第10話 ゼリーな魔物
【プレリアシティ】
コスーム大陸東部に位置するプレリア地方。年中降水量の多いこの地は水界とも呼ばれていた。この地方には放棄された都市が存在する。なぜ、放棄されたのか? それは……
「でぇぁぁッ!」
「撃ち殺せぇッ!」
「カネの種じゃぁッ!」
雨の中、服装のバラバラな男達――傭兵達がそれぞれの武器を手に、水色をしたゼリー質な魔物を射撃する。ウォプルと呼ばれる魔物だった。ガラス玉をはめ込んだような目。左右から出た先の丸い腕。大きさは人の半分くらいの大きさだった。
「うひひひ、カネの種はどこだぁ?」
「ウォプルが1匹、ウォプルが2匹、ウォプルが3匹ぃ!」
「ゼリー野郎ばっかじゃねぇか、ここはよぉ!」
戦争勃発前の2012年4月。突如として都市の郊外にて大量のウォプルやその進化系に当たるウォズプル、ウォガプルが大量発生。戦争が始まった6月には都市内の下水道は同種の魔物で埋め尽くされてしまった。
「みんな、みんな僕に撃ち殺されろっす!」
「ウォプルさぁん、出てこいやぁ~!」
7月にはもはやどんどん増え続けるウォプル系魔物を抑え切れず、とうとう国際政府は全市民の一時非難を決定したのだった。
プレリア市民は全員、首都グリードシティやその他の都市へと非難していった。すでに建物内にすらウォプル系魔物が侵入している有り様だった故、大勢の市民がすぐに逃げ出していった。
「やれぇッ!」
「ぶっ放せぇッ!」
「また出たぞぉッ!」
8月。戦争の激化でもはやプレリアシティに軍を回す余裕のないと判断した政府はプレリアシティの放棄を決定。プレリアシティに派遣していた特殊軍を全軍撤収した。
だが、プレリアシティを放棄した結果、想定外の事が発生した。あまりに発生し過ぎたウォプル系魔物は都市から遠く離れた街や軍基地にまで出没し始めたのだ。
「今日の討伐数はウォプル267匹にウォズプルが123匹、ウォガプルが61匹、か」
「へっへっへっ、今日もいい結果だぜぇ」
そう、放置した結果、増えすぎたウォプル系魔物はとうとう他の地にまで影響を及ぼし出したのだ。そこで政府はプレリアシティの旧警備軍を派遣。更に大勢の傭兵を雇い集め、次々とプレリアシティに派遣したのだった。
「メシウマーー! ウォプルだらけだぜぇ!」
「男ばっかのつまらねぇ戦場だぜ!」
「連合軍と戦うよりかはいいんじゃねぇか?」
荒れくれた傭兵を管理するのがプレリアシティ旧警備軍。実際に戦うのが傭兵達であった。2013年6月現在、傭兵の数は3万人。旧警備軍の兵の数は5000人程度であった。
「撤収! 撤収!」
「勝てる相手じゃねぇッ!」
「逃げろぉ!」
荒れくれの傭兵達が慌てて逃げてゆく。
実はプレリアシティにはビルの大きさにも匹敵する巨大ウォプルが1匹いる。何千匹ものウォプルが合体して出来たウォプル系魔物の突然変異系――ウォゴプル。
普通、ウォプル2匹でウォズプルに進化し、ウォズプル2匹でウォガプルに進化する。それ以上、上は存在しないハズなのだが……
「逃げろッ! 逃げろぉッ!」
「命なくすぞぉっ!」
*
市内から鳴り響く銃撃音を耳に入れながらトワイラルとミュートは小型の飛空艇から降りる。そして、雨の降り注ぐ中、プレリア防衛師団本部の建物内へと入る。
「ここがプレリアシティかぁ…… ホントに雨降ってるんだね」
「ほぼ一年中、雨が降ってるらしいな。そんな街に現れるゼリーの魔物、ウォプルか……」
2人の姿は建物内へと消えてゆく。その一部始終を見ている者達がいた。黒色をした人間型の機械の兵士たち。不気味な赤い目が遠くから2人を確実に捉えていた。そして、その背中には連合軍のマークが入っていた。
【プレリア防衛師団本部 本部要塞】
トワイラルとミュートの2人は本部要塞の最高司令室に入ると、数人の防衛兵を従えて1人のキレイな黒髪をした若い男が歩み寄ってきた。ここの警備軍の指揮官であった。
「プレリア防衛師団の長官、ヴァラン=クリオドだ。よろしく」
差し出されたヴァランの手を握りながら、トワイラルも挨拶をする。ヴァランは警備軍の中将であった。
特殊軍と警備軍の階級には差がある。同じ階級であっても特殊軍の方が警備軍の3階級上なのだ。例えば、ヴァランは警備軍中将であるが、これを特殊軍に直せば3階級下がり、大佐となる。逆にトワイラルは軍曹であるから警備軍に直せば3階級上がり、少尉となる。
「既に聞いたと思うが、この街はウォプルという魔物の王国となっている。そいつらを束ねるのが、巨大ウォプル、ウォゴプルだ」
「プレリアシティ北部にいるヤツ……ですね?」
「そうだ。ソイツは雨水とウォプルを吸収し、日に日に巨大化していっている。今はまだそんなに活動はしていないが、本格的に動き出したら我々は全滅するだろう」
ウォゴプルは既に市内のビルに匹敵する高さになっている。それでも活動は少なく、群がってくる傭兵をなぎ倒す程度だ。
もしウォゴプルが本格的に暴れはじめたらプレリアシティは崩壊する。それだけではなく、他の都市や基地に向かえば、その地を破壊し尽くす可能性すらあった。
「君たちにはあのウォゴプルを倒して貰いたい。ウォプルやその進化系は傭兵達だけで十分だ」
「……ウォプルは今も発生しているのですか?」
要件を言い終え、背を向けて歩き出そうとしたヴァランに向かってトワイラルが言った。
「ああ、している。地下からどんどん出てきている。だが、ウォプルの件は傭兵が……」
「分かりました」
「いや、君たちにはウォゴプルを……」
「俺達は政府に“魔物を討伐しろ”との任務を受けていますので、“原因”から駆除させて頂きます」
そう言うと、トワイラルは状況の分かっていないミュートの手を掴んで最高司令室から出て行く。最高司令室には極めて気まずい空気が立ち込めていた。
「ヴァラン中将……」
「…………」
【ウォプル系魔物について】
◇ゼリー質な魔物で、水色をしたキレイな魔物。冷たい水を肌から吸って成長する。単細胞生物なので分裂して数を増やす。叩いたり、水を飛ばしたり、水魔法で攻撃してくる。
◆ウォプル
・120センチくらい
◆ウォズプル
・160センチくらい
・ウォプル×2
・名前の由来は複数形より(-s、~ズ)
◆ウォガプル
・200センチくらい
・ウォプル×4
・ウォズプル×2
・名前の由来はメガやギガの「ガ」より
◆ウォゴプル
・名前の由来はゴッドの「ゴ」より




