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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第4話 「名前が落ちる日」

模試の前日。

三年A組は、いつもより早く“静か”だった。

勉強しているから静か、ではない。

言葉を選んでいるから静かだった。

結衣は、ペンを握ったまま動かない。

「……ねえ一将」

天野一将は問題集から目を上げない。

「ん」

「ほんとに誰か落ちるの?」

一将は一度だけ間を置いた。

「落ちる」

即答。

結衣は顔をしかめる。

「軽く言わないでよ」

一将は淡々と続ける。

「軽いことじゃないから、言い方が普通になる」

その言葉に、結衣は何も返せなかった。

教室の後ろ。

瑠姫愛が珍しくペンを止めている。

「ねえ、茉優」

茉優は顔を上げる。

「うん?」

「もしさ……落ちるのが“知ってる人”だったらどうする?」

茉優は少し黙る。

「……考えたくないね」

その一言で会話が止まる。

廊下。

雷斗と玲緒菜。

武田雷斗

篠田玲緒菜

玲緒菜は歩きながら、小さく呟く。

「ほんとにさ、これ怖すぎない?」

雷斗は即答する。

「怖がっても変わらない」

「そういう問題じゃない!」

玲緒菜は止まる。

「だってさ……“誰かが落ちる”ってことだよ?」

雷斗は少しだけ振り返る。

「だから上がれって言ってる」

玲緒菜は息を詰める。

「……それ、みんな同じこと考えてるよ」

雷斗は短く言う。

「考えてるだけのやつは落ちる」

その一言が、妙に刺さった。

放課後。

教室。

空気は完全に変わっていた。

笑い声が少ない。

雑談が短い。

全員が“誰かの名前”を意識している。

兼次郎が静かに言う。

「今回で下位は確定する」

龍也は苦笑する。

「確定って言い方やめろよ……」

瑠姫愛は冗談を言おうとして、やめた。

茉優はノートを見つめたまま動かない。

その夜。

結衣は机に向かいながら、ずっと同じ問題を解いていた。

結衣

「……落ちるってさ」

ペンが止まる。

「誰かのことなんだよね」

静か。

隣の部屋から、一将の声が聞こえた気がした。

――気のせいかもしれない。

でも結衣は思う。

「私は、落ちたくない」

同じ頃。

玲緒菜も机に向かっていた。

篠田玲緒菜

「落ちるのって……怖い」

小さく呟く。

その背後には、 雷斗の言葉が残っている。

――“考えてるだけのやつは落ちる”

玲緒菜は目を閉じる。

「……考えるだけじゃダメなんだ」

そして翌日。

模試の会場。

教室の扉が開く音が、いつもより重く響いた。

誰もが理解していた。

今日の結果は、ただの順位ではない。

“名前が残るか、消えるか”。

その一線の上で、全員が同じ問題用紙を開いた。

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