ていた。




