第22話 「朝の空気」
翌朝。
別荘。
窓から差し込む朝日。
鳥の声。
そして——
静かな沈黙。
☆
最初に起きたのは玲緒菜だった。
篠田玲緒菜
「……ん」
ぼんやり目を開ける。
数秒後。
状況を思い出す。
同じ部屋。
昨日。
額へのキス。
「…………っ!!」
一気に顔が熱くなる。
☆
その瞬間。
近くから声。
武田雷斗
「うるさい」
玲緒菜が飛び起きる。
「起きてたの!?」
「今起きた」
雷斗は普通だった。
普通すぎる。
玲緒菜だけが一人で大ダメージ。
「なんでそんな平然としてるの!?」
「何が」
「全部!!」
雷斗は少しだけ笑った。
「朝から騒がしい」
玲緒菜は枕を抱えて転がる。
「無理ぃ……」
☆
別室。
結衣はまだ布団の中で固まっていた。
結衣
(昨日……キスした……)
思い出した瞬間。
顔が熱い。
隣では一将が普通に参考書を読んでいる。
天野一将
「なんで朝から勉強してるの!?」
「朝だから」
「意味分かんない!」
☆
結衣は布団を被る。
「うぅ……」
一将が静かに見る。
「体調悪いか」
「違う!」
「じゃあ何だ」
結衣は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「昨日のこと思い出してるの!」
数秒沈黙。
一将が少しだけ止まる。
そして。
「……俺も」
結衣が完全停止。
「っ!!?」
今度は本気で布団へ顔を埋めた。
☆
瑠姫愛の部屋。
瑠姫愛は、 鏡の前で髪を整えていた。
でも顔が赤い。
龍也が苦笑する。
龍也
「まだ照れてる」
「だ、だって……」
瑠姫愛は小さく俯く。
「急だったし」
龍也は少し笑う。
「嫌だった?」
瑠姫愛はすぐ首を振る。
「違う!」
そして。
小さな声で。
「……嬉しかった」
龍也が少しだけ目を細めた。
☆
兼次郎の部屋。
茉優はカーテンを開けていた。
茉優
朝日が差し込む。
兼次郎はすでに起きている。
兼次郎
「おはよう」
茉優が少し笑う。
「おはよ」
静かな空気。
でも心地いい。
☆
茉優がふと聞く。
「……昨日のこと覚えてる?」
兼次郎は普通に答える。
「覚えてる」
「即答」
「忘れる理由がない」
その言葉に、 茉優の顔が少し赤くなる。
☆
朝食。
全員集合。
しかし。
空気がおかしい。
妙に目を合わせない。
☆
結衣がジュースを飲みながら俯く。
玲緒菜も妙に静か。
瑠姫愛も赤い。
龍也が吹き出した。
「女子組分かりやすすぎ」
「うるさい!」
三人同時。
一将は普通。
雷斗も普通。
兼次郎も普通。
結衣が叫ぶ。
「なんで男子側平常運転なの!?」
雷斗が答える。
「何か問題あるか」
「あるよ!?」
玲緒菜が顔を真っ赤にする。
☆
茉優が小さく笑う。
「でも、なんかいいね」
結衣が見る。
「え?」
「こういうの」
窓の外には夏空。
テーブルには参考書。
隣には好きな人。
受験は怖い。
未来も不安。
でも。
今この瞬間だけは、 すごく青春だった。
☆
そのあと。
兼次郎が静かに言う。
「朝食後、勉強再開」
全員。
「現実早い!!」
笑い声が別荘に響く。
夏はまだ続く。
そして。
彼らの恋も、 未来も、 少しずつ前へ進んでいた。




