第37話 「全国の壁」
全国模試から二週間後。
朝。
教室の空気は異常なほど静かだった。
理由は一つ。
全国模試結果返却。
今回は判定だけじゃない。
全国順位。
偏差値。
志望校内順位。
全部が出る。
つまり。
“自分が全国でどこにいるか”
それが分かる。
結衣は朝から机へ突っ伏していた。
結衣
「帰りたい……」
龍也が笑う。
龍也
「また始まった」
「全国順位とか見たくない!」
瑠姫愛も緊張していた。
瑠姫愛
「今回は怖いかも……」
チャイム。
担任が入ってくる。
「全国模試返すぞ!」
教室が一気に静まる。
紙が配られる音だけ。
誰も喋らない。
結衣。
震える手で結果を見る。
「…………」
固まる。
龍也が覗く。
「どうだった?」
結衣がゆっくり顔を上げた。
「……東大教育学部、全国21位」
数秒沈黙。
「は!?!?」
龍也が叫ぶ。
瑠姫愛も目を丸くする。
「すごっ……!」
結衣本人が一番混乱していた。
「え、待って、全国って二桁行くの!?」
一将が結果を見る。
天野一将
「上がったな」
「その反応!?」
結衣が慌てて聞く。
「一将くん何位!?」
一将は普通に答えた。
「東大文系全国7位」
教室が止まる。
「え?????」
結衣が完全停止。
龍也が吹き出す。
「バケモンじゃねーか」
一将は首を傾げる。
「模試だし」
「そのセリフ禁止!!」
瑠姫愛も結果を見る。
——早稲田法学部 全国38位。
龍也。
——早稲田法学部 全国44位。
「うわ……」
「全国って数字出ると現実感あるね……」
でも。
二人ともA判定。
十分すごい。
茉優。
慶應教育 全国31位。
兼次郎。
慶應法学部 全国3位。
結衣が絶叫。
「3位ぃぃ!?」
教室がざわつく。
兼次郎は普通に結果を閉じる。
兼次郎
「まだ上がいる」
結衣が頭を抱える。
「この人たち怖い!!」
一方。
普通科。
玲緒菜は手が震えていた。
篠田玲緒菜
雷斗が横を見る。
武田雷斗
「開けろ」
「怖い……」
玲緒菜は深呼吸する。
封筒を開く。
京都大学文学部。
全国順位——89位。
判定——A。
玲緒菜が止まる。
「……え」
頭が真っ白。
全国。
二桁順位。
自分が?
「……ほんとに?」
雷斗が結果を見る。
「良い」
短い。
でも。
その声は少し誇らしそうだった。
玲緒菜の目が潤む。
「私、ほんとに京大狙えてるんだ……」
夏前なら、 絶対信じられなかった。
そして。
雷斗。
京都大学経済学部 全国12位。
玲緒菜が見る。
「やっぱ雷斗くんすご……」
雷斗は静かに言う。
「お前もだ」
その言葉が、 玲緒菜には何より嬉しい。
放課後。
屋上。
全員集合。
結衣がまだ混乱していた。
「全国21位って何!?」
龍也が笑う。
「もう普通に上位勢だろ」
「怖い怖い怖い!」
瑠姫愛が静かに言う。
「でもさ」
「全国って広いね」
空気が少し変わる。
確かに。
結果は良かった。
でも。
その上がいる。
全国1位。
2位。
さらに上位層。
兼次郎が静かに言う。
「ここからだな」
全員が見る。
「本当に強い奴らは秋から伸びる」
その言葉は、 重かった。
夏を越えた。
結果も出た。
でも。
受験はまだ途中。
むしろ、 ここからが本番。
秋の風が吹く屋上で。
彼らは初めて、
“全国の壁”
を実感していた。




