古代遺跡クエスト(2)とこしえの闇の中で光を見たのじゃ
突然真っ暗になったのじゃ。これがとこしえの闇?
「あのー?おやびん?いや、駄女神様?これは何が起きたんでしょう?」
「なんで、言い直したのじゃ?とりあえず、みんなおるかの?巫女のディレイはおるようじゃが」
「拙者は健在ナリー」
「ククッ、闇こそ我のフィールド」
「ベーコンいます」
「レタスは、おしっこもらしました」
「ちょっと?私の名を騙っておかしな事言わんといてトメィトゥ」
「ちんはちんちんもげましたー」
主君が、ちんちん王女なので、近衛騎士のノブレス下ネタも致し方なしかのう?
「まあ、全員おるようじゃのー」
「何が起きてるんですか?おやびんがオカシなスマホをいじったからですか?」
「違うと思う。じゃって、お供は3人までのはずなのに全員おるけえ」
「停電かな?我が分電盤を見てくるよ」
異世界漫遊が出来るアプリかと思うたのに、違ったようじゃ。非常口の緑色のライトが見えておる。もっとも、ここは地下に埋まっておるようなので、非常口から出ても土の中のような気がするが。
「ちょっとあんた達うるさいわよ?」
「ありゃ?クリームちゃんがおるげ」
「僕も、居るよー」
「あんたこそ、なんでここに居るのよ?諸国漫遊の旅に行ったんじゃないの?」
「その諸国漫遊の旅で来たんじゃけども」
「そういうこと?ここに来るなって言っておくべきだったかしら?」
「いや、それを言うと絶対来るよコイツ」
ぱちぱちっと明かりが点いた。やはり、ここは異世界ではなく、元のスマホ売り場みたいなとこじゃ。
「漏電でもしたのかな?ブレーカーが落ちてたよ」
「我ながら実に女神らしいタイミングで落ちたもんじゃー」
「ブレーカーが落ちたのは、僕らの実験が原因だと思うよ」
実験?クリームちゃんとハナちゃんは、ここで何をしておったか?
「来ちゃったなら仕方ないか。こっちよ」
クリームちゃんについて行くと、「従業員専用立ち入り禁止」と書かれた扉が開いておった。
「え?ゲートが開くってこれのことですかー?」
「んー?何の話から知らないけど、ここを開けたのは僕達だよ」
従業員の控室らしき部屋があって、机の上にはパソコンが置いてあった。これで何かをしていたのじゃろうか?
「閣下達は、このパソコンで何かしてたんですかー?なんか知らないOSが起動してますけど」
「うーん?なんで巫女の君が、我みたいな異世界知識を持っているんだい?スマホとかパソコンとか」
「私とテープエコー姉さんとファズの3人は断片的な異世界知識を持っているのです。3人合わせてやっと堕天使の持っている知識ひとり分って感じですかねー」
「また新しい設定を出してくるー」
「設定と言われましてもー、ただの事実なのでー」
「見せたいものは、そのパソコンじゃないわ。この奥よ」
クリームちゃんはそう言うと、部屋の奥の扉を開けて、更に進んでいった。
そこは小学校の体育館くらいの広い空間で、大きな樹の根っこらしきものがわさわさと部屋中に広がっていた。天井の高さは4メートルくらいで、体育館というよりデータセンターのサーバールームという感じ。サーバールームと違って蒸し暑い。
「ここは暑いにゃー、そろそろ吾輩を釈放して欲しいにゃー」
「おりょ?ノヴィちゃんじゃ。こんなところに収監されておったのか」
「ひどいにゃー、冤罪にゃー、吾輩は無実にゃー」
ノヴィちゃんは、ヨコヤマの神絵師ノヴィータさんのメルリちゃんをパクった罪で収監されておるのじゃ。ノヴィちゃんもカワサキでメルリちゃんの紙芝居をやっておったところを買ったのじゃが。ヨコヤマのノヴィータさんの方が圧倒的にクオリティが上なので、ノヴィちゃんはパクリ絵師判定されたのじゃ。名前も似ておるしなあ。
「パクリ絵師は地獄直行の重大犯罪なんだけどね。ダモン神獣は地獄に落とせないから、ここで実験を手伝わせていたのさ」
「ひどいにゃー。ダモン神獣は絶縁体じゃないにゃー」
一体、どんな拷問をしておったのじゃろうか?いや、実験じゃったっけ?
「だもんしんじうさまになんてことおー」
ノヴィちゃんは、王女コルサちゃんの慈悲によって釈放された。王女コルサを悪の幹部として描いておったが、ノヴィちゃんはダモン神獣とかいう不思議生物の転生体なので。ダモン神獣は、悪魔の襲撃を退けたとされるダモンの英雄なのだ。コルサちゃんが首からさげている十字架型のハンコはダモン神獣のツノで作られておる神器じゃったりする。
「吾輩は冤罪にゃー、釈放されて当然にゃあ」
「まだ言うか?こいつ」
「ヨコヤマのノヴィータは吾輩の弟子にゃあ!名前で分かんにゃいかなー」
「あれ?誰じゃ、罪人の供述も聞かずに有罪判決下したの?」
「あんたでしょ?」
「やることが先代のリーザ様に似てきたね?」
「ノヴィの事忘れてたから、ノヴィータさんをヨコヤマで買って来たんじゃないのか?」
「ありゃ?そうかも知れないのじゃ?」
「あれー?こんなあんぽんたん駄女神に神話を自筆させるのは危険なのではー?」
「だから言ったでしょ。前回もデタラメ書いてリテイクくらいまくったんでしょ?」
「クリームが、リーザを諸国漫遊の旅に出したのは、国のトップがこんなあんぽんたんじゃ危険だからだよ」
仕方無くない?じゃって、わし0歳児なんじゃよ?まあ、我ながらあんぽんたん過ぎるかのう、とは思うのじゃ。むう、諸国漫遊の旅に行かせまいとしておったのは、逆に行かせるためじゃったのか?わし、人の言う事聞かんもんなあ。
「ほいでー、この根っこは何じゃろうか?」
「説明する前に、さっきの部屋に戻りましょう。ここは蒸し暑いわ」
従業員控え室みたいな場所に戻って、みんなでおやつを食べながら、クリームちゃんの話を聞くよ。300円分のおやつを、ここで食べてしまっていいのかは分からん。
「我が思うに、あれは悪魔の樹の根かな?」
「そうよ。私達はドラゴンの樹って呼んでるけど」
「ドラゴンの飼育係用の実がなるのじゃから、ドラゴンの樹が妥当じゃろ?」
「悪魔の実がなるのだから、悪魔の樹って気もしますけどねー」
「悪魔の実こそ、ドラゴンの実と呼ぶべきじゃあ?」
「我ら堕天使は名前に拘らぬ故、どうでもいいけど」
この世界は、名称の統一がされていない。この山なんか、悪魔の山、ターマ山、オタマ山、ドラゴンの山、と地域でバラバラじゃったので、リーザ山に改名してやった。
他にも王女の所在を隠すために近衛騎士が流した嘘だとか、ただの表記揺れだとか、女神が気まぐれに国名を変えただけなど、いろいろある。全部、わしの身内の仕業じゃな?
堕天使達が名前に拘らないのは、観測者としてノイズになるからかもね。
「まあ、そういう名前の問題はまだいいのだけど。ダモン神獣が6千年もの間所在不明だった件とか、いろいろ気になるでしょ?」
「そうじゃろうかー。あんまり謎を追求し過ぎると、設定厨乙になるのじゃー」
「今回の神話は、すでに設定厨乙になっている気もしますよー?」
「茶々を入れないでちょうだい。ドラゴンの樹は、この世が始まってからの全てを記憶しているようなのよ」
異世界でいうところの世界樹というヤツじゃな?チュウニが好きなラノベやアニメによく出てくる。
「なんでそれが分かったのじゃ?」
「ドラゴンの実を食べた私は、樹の声が聞こえるみたい」
「はあ。また壮大な設定を追加してきおったわー」
「わたしにはなにもきこえないのよ?」
「古代語で喋ってるからかしらね?」
「古代語といえば、これは古代語じゃろうか?」
わしは、ずっと握りしめておったスマホの画面をクリームちゃんに見せる。古代人類の生き残りである彼女は古代語が理解できるのじゃ。
「これは、遠い異国の言語みたいね」
「あれ、じゃあこっちは?」
最初に表示されていた、漢字だらけのモードに変える。
「これも遠い異国の言語ね。ちょっと貸して」
クリームちゃんが、設定をいじって画面を見せる。
「ほら、これが古代文字よ。あんたも孤児院の図書室で見たでしょ?もう忘れたの?」
うーん。漢字には見えないなあ。まったく読めない。わしの記憶力がやばい。
「そのスマホ誰が作ったんだ?古代文字と現代文字に両対応しているって、どういうことだ?」
「そういうのをドラゴンの樹に聞きたいのだけど」
「先代リーザ様あたりが作ったんじゃないんですかー?」
「それを持ち出されると、なんでも女神の仕業で終わっちゃうわねえ」
確かになー。それだと何のおもしろみもないのう。
「あら、この国の言語にも出来るわね?このアプリなんなの?」
「ありゃ?そうじゃった。見落としておったか」
「ゲートが開いて、おやつが300円の、戦士が3人?なにこれ?」
ちょっと誤訳があったようじゃな?お供は戦士限定なんじゃろうか?
「異世界にでも行けると思ったのじゃがー、開いたのはこの部屋の扉で、おやつはもう食べてしもうた」
「戦士は?4人居るんじゃないの?」
「ヤキトリをただのマヌケだとすれば、3人であっちょるな」
「どういうことですか?マスター?」
謎の探求をしていたクリームちゃんは、余計に深まった謎に頭を抱えるのじゃった。




