第20話 「夜、二人きり」
夜十時。
別荘。
勉強会が終わり、 リビングには少しだけ疲れた空気が流れていた。
結衣がソファへ倒れ込む。
結衣
「……受験ってなんでこんな疲れるの」
龍也が笑う。
龍也
「夏休み初日でそれ言ってたら終わるぞ」
「終わってる!」
瑠姫愛も苦笑する。
瑠姫愛
「でも今日かなり集中したよね」
☆
その時。
兼次郎が静かに言う。
兼次郎
「部屋、割り振る」
結衣が顔を上げる。
「おっ」
☆
兼次郎は紙を見る。
「男子部屋二つ、女子部屋二つ空いてる」
玲緒菜が頷く。
篠田玲緒菜
「うんうん」
そして。
兼次郎は普通に続けた。
「カップルはそれぞれ別部屋使え」
数秒。
全員停止。
☆
「…………は?」
最初に固まったのは結衣。
瑠姫愛も真っ赤。
「えっ!?」
龍也が吹き出す。
「お前サラッと爆弾投げんな!?」
☆
茉優が慌てる。
茉優
「兼次郎くん!?」
兼次郎は真顔。
「部屋余ってる」
「そういう問題じゃなくて!」
☆
玲緒菜も顔が熱くなる。
「ちょ、ちょっと待って!?」
隣で雷斗は普通。
武田雷斗
「別にいいだろ」
玲緒菜が振り向く。
「雷斗くん!?」
「寝るだけ」
「その言い方やめて!?」
☆
結衣が完全に混乱していた。
「いやいやいや無理無理無理!」
一将が静かに聞く。
天野一将
「何が」
「全部!!」
龍也が腹を抱える。
「結衣テンパりすぎだろ」
「だって!? 一将くんと同じ部屋って!?」
一将は少しだけ首を傾げる。
「嫌か」
結衣が止まる。
「……そういう聞き方ずるい」
顔真っ赤。
☆
瑠姫愛も龍也を見ていた。
「……どうする?」
龍也は少し笑う。
「俺はどっちでも」
「ずるい!」
「でも嫌なら普通に分ける」
その言い方が優しくて、 瑠姫愛は少し安心する。
「……じゃあ、一緒」
龍也が少しだけ目を細めた。
☆
そして。
結局。
・兼次郎&茉優
・龍也&瑠姫愛
・雷斗&玲緒菜
・一将&結衣
で分かれることになった。
☆
部屋前。
結衣はまだ固まっていた。
「……ほんとに?」
一将がドアを開ける。
「入れ」
「うぅ……」
☆
部屋は広かった。
ベッドも大きい。
余計に意識する。
結衣は端っこに座る。
一将は普通に参考書を机へ置いた。
「勉強するか」
結衣が叫ぶ。
「この状況で!?」
「受験生」
「強い!」
☆
一方。
玲緒菜の部屋。
玲緒菜は落ち着かず歩き回っていた。
「なんでこんな緊張するの!?」
雷斗はベッドへ座る。
「知らん」
「絶対緊張してないでしょ」
「してない」
「うわぁ……」
玲緒菜は頭を抱える。
☆
雷斗は少しだけ玲緒菜を見る。
「お前、考えすぎ」
玲緒菜が頬を膨らませる。
「だって普通意識するじゃん!」
雷斗は短く言う。
「なら意識しとけ」
玲緒菜が固まる。
「……っ!」
そのまま顔が真っ赤になる。
「雷斗くん今日たまに変なの言う!」
☆
別室。
瑠姫愛は静かにベッドへ座っていた。
龍也が飲み物を置く。
「大丈夫か」
「……ちょっとだけ緊張してる」
龍也は苦笑する。
「俺も」
瑠姫愛が少し驚く。
「え」
「そりゃするだろ」
その言葉が嬉しくて、 瑠姫愛は少し笑った。
☆
兼次郎の部屋。
茉優は小さく息を吐く。
「……なんか今日すごかったね」
兼次郎は頷く。
「騒がしかった」
茉優が笑う。
「でも楽しかった」
兼次郎は少しだけ茉優を見る。
「そうだな」
短い。
でも。
その声は少し柔らかかった。
☆
深夜。
別荘は静かだった。
虫の声。
遠くの風。
そして。
それぞれの部屋で、 誰も少しだけ眠れない。
受験。
未来。
恋愛。
全部が近づいている。
でも今だけは。
“好きな人が隣にいる”
それだけで、 少しだけ心が落ち着いていた。




