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私の可愛い奴隷人形  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 信頼する人 ――プレリアシティ――
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第16話 戦争とクラスタ

「よぉ、ヴァラン。久しぶりだな」

[……クラスタ、すまない。俺はここまでだ]

「だろうな。これから私がそこにいるバトル=メシェディにお前の殺害命令を下すのだからな」


 クラスタは見下すような目でヴァランを見ていた。その瞳にはどこか残酷さが宿っていた。


[……クラスタ、連合軍から抜ける気はないか? まだ1年半前のティトシティの壊滅が忘れられないのか?]

「ハハッ、抜ける気はない! 連合軍として、私はあの腐敗した政府を叩き潰してやるッ!」


 強い口調。その言葉にはクラスタの政府に対する怒りが現れていた。連合軍に占領されたティトシティは政府特殊軍によって爆撃され、クラスタの故郷は炎に消えた。その光景は今も鮮明に彼女の頭に残っていた。


「あの街を、私の故郷を、政府のクソ共は消し去った! いつも私の側にいてくれたリュートを殺したッ! アイツの死を、家族の死を、ティトシティの市民の死を忘れはしないッ!」

[……そうだな、俺も忘れはしない]

「黙れ! お前はあの街の出身者なのに政府軍の1人だ! 裏切り者だッ!!」


 ヴァラン。彼はクラスタと同じティトシティ出身の人間だった。ティトシティ壊滅の日、彼はティトシティの警備軍将校だった。この時、すでにプレリアシティへの転属が決まっていた。爆撃の日、辛うじて死なないで済んだ彼はそのまま、プレリアシティへと転属していった。


[裏切ったつもりはない。わたしもあの街で全てを失った。政府を憎みもした]

「だったら連合軍に入ればよかっただろ! 連合軍は政府に反旗をひるがえした組織。私たちにとっては好都合な組織だ!」

[暴力を暴力で返して、何もかも破壊する気か? 戦争でどれだけの市民が死んだ? この激化する戦争に正義はあるのか? 戦争そのものが間違っているんじゃないのか?]


 戦争はすでに1年半も続いていた。ティトシティを発端とし、今や世界の陸地面積の大部分を占める巨大大陸であるコスーム大陸全域に広がり、激化と泥沼化の一途を辿っていた。


[俺は戦争継続で政府を正すのではなく、戦争終結で政府を正したかった。戦争が早く終われば、ティトシティでの政府の暴挙を追及できた]

「ハッ、もみ消すだろ」

[民主主義があるならそれはない。みんなで追及すれば、政府は逃れられない]

「そうかい、そうかい。それは理想だな。素晴らしいほどの理想だよ」


 クラスタはチラリと大型立体映像の方を見る。ローブの女性が剣を使い、兵士を斬り殺していた。トワイラルの援軍だろう。そのトワイラルもまだ生きている。それを見て少し眉をしかめる。


「だが、それでティトシティで死んだ市民は納得するのか!? 例え首尾よく政府の暴挙を追及出来ても、死んだ彼らは納得するのか!? 家族は、リュートは納得するのか!? 彼らは政府関係者を殺してくれと願っているんじゃないのかッ!?」


 クラスタは鋭い視線でヴァランを睨みつける。その息は荒かった。


[学生時代、リュートはわたしの後輩だった。彼は平和を愛していた。その平和を守りたくて軍に入ろうとしていた。お前もそうだったじゃないか、クラスタ]

「ハハハッ、その平和を守り続けた政府軍によって殺されるとはリュートはさぞ政府を恨んでいるだろうな」


 リュートとクラスタはその昔、ティトシティにあるティト軍事大学に通っていた。ヴァランも同じ大学に通い、将来軍人を目指していた。3人とも今ある平和を守る為に……

 だが、それは消える。連合軍がティトシティを占拠し、その連合軍を葬ろうとした政府軍の爆撃によって……


[……わたしは、戦争を終わらせたかった。政府内には多くの軍人や元老院議員がいる。その中には話し合で戦争を終わらせたいと願う者もいる。わたしがお前と連絡を取り、お前を助けたのはいつかお前が目を覚ましてくれると信じていたからだ]

「そうか。それは残念。選ぶ将軍を間違えたな。人選ミスってヤツよ」


 クラスタは皮肉を込めて言う。その瞳はヴァランを睨んでいた。政府に対する深い恨みがそこにあった。


[いや、そうは思っていない。お前は連合軍七将軍の中で最も影響力がある。連合軍のリーダーであるティワード総督にも信頼されている。それにお前はバトル=オーディン将軍のような市民を巻き込むめちゃくちゃな、非道な戦い方はしない。お前の心には市民の事がある]

「…………ッ!」


 バトル=オーディンの戦い方は非道だった。都市や街を爆撃し、大勢の市民に対し、殺戮の限りを尽くしていた。また、市街戦でも大型兵器を使い、敵味方関係なしに爆撃を行い続けていた。

 だが、クラスタは違った。都市や街を爆撃した事はない。市街戦も極力避けていた。敵を市民のいない平原や山地におびき寄せてから戦う作戦を行っていた。


[いつか目を覚まし、お前がティワード総督に平和的解決を望むよう進言してくれれば戦争は終わらせれたも知れない。政府内にも平和的解決を望む者はいるからな]

「それはないな。私の望みは政府打倒なのだから……! リュートの仇を討ち、政府を滅ぼすのが私の望みだ!」

[……そうか。残念だが、それも仕方ない]

「お喋りがすぎたな。今まで協力してくれてありがとう。バトル=メシェディ、ヴァランを殺せ!」


 そう言うと、バトル=メシェディはハンドガンを再びヴァランに向ける。そして、彼の背中に発砲した。乾いた音と共に、血が舞いあがる。


[ガッ、はッ…… クラ、スタ、愛し…… 目を、覚まし]


 通信を切る。クラスタの目はすでに大型立体映像投影機に向けられれていた。そこにはスピーダーにまたがり、ひたすら飛ぶローブの女性が映っていた。



















 平和を求める者がまた死んだ。



 どうすれば平和になるのだろうか?


 政府か連合軍のどちらかが滅ぶしかないのか?



 どうすればクラスタのココロは戻ってくれるだろうか?


 政府が滅ぶか、クラスタが死ぬしかないのだろうか?

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