第56話 「勘違い」
共通テスト自己採点から二日後。
朝。
☆
教室の空気はまだ重かった。
☆
判定システム。
出願相談。
共通テストリサーチ。
☆
受験生たちは、 点数という現実と向き合っていた。
☆
その中。
結衣は机へ突っ伏していた。
結衣
「終わった……」
完全に沈んでいる。
☆
龍也が苦笑する。
龍也
「まだ言ってる」
「だって数学がぁ……」
☆
瑠姫愛も心配そうだった。
瑠姫愛
「結衣、昨日からずっと元気ないよね」
☆
当然だった。
☆
結衣は本気で、 “失敗した”と思っている。
☆
東大。
一将と同じ場所。
そこへ行きたかった。
でも。
共通テストで崩れた。
☆
そのショックが、 まだ抜けていない。
☆
一方。
一将は静かに問題集を解いていた。
天野一将
相変わらず冷静。
☆
結衣が恨めしそうに見る。
「なんで平然としてるの……」
「終わった試験だから」
「メンタル強すぎる!」
☆
その時。
担任が教室へ入ってきた。
☆
「共通テストの正式データ返ってきたぞー」
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教室がざわつく。
☆
結衣の肩が跳ねた。
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怖い。
見たくない。
でも見なきゃいけない。
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担任が一人ずつ返していく。
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そして。
結衣の前へ紙が置かれた。
☆
結衣はゆっくり見る。
☆
沈黙。
☆
「……え?」
☆
止まる。
☆
もう一回見る。
☆
数学。
☆
——満点。
☆
結衣の思考が完全停止する。
☆
「…………は?」
☆
龍也が見る。
「どうした」
☆
結衣は震える手で紙を見せる。
☆
「満点なんだけど」
☆
教室が止まる。
☆
「は???」
「え!?」
「マークミスじゃなかったの!?」
☆
結衣自身が一番混乱していた。
「え!?!?」
「でもズレてたよ!?」
☆
一将が採点表を見る。
そして静かに言った。
「問題番号見間違えてただけ」
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沈黙。
☆
結衣の顔が固まる。
☆
数秒後。
「えぇぇぇぇぇ!?!?!?」
教室爆発。
☆
龍也が笑い崩れる。
「二日間落ち込んでたの何だったんだよ!」
☆
瑠姫愛も笑って涙出てる。
「よかったぁ……!」
☆
結衣は完全にパニック。
「いや待って!?!」
「私二次終わった気でいたんだけど!?」
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一将が小さく息を吐く。
「騒がしい」
「だって!!」
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その時。
担任が苦笑しながら言った。
「ちなみに総合点、東大教育学部かなり上位な」
☆
静寂。
☆
結衣が固まる。
「……え?」
☆
「判定ほぼ満点クラス」
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再び教室騒然。
☆
「強すぎ!?」
「なんで病んでたんだよ!」
☆
結衣は机へ突っ伏した。
「恥ずかしいぃぃ……!!」
☆
顔真っ赤。
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二日間、 完全に絶望していた。
でも。
全部勘違い。
☆
玲緒菜も笑いながら言う。
篠田玲緒菜
「結衣らしすぎる……」
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雷斗も珍しく少し笑っていた。
武田雷斗
「無駄に落ち込んでたな」
「ほんとだよ!!」
☆
でも。
その空気で、 教室が少し明るくなる。
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ここ最近、 ずっと張り詰めていた。
でも。
今だけは、 みんな笑っていた。
☆
放課後。
帰り道。
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結衣はまだ顔を覆っていた。
「消えたい……」
一将が隣を歩く。
☆
「二日間ずっと人生終わったみたいになってた……」
「実際は満点だった」
「やめてぇぇ……!」
☆
一将が少しだけ笑う。
ほんの少し。
結衣が止まる。
「……今笑った?」
「気のせい」
「絶対笑った!」
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でも。
その空気が、 少し嬉しかった。
☆
冬の空。
冷たい風。
☆
受験は苦しい。
怖い。
不安になる。
☆
でも。
こういう時間が、 彼らを少しずつ支えていた。




