第13話 鉄クズの親玉
【プレリアシティ 地下】
トワイラルとミュートは鋼色をした不気味な施設を走る。そこにあるのは何者かによって殺された連合兵とバトル=アルファだけだった。
「どうなっているんだ……?」
「みんな、殺されてるなんて……」
黒服の連合軍兵士。鋼の機械兵士バトル=アルファ。1人残らず射殺されていた。壁や床などには銃撃の後が多く残っていた。ここで銃撃戦が行われたのは明らかだった。
「連合軍の兵士やバトル=アルファばかりで、政府軍兵士の死体がない。相手は誰だったんだ……?」
「…………! アレ!」
ミュートが廊下の奥を指差す。そこにいたのは長身の機械兵器バトル=オーディンだった。連合軍七将軍の1人バトル=オーディンだ!
トワイラルとミュートは素早く魔法発生装置でシールドを張る。2人の体の周囲に物理シールドと魔法シールドが張られてゆく。
[ハッハッハッ! ファンタジアでクラスタに追い払われたザコ共! ここが貴様らの墓場だッ!!]
バトル=オーディンはアサルトソードを引き抜く。刃が白い光を不気味に反射する。
「鉄クズの親玉か!」
「オーディン将軍、ここで倒してやるっ!」
ミュートが魔法アローを飛ばす。一直線に飛び、バトル=オーディンの胸を貫こうとする。だが、彼の鋼の体に魔法アローは効かなかった。僅かに火花を散らしただけでほとんどダメージはなかった。
バトル=オーディンは一気にトワイラルに近づくと、アサルトソードを振り上げ、彼の体を一刀両断しようとする。それを同じアサルトソードで防ぐのはトワイラル。不気味な廊下に大きな金属音が鳴り響く。
[ぬぅッ!]
「クッ、なんて力だ……!」
徐々に押され始めるトワイラル。機械の腕でもバトル=オーディンの力は人間の力を遥かに上回る。このままではトワイラルは押し切られる。
ミュートがクロスボウでバトル=オーディンの細長い逆三角形のピンク色の目に狙いを定める。目を破壊しようと考えた。
だが、バトル=オーディンは左手を剣から放すと、腰につけていたハンドガンを取り、彼女に向けて発砲した。
「あうっ!」
銃弾は彼女の顔に直撃した。クロスボウが床に転がり、彼女はその場に倒れ込む。もし、物理シールドを張っていなかったら、即死だった。……と言っても、目に当たっていれば、失明なのだが。
「ミュート!」
トワイラルは右手だけになった隙を突いて、オーディンのアサルトソードを弾く。アサルトソードは金属音を立てて、床を転がる。彼は剣を弾かれ、怯んだ隙にミュートの元に駆け寄る。
「大丈夫か!」
「大丈夫! 目には当たってないから!」
ミュートは立ち上がると、クロスボウを取ろうと腕の伸ばした。だが、そのクロスボウは2本の鋭い鋼の爪を有したバトル=オーディンに踏みつけられる。
2人はバトル=オーディンの方を見る。彼は両手に2本の電磁ソードを握っていた。電磁ソードは剣のグリップに魔法クリスタルがある。そのクリスタルをエネルギー源にし、刃は電撃魔法で構成される。
[俺は子供であっても殺す! 敵に同情などはしないのだ!!]
「へぇ、そりゃ残念だ! 殺人マシーンはここでスクラップにしてやるよ!」
トワイラルがアサルトソードを使い、バトル=オーディンの逆三角形をした頭部を叩き斬ろうとする。だが、大きな金属音と火花が散っただけで、ダメージを与える事は出来なかった。
「なんだと!?」
[ハッハッハ! 俺を物理攻撃で破壊したければ、軍艦に取り付けられてる大砲でも持って来る事だなッ!!]
そう言うと、バトル=オーディンは刃が青く光る電磁ソードを振り回し、トワイラルを斬り殺そうとする。彼は素早くアサルトソードを使いながら避ける。
だが、素早さでもバトル=オーディンはトワイラルを大きく上回っていた。彼のアサルトソードは何度も電磁ソードと打ち合い、赤くなり始める。金属である刃の部分が溶け始めているのだ。
「クッ……!」
「トワイラル!」
バトル=オーディンは強い力でトワイラルのアサルトソードを叩く。アサルトソードは限界を迎えた。刃は電磁ソードに耐えきれず、床に落ちる。
バトル=オーディンはアサルトソードを失ったトワイラルの胸倉を掴み、自分の後ろにいるミュートの方に投げる。彼の体は宙を舞い、彼女にぶつかり、共倒れとなる。
[ハハハッ、最期に女に抱き着けて良かったな、トワイラル!]
再び電磁ソードを起動させる。青く光る電気の刃が飛び出す。それを両手に持ち、バトル=オーディンは近づいてくる。
その時、彼は後ろからアサルトライフルによる銃撃を受ける。驚いた彼は振り返る。そこにいたのは白い装甲服を着たプレリアシティの警備軍兵士たちだった。
[なんだ、貴様ら! ヴァランの部下たちだな!]
「……違う! 俺達はプレリアシティの警備軍兵士だ! 連合軍に成り下がったヴァランの部下ではない!」
トワイラルとミュートの後ろからも警備軍兵士が数人現れる。彼らは2人の手を取り、助け起こすと、同じように射撃を始める。それとほぼ同時に施設が爆音と共に激しく揺れる。
[ぬぅぅッ! 反乱か!]
バトル=オーディンは後ろと前の両方から銃撃を受ける。だが、その体は硬く、火花を散らすばかりで、大きなダメージを与えられていなかった。
そんな中、バトル=オーディンの右腕に付けた無線機から通信が入り、小さな立体映像が映し出される。映っているのはバトル=コマンダーだった。
[オーディン将軍閣下、プレリアシティの警備軍が反乱を起こしまシタ]
[我らの開発した生物兵器ウォゴプルはどうした!]
[すでに飛空軍艦に収容完了デス]
[よし、お前たちはこれより先に俺の旗艦に撤退しろッ!]
そう言うと、バトル=オーディンはトワイラル達がいる方向とは逆の方向へと走り出す。両手に持った電磁ソードを振り回し、数人の兵士を斬り殺そうとする。
[あの、オーディン将軍]
[なんだ!]
バトル=オーディンは兵士達と戦いながら話す。1人の兵士が斬り殺される。他の兵士達は射撃を続ける。
[本当に撤退で宜しいデスカ?]
[何か問題でもあるのかッ!]
[クラスタ将軍の部隊がプレリアシティに攻め込んで来ましたが……]
[放っておけッ!]
立体映像に映るバトル=コマンダーに怒鳴り散らすと通信を切る。そして、最後の1人を斬り殺すと、そのまま後ろからトワイラルらの銃撃を受けつつも走る。
廊下の角を曲がり、施設正門を開けると、そのまま地下下水道へとバトル=オーディンの姿は消えていった。結局、彼を破壊する事は出来なかったのだった。




