第27話 「夏祭りの誘い」
八月。
夏期講習も中盤。
毎日勉強。
問題集。
模試。
過去問。
完全に受験漬けの日々。
☆
放課後。
教室。
結衣は机へ倒れていた。
結衣
「……脳みそ溶ける」
龍也が笑う。
龍也
「まだ八月前半だぞ」
「聞きたくない!」
☆
瑠姫愛も苦笑する。
瑠姫愛
「でも最近ほんと頑張ってるよね」
結衣が小さく唸る。
「東大が怖すぎるから……」
☆
その時。
玲緒菜がスマホを見ながら声を上げた。
篠田玲緒菜
「あっ」
全員が見る。
「どうした?」
玲緒菜が少し笑う。
「今週末、近くで夏祭りあるって」
一瞬。
教室が止まる。
☆
「夏祭り!?」
結衣が即反応。
「行きたい!!」
龍也も笑う。
「急に元気出たな」
☆
茉優が少し驚く。
茉優
「でも受験期に夏祭りって珍しいかも」
兼次郎が普通に言う。
兼次郎
「一日くらい問題ない」
全員が見る。
「え」
☆
結衣が指差す。
「兼次郎くんが許可した!?」
「何だと思ってる」
「受験管理AI」
龍也が吹き出す。
☆
玲緒菜が少し楽しそうに言う。
「浴衣とか着たいなぁ」
瑠姫愛も頷く。
「分かる!」
結衣が目を輝かせる。
「青春じゃん!!」
☆
その瞬間。
一将が静かに聞く。
天野一将
「浴衣、歩きにくくないか」
結衣が固まる。
「そこ!?」
「機能性の話」
「デート脳がゼロ!」
玲緒菜が雷斗を見る。
武田雷斗
「雷斗くんは?」
「別に」
「その“別に”は行くやつ?」
「多分」
玲緒菜が少し笑う。
「じゃあ行こ」
雷斗は短く頷いた。
☆
放課後。
帰り道。
結衣は一将の隣を歩いていた。
少しだけ緊張している。
「……一将くん」
「ん」
「夏祭り、一緒回ろ」
一将は普通に答える。
「いいぞ」
即答。
結衣が止まる。
「え、そんなあっさり!?」
「断る理由あるか」
「いや、ないけど!」
顔が熱い。
☆
一方。
玲緒菜も雷斗へ聞いていた。
「夏祭りってさ」
「ん」
「屋台とか回る?」
雷斗は少し考える。
「お前が行きたいなら」
玲緒菜が少し笑う。
「それ、ずるい」
「何が」
「なんか彼氏っぽい」
雷斗は小さく息を吐く。
「彼氏だろ」
玲緒菜が完全停止。
「……っ!」
そのまま顔を真っ赤にした。
☆
龍也と瑠姫愛。
瑠姫愛が小さく聞く。
「浴衣、変じゃないかな」
龍也は即答。
「絶対可愛い」
瑠姫愛が固まる。
「……龍也くんって時々さらっとすごいこと言う」
「本当のことだし」
瑠姫愛は顔を隠した。
☆
夜。
それぞれの部屋。
机には参考書。
でも。
今日は少しだけ違った。
勉強の合間に、 スマホで浴衣を調べる。
祭りの場所を見る。
待ち合わせを考える。
受験生でも。
恋をしていい。
青春していい。
その時間があるから、 また頑張れる。
☆
そして。
今年最後になるかもしれない夏祭りが、 静かに近づいていた。




