387話 仲間に引き込む
帝都の仕事は至ってシンプルで、オレンジジュースを納品するだけのお仕事です。
冒険者として何かする訳ではなく、帝都にジュースを納品……。これほどやる事のない仕事ほど面倒臭いと感じてしまう。運ぶのは俺ではないので、本当につまらない。
まぁ、ガルボをくれるから問題無いが、もう少しだけ吹っかけても良かったのかも知れない。
オレンジ自体はこの世界にも有るようなので、作り方を教えて終わりにしようかと考えていると、警報を知らせる鐘が鳴り響き、俺は外に出て何が起きているのか確認をする。
すると、帝都上空に何かが飛来してきているようで、それに向けて弓矢で攻撃をしているようだ。
また、魔法が使える者が上空に向けてファイアボールを放っているのだが、相手は空を自由に飛んでいるため、簡単には捉える事ができていなかった。
魔族一匹だけに翻弄されている帝国兵たちに見え、冒険者も建物の屋根に登って弓矢を使っているのだが、魔族からしてみれば、鴨が葱を背負って来る状態になっていた。
しばらく様子を窺っていたのだが、魔族は空から攻撃をしてくるので、地上にいる人々は逃げ惑う。
「あれは少しだけズルいだろ」
そう呟きながら、某ゲームのマインスロアーを召喚して、魔族に向けて発射させると、魔族は攻撃に気が付いたようで、躱すように避けたつもりだろうが、追尾機能が付いている変態な武器だ。
無情にも矢が突き刺さると、魔族は油断したらしく落下していくのだが、マインスロアーはそれだけで許してくれるはずがない。
調べてくれれば分かると思うのだが、この武器は追尾機能だけでは許してくれない。
魔族は矢を抜こうとしたのだが、その瞬間に爆発すると、魔族は地上に落下して地面に叩きつけられた様な音が聞こえてきたので、俺はギルドハウスへ戻り、自分の部屋でゲームをするのであった。
その夜、現場近くに居たと思われるカミンが、魔族について熱弁していたのだが、誰の攻撃が当たったのかが分かっておらず、帝国兵が魔族を地面に落下させた当てた者を探しているとのことだったがわ俺は名乗り出るつもりがないため、黙って話を聞いているだけであった。
結局、誰が地面に叩き落としたのか分からないまま、とどめの一撃を入れた者が皇帝に感謝状を貰ったとの噂が流れたのだが、所詮はおこぼれを貰っただけなので、名前までは広がることはないのであった。不憫だと思うが、俺は名乗り出るつもりはない。
それから数日の間、帝都の中では魔族が攻め込んで来るのではないのかと噂が持ち切りで、帝都では兵士の巡回が多く、巡回中の兵士が家の中までやって来るとの話だが、俺は迷いの道を召喚してあるので、このギルドハウスにやって来れる人はギルドメンバーか、ギルドメンバーに連れてこられた人しか、このギルドハウスにやって来ることはできないので、兵士が巡回にくることはなかった。
俺はオレンジジュースの作り方を教えるので、納品を止めさせてくれないかと宰相閣下に言うと、教えてから考えると言うので、俺は最後の切り札を出した。
「条件をのんでくれないのなら、俺たちはこの帝都から出ていきます」
「逃げれると思うのか?」
「もちろん思っています。だって、俺たちはレグリア国からやって来たんですよ? どうやって来たのか考えれば分かりませんか?」
「飛空艇は使わせんぞ!」
「必要ありませんよ。そんな物を使う必要はありませ。俺たちはこの帝都から出ていきます」
そう言い切ると、宰相は「出来るものならやってみろ!」と、強気な台詞を言いやがったので、俺は「やってやるよ」と、言い返してギルドハウスに戻った。
宰相と言い合いをしてしまった事を皆に伝えると、文句の言葉が返ってくると思っていたのだが、皆は直ぐに撤収の準備を始める。
怒らないのかと質問してみると、今は怒っている暇はないと、アイギスがゴミを見るような目でみてくる。その様な目で見ないで欲しいし、俺がそこまで悪いことをしているつもりはない。肉は売られると困るから召喚できないが、ジュースなどは生死に関わるので許してくれているはずで、これを制限されたら君たちだって困るでしょ。
言葉にできない葛藤に襲われながら、俺はやるせない気持ち我慢しながら冷蔵庫の肉を袋の中へ仕舞い込んで、皆の準備が終るのを待っていると、しばらくして全員がギルドホールに集まった。
「じゃあ、レグリア国の王都に戻るから、宜しく……」
そう言って秘密道具を召喚して、ドアの向こうへ行くのだった。
ドアの向こうは、レグリアの王都にあるギルドハウス前に到着すると、皆はハウスの中に入って自分の部屋に荷物を起きに行く。
俺は台所で肉を仕舞いってからギルドホールに戻ると、全員から冷たい目線を貰う。
「分かった、そこまで俺に対して文句を言いたいのなら、取り敢えずこの三人を論破してから、俺に文句を言ってくれ。ミリー、アズロットとシオンの三人は、俺の部屋で少しだけ話をさせてくれ」
そう言うと、三人は冷たい目線を俺に浴びせながら俺の部屋に入り、俺は三人分の椅子を召喚した。
「タイチ、悪いが今回だけは弁明の余地は無いとおもうよ」
椅子に腰かけて開口一番にアズロットが言うと、二人も頷いた。
「良し、今から俺の話を聞いても、その台詞が言えるのか……」
俺が力説するかのようにして、三人に召喚の制限が掛かったらどうなるのかと言う話をすると、三人は俺に質問した。
「量産が出来るものが限定というのと、肉が召喚できない他は有るんですか?」
「今のところは無いが、いつ女神様が制限をするのか分からない。今、一番制限を掛けやすいのが、飲み物だ。お前らは俺が水を出せなくなったら、どうやって風呂に入るつもりだ? それに、飲み物に関しても同じだ。洞窟内で飲み物はどうするつもりだ? 俺は制限されたら困ると思うな……」
そこを攻められるとシオンは俺側に付いた。これで俺の勝ちだと思ったのだった……。




