第20話 仲間
消えた仲間は生きていた。だが、それは政府特殊軍将軍としてではなく、連合軍将軍としてだった。裏切りか? それとも……
「ピューリタン……?」
「…………」
トワイラルは信じられないような表情をしながらクラスタとピューリタンに近づいて行く。その足取りはおぼつかない。遅く、フラフラとしたものだった。
クラスタは左腕に装備した小型コンピューターに右手を置き、トワイラルの動きをじっと睨んでいた。その瞳は何かを狙っているかのようであった。
「…………! トワイラル、離れて!」
「えっ?」
ミュートの声と共にピューリタンはアサルトソードを引き抜き、トワイラルに向かって走り出す。彼女は大きく剣を振り上げ、彼を斬り殺そうとした。
だが、その剣は1本のアローによって弾き飛ばされる。紫色をした半透明のアロー。ミュートが放ったものだ。
「クッ、ピューリタン、俺だッ!」
「…………」
「チッ、だから剣を振り上げるなって言ったんだ」
クラスタが素早くコンピューターに何かを打ちこんでいく。ピューリタンはハンドガンを取り出し、銃口をトワイラルに向ける。
だが、それと共に彼は魔法発生装置で自分自身とミュートに物理シールドを張る。物理シールドがあれば銃弾のダメージを軽減出来る。
発砲音が鳴り響く。ハンドガンの弾がトワイラルの頬をかすめる。その頬に一筋の血が流れる。
「外したか。……ワザと、じゃないよな?」
クラスタがじろりとピューリタンを睨む。ピューリタンは何も言わずに右手だけでハンドガンを握り、再びトワイラルの方向を向く。乾いた音が鳴り響く。弾はトワイラルの足元に落ちる。
「ピューリタン……」
「……そんなに上手くなかったよね、狙撃は!」
ミュートが再びボウガンにアローをセットし、ピューリタンを狙う。悔しそうな目だった。涙目になっていた。彼女はピューリタンが裏切ったと思っていた。悲しみと絶望が彼女の心を覆っていく。
そんな彼女の動きを見たトワイラルは素早く手で制止する。
「クラスタを狙うんだ。あの左腕のコンピューターを」
「え?」
トワイラルは魔法発生装置を握り締め、再び走り出す。ピューリタンは片手だけでハンドガンを握ったまま、何度も発砲する。弾がトワイラルの足下や、すぐ側を飛ぶ。
それを見ていたクラスタは苦々しい顔をしながらも再び左腕のコンピューターに何かを打ちこんでいく。それが終わると同時にピューリタンはハンドガンを両手で握る。
「やれ」
「…………」
再び発砲。両手で握り、反動による標準のブレがなくなった。弾はトワイラルの右脚に当たる。物理シールドと防護性能の高いズボンはそれを完全に防ぐ。
白いスタンロッド型をした魔法発生装置が大きく振られる。白い衝撃弾が尾を帯びながら飛んでいく。飛ぶ先はピューリタンの元だった。爆発音が鳴り響き、ピューリタンの体は大きく弾き飛ばされる。
「…………ッ! “オートモード”にすりゃよかったな」
ピューリタンが背の向きを変え、コンピューターを操作しようとした時だった。彼女の左腕を1本のアローが貫く! 赤い血が雨水に濡れるアスファルトに散る。
「ぐッあぁッ!」
クラスタは歯を噛み締め、その場に膝を着く。だが、アローは腕を貫いただけであってコンピューターには何のダメージもなかった。
彼女は痛みに歯を食いしばり、震える右手で必死にコンピューターを操作していく。その途中、またアローが飛ぶ。今度はコンピューターの角に当たり、クラスタの左肩に刺さる。
「こ、殺せッ! 政府軍人を、“世界の破壊者”どもをッ!」
ピューリタンが再び立ち上がる。その手にはアサルトソードが握られていた。その瞳は次のアローをセットするミュートを捉えていた。走り出す。ミュートを殺す為に。かつての仲間を殺す為に。
「やめろ!」
「…………! 離せバカ!」
トワイラルが後ろからクラスタを押し倒す。そして素手でコンピューターを無理やり破壊しようとする。それを防ごうと、彼女は彼を無理やり押しのけようとするが、力ではトワイラルの方が上だった。
「やめッ……!」
「…………!」
そんな間にもピューリタンはアサルトソードでミュートを斬ろうと剣を振り上げる。トワイラルはクラスタの腰からハンドガンを奪い、銃口をピューリタンに向ける。
「クッ、トワイラル! ピューリタンはお前の……!」
トワイラルはクラスタの言葉を無視し、発砲した。血が舞う。アサルトソードに付いた血。煙を上げるハンドガンの銃口。たくさんの血が雨水と混ざり合う。
「すまん、ピューリタンっ……」
ミュートが倒れる。雨水が跳ね、彼女の血が宙を舞う。ボウガンと数本のアローが散らばる。トワイラルに押し倒されつつもそれを見たクラスタの表情に不気味な笑みが浮かぶ。
だが、ピューリタンもまた血を撒き散らしながら、その体を崩していく。彼女もまた道路に倒れ、雨水を跳ねさせ、血を舞わせる。トワイラルの銃口からは煙が上がっていた
「ト、トワイラル…… 仲間を殺して仲間を守る、か……」
「…………」
トワイラルはミュートを守る為にピューリタンを撃った。だが、僅かに発砲が遅れた。ミュートはピューリタンに斬られていた。アサルトソードの血と、彼女自身の体から出る血が何よりの証拠だった。
ミュートとピューリタン。元々は仲間だった2人の体は黒いアスファルトの道路に伏す。雨水が彼女達の服に染み込んでいくが、それよりも血の方が早く染み込んでいく。
「ハハハッ、お前たち、世界の破壊者に相応しい素晴らしい最期だ! 結局お前たちは何一つ守れないのさ! お前たちは壊すだけなのさッ!!」
そう叫ぶように言うとクラスタは狂ったように笑い声を上げる。そんな彼女の背に膝を着きながら、トワイラルは無言でハンドガンに銃弾を補充する。それが終わると、彼は再びハンドガンを前に向ける。乾いた音。彼の持つハンドガンから弾が再び放たれ、また血が舞った――……
仲間を守る為に仲間を撃ったがその結末は……




