アイドルクエスト(1)アイドルを育てるんダモン
ヨコヤマは、近衛騎士団に下賜されたよ。
民主化研究会は、ダモンの民主化で忙しいからね。民主資本主義国家は、この世界では初だから、研究会は大変なんだよ。ヨコヤマを統治している余力は無いから、ヨコヤマを預かる話は断ったんだよ。
代わりに近衛騎士団に役目が押し付けられたのです。王女殿下に「かしするのですー、おかしといっしょにー、おかしー、ぷーくすー」と言われたら、騎士としては断れない誉れだからね。
訓練と称して他国に侵入して実戦なんかするから。それも隊長たった一人で。これは罰だね。でも、王女殿下が遊び半分で参戦すると、国が滅びるからね。それを止める目的もあったようだけどね。
ヨコヤマ漫遊はたった一日で終わってしまったよ。
行った先で揉め事を解決するのが、我の知っているゴローコーのお話だったはずなんだけど?陛下は自分で揉め事を起こしちゃったよ。さすがは女神だね、としか言いようがないね。堕天使としては観測者に徹する他は無かった。スケサンは先陣を切って戦争に参加するし、巫女はスグ死んだしね。誰にも止められないよ。猫の魔王とドラゴンが参戦すると、世界が滅びちゃうからね。我は、猫の遊び相手しかしてなかったよ。秘かに世界を救ってた、とも言えるね。堕天使の本来の仕事じゃないけどね。
「ほえー。東京ドームみたいじゃなー?行ったことないけど」
「だねー。我も行ったことないけど」
「その東京ドームってのはー?こんな感じの闘技場なんですかー?」
この巫女は誰だっけ?ダモンのイベント企画委員会のメンバーだよね。名前なんて堕天使にとっては、どうでもいいものだけどね。
「私は、パシフィカちゃんです」
「スズメも居ます。いつも姉のヤキトリがご迷惑をおかけしてます」
ここは何処なのかと言うとだね。ダモン共和国にある闘技場なんだよ。王国よりもずっと前、神聖帝国だった頃に建造された闘技場なんだよ。ダモンは建国当初から武闘国家なんだね。国中に、こういう戦闘関連の施設があるよ。それを観光資源として活用しようというのが、ダモンのイベント企画委員会だよ。巫女と、近衛騎士予備校を卒業したばかりの近衛騎士予備隊が委員会のメンバーだよ。スケサンの妹は近衛騎士予備隊だね。
「スズメ、元気でござったか?」
「姉さんは、無駄に元気そうですね?もう還っていいですよ?名誉の死を与えてあげましょうね?」
「妹が立派に育って、ひと安心でござるー」
「鋼のメンタルに磨きがかかってますね、姉さん」
今回は、本当の意味での漫遊になりそうだね。正しくは遊説かな。今日は、ここで行われるアイドルのライブを観戦するんだよ。観戦だよ、鑑賞じゃなくて。
「さあー、そろそろ始まりますよー!メインイベントの前に前座のバンドの演奏がありまーす!」
「え?ちょっと姉さん、出演するんでしょ?何でまだここに居るの!?」
「あれ?急いで向かわねばー。にんにんー」
スケサンの本職は、陛下の近衛騎士だけど、ロックンロール・クレイジーナイトでもあるからね。イベントの前座で演奏するんだよ。
「さすがは近衛騎士じゃな。一瞬でステージにおるのじゃ」
近衛騎士は、輪廻転生を繰り返して鍛錬を積み重ねて人外規格の強さを得るんだよ。スケサンも、瞬間移動とかさらっとやるよ。一瞬だけ目の前とステージの上に二人見えた。衝撃波が発生して危険だね。後で陛下に怒られると思う。まだ食べてないポップコーンが吹き飛んだから。
「うーん。この世界にプログレちっくなスピードメタルはまだ早過ぎたようじゃなー」
スケサンはフライングVを、ぴろりんぎゅいーんと弾きまくってたけど、この世界にはまだブルースも無いからね。いきなりスピードメタルじゃあね?超絶技巧ではあったけども、あれは現代日本でもドン引きだったかも。前奏だけで24分もあった。
「さあ!本日のメインイベントだー、歴史に残る試合がはっじまるよー!」
「お、始まるのじゃ」
「やっと見れるね陛下」
何が始まるのかと言うとー。
「カワサキの魔女対ヨコヤマの魔女!元王女対決だー!!みんなー!盛り上がる準備は出来てるかー!」
スケサンが司会進行を変わったよ。ダモンの一日革命は、彼女のアジテーションで成したようなものだからね。ロックンロール・クレイジーナイトだから、観客を煽るのは得意だよ。
「んー?聞こえないぞー?ダモンの国民は、どうしちゃったのかなー?」
「いえええ!!」
「もっとだー!もっと戦えるだろー?おーいダモン、魔女共をどうすればいいー!?」
「ころせーー!!」
魔女の2人は別に戦うわけじゃないよ。2人組のアイドルユニットなんだよ。魔女に戦闘能力は無いからね。カブトムシでもないし。
どんどんどどん!と重低音のリフが会場を包み、魔女達の歌が始まったよ。
てめえらいつかみなごろし
まとめてまるめてぐるぐるよ
おまえらいつもみなしごよ
くるくるまわるよろっくんろーる
きさまらいつもむなさわぎ
まさかのまっさかさまよざまあない
もえないごみももやしてしまえぶっころす
ぐるぐるどーんでぜんめつなのよ
くるくるろっくん ろっくんろーる
ぐるぐるどーん どんとくらーい
ここに、くさったみかんのはいったはこがある
こいつをどうすればいいー?
すてろー!
ぐみんでつまったまんいんでんしゃがはしっている
こいつをどうすればいいー?
まるやきだー!
前説で仕込んでいたとはいえ、コール&レスポンスで盛り上がってるよ?なんでこれが大ウケなんだろうか。分からないもんだね。我は好きだよ、こういうの。くくっ。
「これアイドルじゃろうか?誰じゃプロデュースは?」
「パンフレットには、魔王シヴァサタンとありますけどー。ヤキトリちゃんですね」
「幼女が、こんな殺伐としたの歌ってええんじゃろか?」
「ウケてるからいいでしょう。ダモンの民は破滅願望が強いからですかね?」
「さっき以上にヘヴィなメタルサウンドじゃのになあ」
「かわいい幼女には、誰も逆らえませんよ」
「子どもと動物出しとけばっていうけどね?魔女には魅了の能力でもあるのかな?」
「まあ、成功しているならいいのじゃ」
魔女っ子アイドルユニットは、この後で演劇もやるよ。脚本を書いたのは、ヨコヤマで買ってきた魔法少女メルリの作家だよ。楽しみだね。




