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殺し屋レインのお仕事  作者: ナマケモノ
1章 無法都市編

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麻薬カルテルの討伐③


レインが屋敷を入っていくのを見て、幻覚が起動していることを確認したエルザは風魔法の弓を作り、放った。


敵の悲鳴は聞こえないが、パニックになっていることが目視でもわかる。

(本当に発射地点がわからないんだ……)

1人、また1人と次々と敵を仕留めていく。


そして、呆気なく外の敵は全滅した。


エルザは家を見つめながら、煙草に火を着けて吸う。

先ほどまではレインがいたため吸うことができずにいたのだ。


(さすがに子供の前で吸うわけにもいかなかったからな~)


煙草を吸いながら、屋敷の様子を監視していると…

屋敷のある通りの数百メートル先から男の集団が近づいてくるのを確認した。数は7人。


エルザは視覚強化を使用し、その集団をみる。

(あれは…レッドドラゴンか…。あれはリーダーのグラン)

(なんで…こんな所に…。まさかここが目的?)


レッドドラゴンとオロチの関係は良くもなければ、悪くもない。


ただ、オロチと獅童会は関係が拗れて、敵対関係になっているという情報は聞いていた。


ならば、戦力的に不利なオロチが同盟関係を申し出たというところなのかもしれない。


(オロチだけでなく、レッドドラゴンが加わればさすがに成功は絶望的だ。)


直ぐ様、レインに通信を入れることにした。

「レイン君。今どう?マズいことになったわ!!キリがついたら撤収して!!」


(ここで屋敷にレッドドラゴンが入ればレイン君は挟み撃ちにされることになる)


『落ち着いたら連絡します』


今恐らく戦闘中なのだろう。

はぁ~。エルザは溜め息をつく。

(本当は逃げたいけど、さすがにそれはね…。)


「ここが正念場だな…」



◆



グランは赤髪に細身ながら筋肉質な身体つきをしていて、頬に切り傷が残っている男だ。


かつては王国騎士団に所属しており、とても有力な騎士であった。しかし、その素行の悪さにより騎士団から除名され、この無法都市に流れ着いた。


無法都市に着いてもこの男が変わることがなかった。あらゆるものをその暴力で支配し、金品の略奪や奴隷売買を繰り返していた。

結果的に勢力を拡大し、無法都市の5大派閥に至ることになった。


そして、今日はオロチの頭目フラークとの交渉のため、無法都市の東部に足を運んでいた。

グランは今回の交渉がどのようなものなのかはある程度察していた。

恐らく協力関係の申し出だろう。今、オロチは無法都市最強と言われる犯罪者集団。獅童会との一触即発の状態だ。

ここで戦争になるとオロチは敗北するだろう。


ナイトメアは自分の領域を侵されない限り、他組織に対して打って出ることはない。


エプトリカ傭兵団は領土意識のない連中で味方に出来ないことはないだろう。


ただ、それ相応の金銭を用意しないといけない上に獅童会に金銭面で競り負けて、敵なる可能性もある。

この2つとの協力関係は望めないだろう。


だから、オロチにとって対等な協力関係を結べるのはレッドドラゴンぐらいだろう。


レッドドラゴンにとっても獅童会は目の上のたんこぶだ。

だから、協力するのもやぶさかではない。


(しかし……。ただで協力してやるのもな~)


どうやって、有利な条件を引き出してやろうかと考えていると、オロチの拠点についた。


「何だ?こりゃあ?」

グランは屋敷前に来るとオロチの構成員達が倒れているのを発見した。

(それに……何だこの空間は?妙だな)


この妙な感覚が何なのかがわからなかった


……が、すぐにわかることになる。

「っ…音が聞こえない!!」

そう言って後ろのレッドドラゴンの構成員達を見る。

今日ここに来るに相応しい腕自慢達を集めてきたが、全員困惑しているようだった。


それに風も感じない……。グランはこれを知っていた。これは結界だ。

「クソ!!はめられた!!」


それに気づいたところで、あらゆる方向から風の矢が降り注いだ。


グランはそれを避ける。

音もなく、方向感覚もわからないが、避けられないことはない。


そう思っていたが、いきなりグラン後ろから矢が出現し、グランの腹を掠めた。

「ぐっ!!」


出血しているが、大した怪我ではさなそうだ。


その後も全方向から襲いくかかってくる矢を傷を負いながら必死で交わし続けた。だが気付けば、6人連れてきた配下が残り2人になっていた。

その2人の身体も傷だらけになっており、そのうちの1人は既に立っているのがやっとだ。


(もし、これが結界なら……)


今生きている2人に動作で合図を出す。ついてこいと……


グランは一心に走り続けた。走っている方向が正しいかはわからないが……

これが結界なら効果範囲があるはず、そこから抜け出せれば……

そう思って、一目散に走り続ける。


その間にも矢は無遠慮に襲いかかる。

その間にも傷を負いつつも、躱わしつづける。

もうグランの身体は血まみれになっていた。

(クソッ!!)


ある程度走ったところで先ほどまで感じていた妙な感覚は無くなり、音が聞こえるようになった。


グランはすぐ後ろを振り返るが、ボロボロの状態の配下が1人だけ着いてきた。

「ボス!大丈夫ですか!!」

そう配下の男がいった。

「ああ…。クソッ!!お前以外全滅か……」


先ほどまでいた6人いたレッドドラゴンの腕自慢がもう1人しか残っていなかった。


「これ……どう思う?オロチの罠か?」

グランは配下の男に問うた。

「わかりません。状況的にその可能性はないとは言い切れないのでは?」

「それもそうだが……。オロチは獅童会に一触即発の状態だ。そんな中俺達と敵対する理由がない」


「では他の組織から今まさに襲撃を受けているということでしょうか?」

「多分な……。それに中の人間が出てきていないあたり、中もかなり殺られているか……。下手したら、壊滅しているかもな……」

そう言って乾いた声で笑った。


「まぁ、どっちみち俺達は今日は襲撃にあったんだ。会談なんて出来ねぇよ……」

「ただ……」

ギロリと殺意をもった目をしてグランは言う。

「これをやった奴が近くにいるはずだ。」

「俺の配下を殺した落とし前だけはつけさせてもらうぜ!」


「わかりました。」

配下の返事を聞くとグランは辺りの建物を見渡す。


「こういった襲撃をする奴らは大概の場合、高くて見通しのいいところを射的ポイントとして選ぶんだ。」


「多分、3階以上の建物だ。片っ端から探っていく。」


そう言って、鬼の形相をしたグランは建物に向かって走り出した。



◆



(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!)

(仕留めきれなかった!!)



グランが結界から抜け出した頃、既にエルザは民泊の3階にはいなかった。今は住居の屋根をつたって移動している。


結界の効果範囲に近づくにつれて、取り逃がすことを悟って、抜け出していた。


(ここは時間稼ぎに専念して、レイン君の成功を待つ)


もう、あの2人がオロチの屋敷に近づかないであろうと察してのことだ。


遠目で走る2人を観察する。すると先ほどまでエルザがいた廃墟の民泊に入っていく。

(なんて感のいい…。)


入っていくのを確認し、エルザは距離をとる。

だが、3階の窓を覗いたグランと目があってしまう。


(ヤバい…。気取られた!)


グランは屋根をつたってもうスピードでエルザに迫りくる。


エルザは逃走を諦め、風の弓矢で応戦する。

しかし、弓矢は全て剣で弾かれてしまう。


気が付けば、エルザがいる隣の屋根にグランは立っていた。

「おい……。随分と好き勝手やってくれたな。お前……」


エルザは怯えの表情を隠すようにして、グランを睨み返す。

「お前にやれたお礼は今からじっくり返してやるよ……」

グランは舌舐りをしながら言う。



そこでエルザにテレパシーによる通信が入る。

『こちら決着がつきました。状況を教えてください。』


エルザはその通信が入り、心から安堵した。

「レイン君。助けて!」


そう言った瞬間、エルザの横腹にグランの回し蹴りが叩き込まれる。


「うっっ!!」

小さな悲鳴を挙げて、エルザは地面に叩きつけられる。


倒れるエルザの髪を容赦なく掴み、再度腹部に蹴りを叩き込む。

そして、肩に剣を当てられる。

エルザは唇を噛み締めて痛みに耐えていた。


「ハハッ!お前最高じゃねぇか!!」

髪を引っ張られ路地裏に運ばれる。

「あっちで精一杯可愛がってやるよ。」


そこでグランは1人。気配が増えていることに気がつき、後ろを振り返る。だが、自身の連れている配下が1人いるだけだ。


だが、遅かった……


グランは顔面に強い衝撃を受け、吹き飛ばされた。

「つー……。何だてめぇ」


そう言うと、目の前に屋敷に入っていった少年。レインが立っていた。



◆



「大丈夫ですか?エルザさん」

エルザの前に立ちながらそう問いかけた。


「ええ。ありがとう。助かったわ」


「どうも……」

レインがそう言ったとき、グレンがこちらに向かって突進してきた。

グレンの連撃を短剣を使い、受け流す。


グレンの剣は速く、力も強い。

レインはまともに受けないようにしながら隙を伺う。

だが……

(このおっさん。剣は粗野で乱暴だが、意外と隙がない。)



ないならば……作ればいい。



(確かに剣は速いが……。父上には遠く及ばないだろう)


グレンは剣を振りおろそうとする。


剣の柄を握るグレンの手に拳を叩き込む。

あまりの衝撃でグレンは剣を落とす。その隙に短剣で腹部を刺す。

「ぐぁぁ!」

悲鳴を上げながらも、レインに蹴りを当ててその場を脱する。

だが、ダメージは深刻なものになった用だった。


レインはグレンの剣を拾い。自分自身の後方に投げ捨てる。


「はぁ…はぁ…」


レインはグレンを見た状態で声をあげた。

「ねぇ?もう帰ったじゃなかったの?2人とも」


その声を聞いて、エルザはある建物の屋上を見上げる。



「安心しろ坊主!!邪魔はしねぇよ!!」

クローバーの大きい声が響く。

「帰ってほしいんだけどぉ~??」

それに返答するようにレインは声を張り上げた。


「堅いこと言うなや!!結果だけ報告しなくちゃ行けねえからよ!!」


「はぁ……。まぁいいです…」

そう言ってレインはグランを見下ろす。


この時グランは動こうとしても動けなかった。

レインと戦い始めてから身体の傷から血の流出量が急激に増えており、今の腹部の一撃で完全な貧血状態になっていた。


レインが血流を操作していたのだ。


(力が入らねぇ…。意識が朦朧とする。)

傍に控えていた配下に命令する。


「おい!手を貸せ!!」


というよりも、こいつは俺が苦戦しているのを見て何故応戦しなかったのか……。

そんな疑問が浮かんだが……

(ダメだ……。何も考えないられない。)


「承知いたしました。」

そう言って、剣を持ってレインの前に歩いてくる。




しかし、その男の剣はレインに向くことはなく、グランの首を切り裂いた。




当作品を読んでいただきありがとうございます。

拙い文章ではございますが、楽しんでいただければ幸いです。

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