表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/462

第5話 「線の向こう側」

模試は静かに始まった。

鉛筆の音だけが、教室を支配する。

三年A組。

誰もが同じ問題を見ているのに、 見えている景色は少しずつ違っていた。

結衣は、深く息を吸う。

(落ちるかもしれない)

その言葉が頭から離れない。

でも、ペンは止まらなかった。

隣の教室。

篠田玲緒菜も同じように問題を見ていた。

「……やるしかない」

小さく呟く。

前方には雷斗の背中。

武田雷斗

迷いがない解き方。

速い。

正確。

玲緒菜は歯を食いしばる。

(置いていかれる)

その瞬間、彼女はペンを強く握った。

教室の中盤。

天野一将は無表情のまま問題を解いていた。

周囲の緊張も、 順位の空気も、 関係ないように見える。

だが。

隣で結衣がふと気づく。

(この人、いつもより早い)

一将は一度だけ結衣を見る。

「集中しろ」

それだけ。

結衣は小さくうなずき、 また問題に戻る。

試験後。

夕方。

廊下は異様に静かだった。

誰も笑わない。

誰も軽く話さない。

ただ“終わった”という重さだけがある。

瑠姫愛が呟く。

「……やばいかも」

茉優は苦笑する。

「うん、今回は空気違った」

龍也が頭をかく。

龍也

「これさ……本当に誰か落ちるやつじゃん」

誰も否定できない。

帰り道。

玲緒菜と雷斗。

篠田玲緒菜

武田雷斗

玲緒菜は小さく息を吐く。

「……疲れた」

雷斗は淡々と歩く。

「想定内」

「そういうのが一番むかつく」

雷斗は少しだけ横を見る。

「どうだった」

玲緒菜は少し黙ってから。

「……分からない。でも」

言葉を切る。

「前よりはできた気がする」

雷斗は短く言う。

「なら落ちない」

玲緒菜は少し笑う。

「その自信ほんとどこから?」

雷斗は前を向いたまま。

「お前が諦めなかったから」

玲緒菜の足が止まりかける。

その夜。

三年A組の全員が、 それぞれの部屋で同じことを考えていた。

――結果が出る。

――誰かが落ちる。

――そして。

今の関係は、もう元には戻らないかもしれない。

結衣は机の前で呟く。

玲緒菜も同じように呟く。

篠田玲緒菜

「ここで終わりたくない」

雷斗は静かに言う。

武田雷斗

「ここからだ」

そして翌日。

結果発表の紙が、 教室に運ばれてくる。

――線の向こう側が、決まる瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ