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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第48話 「E判定」

十月下旬。

雨。

放課後。

自習室。

空気は静かだった。

いつも通り。

受験生たちの空気。

その中。

玲緒菜は一枚の紙を見つめたまま動けなかった。

篠田玲緒菜

京大実戦模試。

判定。

——E。

頭が真っ白だった。

(……え)

意味が分からない。

夏。

頑張った。

全国模試もA判定だった。

でも。

今回は、 完全に崩れた。

特に数学。

大失敗。

焦った。

止まった。

崩れた。

玲緒菜は紙を握る。

呼吸が浅い。

周囲では、 普通に勉強の音がしている。

でも。

自分だけ別世界みたいだった。

その時。

椅子が引かれる音。

雷斗だった。

武田雷斗

「どうした」

玲緒菜はすぐ隠そうとした。

でも。

遅かった。

雷斗の視線が判定欄へ落ちる。

沈黙。

玲緒菜は笑おうとした。

「……終わったかも」

声が少し震えていた。

雷斗は紙を見る。

そして静かに言う。

「一回だろ」

「でもEだよ……?」

玲緒菜の目が潤む。

「京大実戦でEって」

「無理ってことじゃん……」

受験生にとって、 E判定は重い。

特にこの時期は。

雷斗は少し黙る。

そして。

「模試で合否決まるなら、受験いらない」

玲緒菜が俯く。

「でも怖い……」

「今まで全部崩れそう」

その声は、 かなり弱かった。

雷斗は静かに問題冊子を見る。

「数学だな」

玲緒菜が小さく頷く。

「焦った」

「途中で頭真っ白になった」

雷斗は短く言う。

「原因あるなら修正できる」

玲緒菜は少し顔を上げる。

「何となく悪かった、じゃない」

「焦って崩れた」

「なら対策できる」

静かな声。

でも。

妙に落ち着く。

玲緒菜は目を閉じる。

涙が少し零れそうになる。

「……悔しい」

本音だった。

A判定を取って。

少し安心していた。

でも。

受験はそんなに甘くなかった。

雷斗が静かに言う。

「だから秋は怖い」

玲緒菜が少し笑う。

「兼次郎くんみたいなこと言う」

「事実」

少し沈黙。

そのあと。

雷斗が小さく続けた。

「でもお前、ここで逃げないだろ」

玲緒菜が止まる。

その言葉で、 少しだけ呼吸が戻る。

夜。

帰り道。

雨。

玲緒菜は傘を差しながら歩く。

少し静か。

「……怖かった」

雷斗が隣を歩く。

「ん」

「A判定見たあとだったから余計」

模試。

判定。

順位。

受験は、 何度でも心を揺らしてくる。

玲緒菜は小さく言う。

「なんか、自分がダメになった気がした」

雷斗は少し歩いてから言った。

「一回で全部決まらない」

「お前が夏頑張ったのも消えない」

「今まで積み上げたのも消えない」

玲緒菜は少し目を見開く。

「E判定でも、お前はお前」

静かな声。

でも。

まっすぐだった。

玲緒菜は少し笑う。

涙を堪えながら。

「……うん」

受験は残酷だ。

頑張っても、 崩れる時は崩れる。

でも。

そこで折れるかどうか。

それが、 本当に試される瞬間だった。

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