第57話「二次試験まで」
一月下旬。
共通試験テストが終わり、学校の空気はさらに
変わっていった。
次は二次試験。
ここからは、本当に大学ごとの戦いになる。
朝。
教室。
以前より人が少ない。
推薦組。
私立推薦組。
少しずつ登校しない生徒も増えていた。
その静けさが、逆に緊張感を強くする。
結衣は席へ座りながら呟く。
結衣「あと一か月切ってるんだけど…」
龍也が苦笑する。
龍也「今更、気付いたの?」
「数字で見ると怖いの?」
でも。
以前のパニック感は少し違った。
共通テストを乗り越えた。
だからこそ。
覚悟みたいなものが、少しずつでき始めていた。
一将は静かに赤本を解いていた。
一将は東大数学が得意だ。
結衣が横を見る。
「もう読めない領域なんだけど…」
「慣れろよ!」
「慣れるのは怖いんだけどな!」
でも。
結衣も以前より、問題へ向かう目が変わっていた。
共通テスト満点。
あの結果が、少し自信になっている。
その頃。
普通科。
玲緒菜は京大の英語を解いていた。
以前より、手が止まらない。
E判定で崩れた時期。
あれを越えたからかもしれない。
雷斗が横から問題を見る。
雷斗「前より、早く長文解けてるじゃんか!」
玲緒菜が少し笑う。
「ちょっと慣れてきたかもしれない!」
雷斗は短く言う。
「毎日、英語を解いてきたし、諦めずに頑張ってきたからじゃないの?」
その言葉を聞くたび、玲緒菜は少し
安心する。
昼休み。
屋上。
冬空。
かなり寒い。
でも。
みんな自然とここへ集まる。
瑠姫愛がカイロを握りながら言う。
瑠姫愛「高校生活、あと少しで終わるじゃん!」
少し静かになる。
卒業。
受験。
大学。
全部、本当に近づいてる。
茉優が小さく笑う。
茉優「文化祭がすごい前みたいに感じるね!」
結衣が頷く。
「分かるな~その気持ち!」
受験が始まってから、時間の流れが異常に
速く感じた。
兼次郎が静かに言う。
兼次郎「終わるときは、みんな一緒だ!」
その言葉に、誰も反論できなかった。
放課後。
自習室。
今日も静か。
でも。
以前と違う。
みんな、迷いが減っていた。
怖い。
不安。
それは消えていない。
でも。
やるしかないと分かっている。
結衣は東大英語。
玲緒菜は京大数学。
龍也と瑠姫愛は、早稲田法学部対策。
全員、未来へ向かっていた。
その時。
結衣が急に顔を上げる。
「ねえ~!」
「ん?」
「受験終わったら何したい?」
少し空気が止まる。
龍也が笑う。
「みんなで卒業旅行かな?」
瑠姫愛も笑った。
「寝たいけど、やっぱり旅行かな!」
玲緒菜が小さく言う。
「みんなで遊びたいかも!?」
その言葉で、少しだけ空気が柔らかくなる。
受験が終わった先。
未来。
そこへ行くために、今戦っている。
夜。
帰り道。
結衣が空を見る。
冬の星空。
「…受かりたいな!」
小さい声。
一将が隣を歩く。
そして。
「受かるために頑張ってるじゃん!」
静かな声。
でも。
迷いがなかった。
結衣は少し笑う。
「一将くんって時々ズルいよね!」
「何が?」
「そういう真っすぐなこと普通に言うところだよ!」
一将は少しだけ首を傾けた。
「事実だろ?」
結衣は笑った。
二次試験まで、あと少し。
青春の終わりと、未来の始まり。
もうすぐそこまで来ていた。




