第42話 「前夜祭みたいな放課後」
文化祭まであと一週間。
学校は完全にお祭り状態だった。
☆
廊下には装飾。
教室には段ボール。
放課後になっても、 誰もすぐ帰らない。
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受験生の学校とは思えないくらい、 騒がしかった。
☆
放課後。
超難関進学コース。
結衣は机に大量の紙を広げていた。
結衣
「無理ぃぃ……」
龍也が笑う。
龍也
「実行委員忙しそうだな」
「想像の五倍ブラック!」
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瑠姫愛も苦笑する。
瑠姫愛
「でも結衣ちょっと楽しそう」
「……バレた?」
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その時。
一将が資料を持って戻ってくる。
天野一将
「ステージ使用表」
「ありがとう!」
☆
結衣は資料を受け取る。
その時、 ふと一将の手を見る。
インク汚れ。
段ボールの擦れ傷。
☆
(……ちゃんと一緒に頑張ってくれてるんだ)
少し胸が温かくなる。
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一方。
普通科。
玲緒菜たちも準備真っ最中。
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教室では巨大背景制作。
玲緒菜は絵の具まみれだった。
篠田玲緒菜
「うわっ!?」
筆が滑る。
青い絵の具が制服へ。
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周囲が笑う。
「玲緒菜やば!」
「文化祭感あるー!」
☆
その時。
後ろからタオルが飛んできた。
雷斗。
武田雷斗
「使え」
玲緒菜が受け取る。
「ありがと」
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雷斗は普通に木材を運び始める。
玲緒菜は少し笑った。
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周囲の女子たちがヒソヒソ。
「雷斗くん優しくない?」
「いや絶対玲緒菜限定でしょ」
玲緒菜が赤くなる。
「聞こえてるから!?」
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夕方。
校内放送。
『各クラス、完全下校時刻を守ってください』
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でも。
誰も帰りたがらない。
☆
文化祭前の放課後。
この空気が、 特別なのをみんな知っていた。
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中庭。
結衣は資料を抱えながら歩いていた。
「疲れたぁ……」
その隣を一将が歩く。
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少し沈黙。
そのあと。
結衣が聞く。
「一将くんってさ」
「ん」
「高校生活、楽しかった?」
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一将は少し考える。
珍しく、 すぐ答えなかった。
「……前よりは」
結衣が少し止まる。
「前より?」
「今」
短い。
でも。
意味は十分伝わった。
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結衣の顔が熱くなる。
「急にそういうのやめて!」
「何が」
「天然怖い!!」
☆
一方。
玲緒菜たちは作業終了後、 教室に座り込んでいた。
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疲れ切っている。
でも。
どこか心地いい。
☆
玲緒菜が窓の外を見る。
夕焼け。
オレンジ色の校舎。
騒がしい運動部。
笑い声。
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「……終わっちゃうんだね」
小さく漏れる。
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雷斗が隣へ来る。
「何が」
「高校」
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少し静寂。
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玲緒菜は続ける。
「受験終わったら、みんな別々かもしれない」
「大学違うし」
その言葉には、 少し寂しさが混じっていた。
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雷斗は窓の外を見る。
そして静かに言った。
「まだ終わってない」
玲緒菜が少し笑う。
「それ前も聞いた」
「事実」
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でも。
その言葉が少し嬉しい。
帰り道。
夜風。
秋の匂い。
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文化祭前の学校は、 どこか“前夜祭”みたいだった。
楽しい。
騒がしい。
でも。
その奥で、 終わりが近づいているのを感じる。
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だからこそ。
今が、 少しだけ眩しかった。




