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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第65話「春が来る音」

玲緒菜の呼吸が止まる。

スマホを持つ手が震えていた。

グループ通話。

誰も喋らない。

龍也

『……おい』

返事がない。

結衣

『玲緒菜……?』

玲緒菜の目が、 画面に釘付けになっている。

文字を読んでいるはずなのに、 頭に入ってこない。

“補欠合格者繰り上げのお知らせ”

その一文だけで、 世界の音が遠くなる。

玲緒菜

「……うそ」

声が震える。

瑠姫愛

『え』

龍也

『どっち!?』

玲緒菜の喉が詰まる。

涙で画面が滲む。

うまく見えない。

もう一度、 読み直す。

『この度、補欠合格者として選考しておりました篠田玲緒菜様につきまして――』

心臓がうるさい。

『正式に合格となりましたことをご通知いたします』

その瞬間。

玲緒菜

「……っ、受かった……」

数秒。

誰も反応できない。

そして。

龍也

『うおおおおおおおおお!?!?』

鼓膜が壊れそうな絶叫。

瑠姫愛

『うそ!?!?!?』

結衣

『きたぁぁぁぁ!!』

一将ですら、 珍しく声を上げた。

『……マジか』

玲緒菜はもう画面を見られない。

涙が止まらない。

玲緒菜

「っ……やば……」

「ほんとに……?」

何度も確認する。

名前。

受験番号。

通知内容。

全部、 自分だった。

龍也

『全員合格じゃねぇかぁぁ!!』

瑠姫愛

『やばいやばい泣く泣く泣く!!』

結衣の声も少し震えていた。

『玲緒菜、おめでとう……!』

玲緒菜

「……っ、ありがと……」

言葉にならない。

ずっと苦しかった。

ずっと怖かった。

“もしダメだったら”を、 何回も考えた。

でも。

全部。

今、 報われた。

その時。

ずっと黙っていた雷斗が、 小さく息を吐く。

武田雷斗

『……だから言っただろ』

玲緒菜

「……え?」

『終わってないって』

玲緒菜の涙がまた溢れる。

龍也

『いやお前カッコつけんな!!』

瑠姫愛

『最後だけ主人公すぎる!!』

結衣

『ズルいって今の!』

雷斗

『うるせぇ』

でも。

少しだけ笑っていた。

玲緒菜はスマホを胸に抱える。

涙が止まらない。

その時。

部屋の外から母の声。

「玲緒菜!? 大丈夫!?」

泣き声が聞こえたのだろう。

玲緒菜

「お母さん……!」

扉が開く。

母が慌てて入ってくる。

玲緒菜は涙ぐしゃぐしゃのまま、 スマホを見せた。

「受かった……!」

母の目が大きくなる。

「……え?」

玲緒菜

「京大……受かった……!」

数秒後。

母が一気に泣き崩れた。

「よかったぁぁぁ……!」

玲緒菜

「ちょ、泣きすぎ……!」

でも。

自分も泣いている。

「ずっと頑張ってたもんねぇ……!」

その言葉で、 また涙が溢れる。

グループ通話の向こうでは、 まだ騒ぎが続いていた。

龍也

『お祝い!!』

瑠姫愛

『焼肉!!』

結衣

『絶対集まる!!』

一将

『店予約するか』

雷斗

『高ぇとこ行くなよ』

龍也

『お前京大合格者だろ払え』

雷斗

『なんでだよ』

玲緒菜は笑う。

涙のまま。

声を出して。

こんな風に笑えたのは、 いつぶりだろう。

受験。

不安。

焦り。

恐怖。

全部。

簡単に消えるわけじゃない。

でも。

今だけは。

「終わったんだ……」

その言葉を、 ようやく自分に言えた。

窓の外。

春の風が、 カーテンを揺らしていた。

長かった冬が、 ようやく終わる。

そして。

それぞれの春が、 今、始まる。

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