第43話 「文化祭初日」
文化祭当日。
朝。
校門前。
☆
まだ開始前なのに、 学校はすでに騒がしかった。
装飾。
看板。
呼び込み。
音楽。
笑い声。
☆
一年で一番、 学校が“青春”になる日。
☆
結衣は校門前で深呼吸していた。
結衣
「……始まる」
その横。
一将は相変わらず冷静。
天野一将
「実行委員集合まで五分」
「急に現実戻さないで!?」
☆
しかし。
結衣はすぐ笑った。
「でも楽しみ!」
☆
校内へ入る。
完全に別世界だった。
☆
教室装飾。
メイド喫茶。
お化け屋敷。
縁日。
ステージ。
☆
受験の空気は、 今日だけ少し薄い。
☆
龍也が周囲を見回す。
龍也
「すげぇな」
瑠姫愛も笑う。
瑠姫愛
「高校最後って感じする」
☆
その頃。
普通科。
玲緒菜はクラスTシャツ姿だった。
篠田玲緒菜
髪も少しまとめている。
周囲の女子が騒ぐ。
「玲緒菜かわい!」
「写真撮ろ!!」
☆
そこへ。
雷斗が現れる。
武田雷斗
黒Tシャツ。
腕まくり。
文化祭仕様なのに怖い。
☆
女子たちがざわつく。
「雷斗くんやば……」
「雰囲気強……」
☆
玲緒菜が少し笑う。
「文化祭なのに怖い人いる」
雷斗が即答。
「うるさい」
☆
でも。
玲緒菜を見る目は少し柔らかい。
☆
午前。
文化祭スタート。
校内アナウンス。
歓声。
拍手。
☆
結衣は実行委員として走り回っていた。
「ステージ五分押しです!」
「次クラス準備お願いします!」
☆
完全に忙しい。
☆
龍也が笑う。
「めちゃくちゃ働いてるな」
一将が静かに答える。
「ずっと走ってる」
☆
その時。
結衣が廊下でつまずきそうになる。
「あっ」
☆
一将が腕を掴む。
自然に。
☆
結衣が止まる。
「……え」
近い。
距離が近すぎる。
☆
一将は普通に言う。
「前見ろ」
「い、今それどころじゃない!」
☆
顔真っ赤。
周囲の女子が騒ぐ。
「なに今の!?」
「青春!!」
☆
結衣は完全にパニックだった。
昼頃。
少し休憩。
屋上。
☆
全員集合。
ジュース。
軽食。
文化祭の騒がしさが遠くから聞こえる。
☆
玲緒菜が笑う。
「なんか今日すごい楽しい」
雷斗が隣で言う。
「浮かれてる」
「文化祭だから!」
☆
瑠姫愛が景色を見る。
「この時間、終わってほしくないかも」
少し静かになる。
☆
みんな分かっていた。
これが、 高校最後の文化祭。
☆
結衣が空を見ながら笑う。
「受験生なの忘れそう」
一将が即答。
「忘れるな」
「現実!!」
全員笑う。
☆
午後。
校内はさらに人が増えていた。
☆
ステージライブ。
ダンス。
演劇。
歓声。
☆
青春そのもの。
☆
その中。
玲緒菜はふと立ち止まる。
校舎。
空。
騒がしい廊下。
☆
(終わるんだな)
そんな感覚が、 少しだけ胸を締めた。
☆
その時。
雷斗が隣へ来る。
「何してる」
玲緒菜は少し笑う。
「青春感じてた」
「抽象的」
「でも今しかない感じするじゃん」
☆
少し沈黙。
そのあと。
雷斗が小さく言った。
「……なら楽しめ」
玲緒菜は少し驚く。
☆
でも。
すぐ笑った。
「うん」
文化祭初日。
騒がしくて。
楽しくて。
少しだけ切ない。
☆
高校生活の“終わり”が、 少しずつ近づいていた。




