第23話 「夏の花火」
夕方。
別荘二日目。
勉強会は想像以上にハードだった。
机。
参考書。
過去問。
赤本。
完全に受験合宿。
☆
結衣が机へ突っ伏す。
結衣
「……もう英語見たくない」
一将が問題集を閉じる。
天野一将
「あと一時間」
「鬼!」
龍也が笑う。
龍也
「東大組怖ぇ」
瑠姫愛も苦笑する。
瑠姫愛
「でも今日かなり頑張ったよね」
☆
その時。
玲緒菜が窓の外を見る。
篠田玲緒菜
「あれ?」
全員が外を見る。
遠く。
山の向こう。
小さく花火が上がっていた。
☆
「花火大会?」
結衣が立ち上がる。
龍也も窓を見る。
「近くで祭りあるっぽいな」
玲緒菜が目を輝かせる。
「行きたい!」
☆
しかし。
兼次郎が静かに言う。
兼次郎
「人多い」
「却下!?」
結衣が叫ぶ。
☆
茉優が苦笑する。
茉優
「でも少しくらい休憩したいかも」
瑠姫愛も頷く。
「気分転換大事だよね」
☆
数分後。
結局。
別荘の庭で花火をすることになった。
☆
夜。
庭。
大量の手持ち花火。
線香花火。
打ち上げ花火。
完全に夏。
☆
結衣がテンション全開だった。
「青春きたぁぁ!!」
一将が花火へ火をつける。
「危ないから騒ぐな」
「お母さん!?」
☆
玲緒菜は線香花火を持ちながら笑う。
「なんか久しぶり、こういうの」
雷斗が隣に立つ。
武田雷斗
「小学生以来」
「それは盛ったでしょ」
「覚えてない」
☆
火がつく。
パチパチと光る。
玲緒菜が少し笑う。
「綺麗」
雷斗は花火じゃなく、 玲緒菜を見ていた。
でも何も言わない。
☆
少し離れた場所。
龍也と瑠姫愛。
瑠姫愛が花火を見つめる。
「夏って感じするね」
龍也が頷く。
「受験生だけどな」
「それ言わないで!」
二人で笑う。
☆
その時。
瑠姫愛の線香花火が落ちる。
「あっ」
龍也が自然に手を伸ばす。
近い。
瑠姫愛の顔が赤くなる。
龍也が少し笑う。
「顔赤い」
「花火のせい!」
「ほんとか?」
「……たぶん」
☆
結衣は打ち上げ花火で騒いでいた。
「うわぁぁ!!」
一将が少し離れて見る。
「子供」
「楽しいんだからいいの!」
結衣は笑う。
でも。
少しして静かに言った。
「……来年の夏ってさ」
一将が見る。
「ん」
「みんな別々なのかな」
☆
一瞬だけ静かになる。
花火の音だけが響く。
一将はゆっくり言った。
「受かれば会える」
結衣が苦笑する。
「受験脳」
「事実」
でも。
その言葉が、 少し安心する。
兼次郎と茉優はテラス側にいた。
茉優が夜空を見る。
「綺麗だね」
兼次郎も空を見る。
「そうだな」
茉優は少し笑う。
「なんか今だけ、受験忘れられる」
兼次郎は静かに言う。
「忘れるな」
「ひどい」
でも。
少しして。
「……でも、こういう時間は必要だ」
茉優が驚く。
「兼次郎くんがそんなこと言うなんて」
「俺を何だと思ってる」
「勉強ロボ」
兼次郎が少し笑った。
☆
最後。
全員で線香花火。
静かな時間。
落ちる火を見つめながら、 それぞれ願う。
受かりたい。
離れたくない。
この時間が続いてほしい。
☆
そして。
最後の火が落ちた瞬間。
玲緒菜が小さく言った。
「来年も、こうして集まれたらいいね」
誰もすぐ答えなかった。
でも。
全員同じことを思っていた。
——そのために、 今を頑張るんだと。




