第14話 プレリアシティの戦い
【プレリアシティ】
薄暗い雨の中、多くの飛空艇が飛び交う。連合軍と国際政府軍のガンシップだった。お互いがお互いを撃ち合う。地上では大勢のバトル=アルファやバトル=ベータなどの軍用兵器が行進をしていた。それを迎え撃つのはプレリアシティの警備軍と傭兵たちだった。
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
無数の銃弾が飛び、両軍の兵士達は次々と撃ち抜かれてゆく。倒れ、持っていた武器を落としてその場に伏せてゆく。また、ウォプルら魔物は連合軍・国際政府・傭兵らを無差別に攻撃してゆく。
一方、空中に浮かぶ鋼色をした連合軍の軍艦では1人の灰色のローブを被った指揮官が戦場となったプレリアシティを見下ろしていた。顔から足まで全身を覆う灰色のローブ。顔の部分には銀色の仮面までつけていた。
[将軍、スロイディア率いる政府特殊軍の艦隊がこの都市に向かってきます]
「……兵の半分を政府艦隊に向けろ」
[イエッサー]
飛空軍艦の最高司令室でその指揮官はバトル=コマンダーに命令を下す。命令を受けたバトル=コマンダーはコンピューターを操作し、命令を伝える。
4隻の軍艦が向きを変え、都市の外部に向けて進み始める。この地に来た軍艦の数は全部で9隻。内、4隻は地上に着陸し、バトル=アルファなどの軍用兵器を出撃させていた。
1隻の軍艦には5万体の軍用兵器が積み込まれている。合計で45万体。数では圧倒的に連合軍が勝っていた。最も実力では不明だが。
[将軍、バトル=オーディン将軍より通信が入っています]
「……繋げろ」
顔の上部だけを覆った銀色の仮面。仮面に覆われていない口から発せられる声はキレイな女性の声。また、ローブの隙間から僅かに見えるのは蒼色のショートの髪の毛だった。
薄い青色の立体映像が映し出される。そこに移るのはバトル=オーディン。同じ連合軍の将軍だった。
[ハッハッハッハッ! “クラスタ将軍”、貴様のウォプル量産機は破壊させて貰ったッ! また、それを利用し、生物兵器ウォゴプルを作らせて貰ったぞッ!]
「…………」
[もはやプレリアシティは補給路としては使えんぞ! ヴァランを捨ててさっさと逃げ出すんだなッ! ハッハッハッハ!!]
バトル=オーディンは笑いながら通信を切る。
彼はプレリアシティでの状況を利用し、生物兵器ウォゴプルが作り出した。その目的は戦争で使う新型生物兵器の開発だった。
プレリアシティはクラスタ率いる軍の補給路。そう使うためには街の人間は邪魔。だから、ウォプルを製造し、街の人間を追い出した。そして、戻ってこれないようにする為、ウォプルを量産し続けた。
ヴァランは何故かそれを承認した。だが、部下たちはしぶしぶ従っているだけだった。今まで溜まりに溜まった不満と不信が遂に爆発し、この反乱となったのだった。
[あのー…… 政府特殊軍のディンター率いる軍が接近してきました]
「……スロイディア艦隊に向かわせた部隊の半数をディンター艦隊に向かわせろ」
プレリアシティを陥落させればその西部に位置するファンタジアシティに集結するクラスタ軍は安全な補給路を失う事となる。
国際政府は連合軍に補給路を確保させない為、2人の将軍をプレリアシティの近くに配備していた。……実際にはヴァランの裏切りでプレリアシティそのものが既にクラスタの手に落ちていたのだが。
[お言葉ですが、軍艦2隻ではどちらも勝てません]
「時間を稼げればそれでいい。私の任務は“ヴァラン・トワイラル・ミュート抹殺”だ、から、だ……」
最後言葉を詰まらせる女性指揮官。僅かにふら付く。そんな彼女に与えられていた任務はプレリアシティの確保ではなく、ヴァランとトワイラルとミュートの抹殺だった。
[将軍?]
「き、気に、するな……」
そう言い、彼女は最高司令室を出てゆく。後に残ったのはコンピューターに向かって黙々と作業を続けるバトル=コマンダーたちだけであった。
【プレリア防衛師団本部 本部要塞 最高司令室】
本部要塞ではヴァランが取り押さえられていた。その近くにいる将校の手にはヴァランの手帳があった。
「コイツ、クラスタの写真まで持っていやがったぜ」
「この売国奴! 最初から連合軍の人間だったんだな! 上手い事言って丸めやがって!」
兵士によって取り押さえられたヴァランは目をつむり、何も言わない。ただただじっとしているだけだった。
「何が街を戦火から守るためだ! このスパイ野郎!」
「連れて行け! ご丁寧にファンタジアからこの街に出て来たクラスタもろとも政府軍に引き出してやれッ!」
兵士に両脇を抱き抱えられ、ヴァランは連行される。半ば引きずられるかのようにして監獄まで連れて行かれる。
閉じられた目と口。そこからは何も語られない。ヴァランの心は誰も分からなかった。
ヴァランの手帳から引き抜かれたクラスタの写真が床に落とされる。その写真は黒いブーツを履いた将校の男によって踏みつけられる。何度も、何度も、ぐしゃぐしゃに……
男の足が離れた時、その微笑んだクラスタが写った写真は汚れ、酷い折り目と足跡が付いてしまっていた。
――クラスタ、さようならだ……




