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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第15話 「親父と京大」

夜。

武田家。

テレビでは格闘技番組が流れている。

机の上には缶ビール。

灰皿。

低いソファ。

そして。

そこに座る男。

武田雷斗の父

金髪混じりの短髪。

鋭い目。

少しヤンキーっぽい雰囲気。

普通に歩いているだけで怖がられるタイプ。

でも。

雷斗にとっては、 昔から“親父”だった。

武田雷斗は、 廊下で立ち止まっていた。

「……めんどくせ」

小さく呟く。

勉強より、 この会話の方が疲れる。

父がテレビを見たまま言う。

「なんだ」

雷斗は少し眉をひそめる。

「まだ何も言ってねえ」

「お前が話しかけてくる時は大体面倒な話だ」

「……当たってる」

父が少し笑う。

雷斗は向かいへ座る。

沈黙。

テレビの実況だけが響く。

父はリモコンで音量を下げた。

「で?」

雷斗は短く言う。

「進路」

「おう」

「京大行く」

数秒。

沈黙。

父はビールを置いた。

「……京大?」

「そう」

「京都大学?」

「他に何がある」

父がじっと雷斗を見る。

「お前、東大じゃねえのか」

雷斗は即答する。

「興味ない」

「即答かよ」

父は少し笑った。

でもそのあと、 真面目な顔になる。

「本気か」

雷斗は頷く。

「本気」

父は目を細める。

「珍しいな」

「何が」

「お前、“やりたい”ってあんま言わねえだろ」

雷斗は少し黙る。

確かにそうだった。

必要だからやる。

勝てるからやる。

それが多かった。

でも今回は違う。

父が腕を組む。

「理由は」

雷斗は少し考える。

そして。

「……行けると思った」

父が笑う。

「自信家」

「違う」

雷斗は静かに続ける。

「多分、今の俺なら届く」

その言葉に、 父の目が少し変わる。

父は深くソファにもたれた。

「京大ねぇ……」

「頭いいやつしかいねえイメージだわ」

雷斗は淡々と言う。

「実際そうだろ」

「お前が言うと腹立つな」

その時。

父がふと聞く。

「彼女は?」

雷斗が止まる。

「……は?」

「いるんだろ」

「なんでそうなる」

父はニヤッと笑う。

「お前が“本気”になる時、大体誰か関係してる顔してる」

雷斗は露骨に嫌そうな顔をする。

「気持ち悪い分析すんな」

父が笑う。

「図星か」

雷斗はため息をつく。

でも否定しなかった。

玲緒菜の顔が浮かぶ。

“無理って言われたの悔しい”

そう言ってた顔。

父は静かに言った。

「いいじゃねえか」

雷斗が見る。

「何が」

「本気になれるもんあるなら」

その言葉は意外だった。

雷斗は少し黙る。

父は続ける。

「俺、お前くらいの頃なんか将来とか何も考えてなかったぞ」

「毎日適当に生きて」

「喧嘩して」

「怒られて」

「終わり」

雷斗は少し笑う。

「今もそんな変わってねえだろ」

「うるせえ」

珍しく二人で少し笑った。

そして父は真面目な顔になる。

「でもな」

雷斗も視線を向ける。

「京大行きたいって自分で言えたなら、もう半分勝ってる」

雷斗は眉をひそめる。

「半分?」

「行きたい場所ないやつ、結構いるからな」

その言葉は、 妙に重かった。

父はビールを飲みながら言う。

「やれよ」

「京大」

雷斗は少しだけ驚く。

「止めねえのか」

父は鼻で笑う。

「止めてやめるタマかよお前」

雷斗は少し黙る。

そして。

「……まあな」

部屋へ戻る途中。

スマホが震える。

メッセージ。

篠田玲緒菜

『お母さんに京大の話した!』

雷斗は少しだけ目を細める。

返信。

『なんて言われた』

すぐ返事。

『本気なら応援するって』

雷斗は短く打つ。

『なら受かるしかないな』

既読。

少しして。

『うん』

その一文字を見ながら、 雷斗は静かに思う。

――落ちたくない。

自分も。

あいつも。

机の前。

“京都大学”の文字。

難しい。

遠い。

でも。

不可能とは思わなかった。

雷斗は静かに椅子へ座る。

そして問題集を開いた。

“本気”になった夜は、 少しだけ静かだった。

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