第41話 「文化祭実行委員」
十月初旬。
放課後。
教室。
☆
文化祭まで、 あと二週間。
校内は完全に準備モードだった。
☆
段ボール。
ペンキ。
装飾。
試作品。
笑い声。
☆
受験生だらけの三年ですら、 少し浮ついている。
☆
結衣は教室後方で騒いでいた。
結衣
「青春してる感じする!!」
龍也が呆れる。
龍也
「テンション高いな」
「高校最後の文化祭だよ!?」
☆
瑠姫愛も笑う。
瑠姫愛
「結衣、今日ずっと元気だよね」
☆
一方。
一将は普通に参考書を開いていた。
天野一将
結衣が即反応。
「なんで勉強してるの!?」
「受験生」
「今だけ文化祭モードになろうよ!?」
☆
そんな中。
担任が教室へ入ってくる。
「おーい、文化祭実行委員まだ決まってないぞー」
教室が静まる。
☆
「誰かやる奴いないか?」
沈黙。
☆
全員、 目を逸らす。
理由は簡単。
“面倒”。
しかも受験期。
☆
結衣が小声で言う。
「絶対大変なやつ……」
龍也も頷く。
「今やるには重い」
☆
担任がため息をつく。
「このままだと俺が決めるぞー」
その瞬間。
☆
「はい!!!!」
結衣が勢いよく手を挙げた。
教室が止まる。
☆
「え?」
「は?」
「結衣!?」
☆
結衣本人も勢いで挙げた顔していた。
「……あ」
☆
龍也が吹き出す。
「お前ほんとノリで生きてんな」
「違うの!!」
「なんか空気で!?」
☆
担任が即答。
「じゃあ決定」
「早い!!」
☆
教室が笑いに包まれる。
☆
すると。
担任がさらに言う。
「あともう一人必要」
再び静寂。
☆
結衣が周囲を見る。
誰も目を合わせない。
☆
「えぇぇぇ……」
完全に焦る。
その時。
☆
「俺やる」
静かな声。
全員が見る。
☆
一将だった。
☆
結衣が固まる。
「……え」
一将は普通に言う。
「一人だと騒がしいから」
☆
教室爆笑。
「言うなぁ!」
「その通りだけど!!」
☆
結衣は顔を真っ赤にする。
「なんでやるの!?」
一将は少しだけ結衣を見る。
「放っておくと危ない」
「保護者みたいに言うな!」
☆
でも。
少し嬉しかった。
☆
放課後。
実行委員会。
☆
大量の資料。
スケジュール。
配置図。
タイムテーブル。
☆
結衣が絶望顔になる。
「多いぃ……」
一将が淡々と紙を整理する。
「だから面倒って言われる」
「今さら!?」
☆
文化祭実行委員の仕事は想像以上だった。
クラス確認
ステージ調整
ポスター許可
出店管理
当日進行
完全にブラック。
結衣が机へ突っ伏す。
「終わった……」
一将が静かに言う。
「まだ始まってない」
「そのセリフ最近多い!」
☆
その頃。
玲緒菜たち普通科も準備中。
☆
段ボールを運びながら、 玲緒菜が笑う。
篠田玲緒菜
「文化祭って感じするね」
雷斗が横で木材を持つ。
武田雷斗
「疲れる」
「それはそう」
☆
でも。
雷斗も少しだけ表情が柔らかい。
☆
玲緒菜が小さく聞く。
「雷斗くん、文化祭好き?」
少し沈黙。
そのあと。
「嫌いじゃない」
玲緒菜が笑った。
「それ、好きってことじゃん」
「違う」
☆
そんなやり取りの奥で。
受験の不安は、 まだ消えていない。
でも。
今だけは少し忘れられる。
☆
夕方。
校舎は夕焼け色。
騒がしい廊下。
笑い声。
☆
結衣は資料を抱えながら歩く。
「受験も文化祭もあるとか忙しすぎる……」
一将が隣を歩く。
「でも楽しそう」
結衣が止まる。
「……え」
☆
一将は少しだけ視線を逸らす。
「今のお前」
その一言だけ。
☆
結衣は少し黙る。
そして。
「……反則」
小さく笑った。
☆
高校最後の文化祭。
それはきっと、 ただのイベントじゃない。
“今しかない時間”
そのものだった。




