第40話 「文化祭準備」
十月。
学校は少しだけ浮ついていた。
理由は一つ。
——文化祭。
受験生。
しかも難関大学志望。
本来なら、 文化祭どころじゃない。
でも。
高校最後。
だからこそ、 特別だった。
朝のホームルーム。
担任が黒板を叩く。
「はい。今年の文化祭だが——」
教室が少しざわつく。
「三年は自由参加に近い」
「ただし、やるなら中途半端は禁止」
その言葉に、 何人かが顔を見合わせる。
結衣が小声で言う。
結衣
「絶対なんかやりたい」
龍也が苦笑する。
龍也
「受験生なんだけどな」
「だからだよ!」
瑠姫愛も少し笑う。
瑠姫愛
「最後の文化祭だしね」
その頃。
普通科。
玲緒菜もクラス会議に参加していた。
篠田玲緒菜
周囲はかなり盛り上がっている。
「メイド喫茶!」
「お化け屋敷!」
「映え系カフェ!」
玲緒菜は少し笑った。
こういう空気、 やっぱり嫌いじゃない。
その時。
担任が言う。
「受験組もいるからなー」
「準備は無理しすぎるなよ」
その言葉に、 空気が少し静かになる。
確かに。
文化祭を楽しみたい。
でも。
受験もある。
その両立が難しい。
昼休み。
屋上。
いつものメンバー集合。
結衣が勢いよく言う。
「文化祭やろう!!」
一将が即答。
天野一将
「雑」
「熱量を感じて!?」
龍也が笑う。
「でも最後だしな」
瑠姫愛も頷く。
「ちょっとくらい青春したいかも」
玲緒菜も小さく笑う。
「分かる」
しかし。
兼次郎だけ少し静かだった。
兼次郎
茉優が見る。
茉優
「兼次郎くん?」
兼次郎は少し考えてから言った。
「時間は減る」
空気が少し止まる。
受験生。
特に十月。
この時期の一日は重い。
結衣が少し俯く。
「……だよね」
その時。
兼次郎が続けた。
「でも」
全員が顔を上げる。
「最後くらい、やればいい」
結衣が止まる。
「……え」
兼次郎は静かに言う。
「文化祭で落ちるなら、どのみち落ちる」
一瞬静止。
龍也が吹き出した。
「言い方!」
瑠姫愛も笑う。
でも。
兼次郎らしい言葉だった。
「やるなら全力」
「勉強も文化祭も」
その言葉に、 全員の表情が少し変わる。
雷斗も少し周囲を見る。
「騒がしい」
「でも嫌じゃないでしょ?」
少し沈黙。
そのあと。
「……まあ」
玲緒菜が笑った。
受験。
焦り。
不安。
未来。
全部ある。
でも。
それでも彼らは高校生だった。
青春は、 まだ終わっていない。




