第33話 「夏の結果」
模試当日。
朝。
校舎前。
いつもより静かだった。
☆
受験生たちの顔は硬い。
参考書を読む者。
単語帳を握る者。
無言で空を見る者。
空気は完全に戦場。
☆
結衣は緊張で顔が死んでいた。
結衣
「帰りたい……」
一将が横で言う。
天野一将
「まだ始まってない」
「だから怖いの!」
☆
龍也が苦笑する。
龍也
「結衣、昨日からずっとそれ言ってるな」
瑠姫愛も笑う。
瑠姫愛
「でも私も緊張してる」
☆
玲緒菜は静かだった。
篠田玲緒菜
手に持つシャーペンを見つめる。
雷斗が隣に立つ。
武田雷斗
「顔固い」
「……そりゃ固くなるよ」
☆
玲緒菜は小さく言う。
「今日で、“今の自分”見える気がして」
雷斗は静かに答える。
「今の、だろ」
玲緒菜が見る。
「終わりじゃない」
その一言で、 少しだけ肩の力が抜けた。
☆
試験開始。
教室。
問題用紙が配られる。
空気が張り詰める。
☆
英語。
数学。
国語。
理科。
社会。
長い一日。
☆
結衣。
英作文で頭を抱える。
(無理無理無理……!)
でも。
一将の言葉を思い出す。
『判定は途中経過』
☆
深呼吸。
書く。
止まらない。
夏前より、 確実に読めていた。
☆
玲緒菜。
京大数学。
最初の問題を見て、 一瞬止まる。
難しい。
でも。
以前みたいに、 すぐ諦めなかった。
☆
(条件整理)
雷斗に何度も言われた言葉。
書き出す。
整理する。
少しずつ、 道筋が見える。
☆
夕方。
試験終了。
全員、 完全に疲れ切っていた。
☆
結衣が机へ突っ伏す。
「終わったぁぁ……」
龍也もため息。
「夏終わった感すごい」
☆
瑠姫愛が苦笑する。
「まだ結果出てないよ?」
「それは聞きたくない!」
☆
校門前。
夕焼け。
みんなで帰る。
疲労感はある。
でも。
どこかやり切った顔だった。
☆
結衣が空を見上げる。
「……なんかさ」
「ん?」
「夏、本当に頑張ったかも」
一将が静かに言う。
「頑張ってた」
結衣が少し止まる。
「……そういうの普通に嬉しい」
一方。
玲緒菜は少し静かだった。
雷斗が隣を歩く。
「どうだった」
玲緒菜は少し考える。
「……前よりは戦えた」
雷斗は頷く。
「ならいい」
☆
玲緒菜は笑った。
「前だったら、“無理”って逃げてた問題もあった」
「でも今日は最後まで考えられた」
雷斗は短く答える。
「成長してる」
☆
その言葉が、 何より嬉しかった。
☆
夜。
帰宅後。
それぞれの机。
積まれた参考書。
書き込まれたノート。
夏の痕跡。
☆
受験はまだ終わらない。
でも。
この夏。
彼らは確かに変わった。
☆
ただ勉強しただけじゃない。
迷って。
支え合って。
恋をして。
未来を考えて。
少しずつ、 “受験生”になっていった。
☆
そして。
数週間後。
その努力は、 数字として返ってくる。




