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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第62話 「それぞれの春」

三月中旬。

合格発表は、まだ続いていた。

一気に終わるわけじゃない。

それぞれの大学が、 それぞれの時間で結果を出す。

教室には、 静かな緊張が残っていた。

結衣と一将の合格が出てから数日。

空気は少しだけ明るくなっていた。

結衣

天野一将

でも。

まだ“全員”ではない。

その日。

瑠姫愛がスマホを見た瞬間、 手が止まった。

瑠姫愛

「……受かった」

龍也がすぐ振り向く。

龍也

「マジで!?」

瑠姫愛は少しだけ笑う。

涙が滲んでいる。

「早稲田、受かった……」

次の瞬間。

龍也が頭を抱えた。

「よっしゃああああ!!」

屋上みたいな場所にいた空気が一気に崩れる。

結衣も笑う。

「ほんとに続いてるじゃん!」

一将は静かに一言。

「順調だな」

その“順調”が、 どれだけ重いかはみんな分かっていた。

その日の午後。

普通科。

雷斗はスマホを見たまま動かなかった。

武田雷斗

「……受かった」

玲緒菜が顔を上げる。

篠田玲緒菜

「ほんとに?」

雷斗は少しだけ息を吐く。

「京大」

短い言葉。

でも。

そこに全部が詰まっていた。

玲緒菜は笑う。

「おめでとう」

雷斗は少しだけ頷いた。

「お前のおかげもある」

玲緒菜が止まる。

「……それは違うよ」

でも。

嬉しかった。

そして。

夕方。

教室。

担任が静かに言う。

「最後だな」

全員が息を呑む。

残っているのは、 ただ一人。

玲緒菜。

スマホを握る手が冷たい。

京大。

合格発表。

指が震える。

タップ。

画面が開く。

数秒。

沈黙。

そして。

「……あ」

玲緒菜は画面を見つめたまま動かない。

「補欠……?」

教室が静まる。

誰もすぐに言葉を出せない。

補欠合格。

“合格でも、不合格でもない場所”。

玲緒菜は小さく笑う。

「……なんだそれ」

目が潤む。

雷斗が隣に来る。

「まだ終わってない」

玲緒菜は顔を上げる。

「でも、まだ決まってない」

雷斗は静かに言う。

「可能性はある」

その言葉が、 少しだけ胸に刺さる。

結衣が優しく言う。

「玲緒菜、大丈夫」

瑠姫愛も頷く。

「ここまで来たんだよ」

龍也が笑う。

「最後までドラマ残すタイプだな」

少しだけ空気が柔らかくなる。

でも。

玲緒菜の中には、 まだ揺れがあった。

“合格”じゃない。

でも“終わり”でもない。

春は、 もう目の前まで来ているのに。

それでも。

彼女の物語だけ、 まだページが残っていた。


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