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殺し屋レインのお仕事  作者: ナマケモノ
3章 悪魔の暴走編

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聖騎士襲撃作戦③


『はあ…やはりこの身体は格別だな…』



レインの身体が全て修復され、アスモデウスの魔力がレインの身体を完全に覆う。



『だが、私に対する抵抗力が強すぎるのが難点だな。それかアイツ…。私に身体を明け渡す前に何かしたな?』

本来完全に身体を明け渡した場合、悪魔の特徴である角や翼が肉体に反映される。


しかし、アスモデウスが身体の主導権を握っても姿形。それに声もそのままだった。



「お前………だれだ?」

「それにこの邪悪な魔力。…お前悪魔か!」

モーゼスは殺意を剥き出しにしてそう言い放った。



『アスモデウス。死にたくなければ大人しく我が支配を受け入れろ。』


勝利を確信しているかのような発言でレインの身体を使うアスモデウスが言い放った。



「この状況で何を言っている?今だこちらが優勢だろう?」

モーゼスがそう言うのは当然だろう。客観的に見てもレインに対してモーゼスは圧倒的に優位を取っていた。



『ふむ……。【空想創造】だけではなく、スキルによる耐性も全て獲得しているのか…。どんな攻撃でも跳ね返す結界があるというのに…。さすが上位の聖騎士と言える。』

アスモデウスはモーゼスを深く観察してそう言った。



「それは当然だ。威勢よく出てきたところ悪いが勝つことが絶望的だと理解したか?」

モーゼスは傲慢な言葉を放ったが、表情は真剣そのものだった。

直感的にこの悪魔の危険性を実感していた。



『そうでもないさ。贔屓に目に見られるかもしれんがお前は詰みかけていた。』


「何?」

苛立ちを含み、モーゼスはそう言った。


『そして、私が表に出たことでお前の負けが早まった。』



(私が負けるだと?ありえない……。)

「やれるものなら、やってみろ!!」


モーゼスは空想創造を使用し、レインの右半身をもぎ取った。



アスモデウスはそれに動じることなく、身体を修復させる。


『レイスの考えが正しければその結界。お前が自分に害をなす物質を遮断する結界だろう?』


「!!」

モーゼスはそれを聞いて汗がでる。


『図星か…。だったら、お前が無害と判定したものはお前の体内に吸収される。ならその物質を体内入った時にそれを変質させればいい』



アスモデウスは指を鳴らす。


「ガハッ!!」

モーゼスは倒れ込み、口から吐血する。


「な…何だ…。身体が動かない…」

モーゼスは自由に身体を動かすことが出来なくなった。


「な……何だこれ」

モーゼスの身体から肉を食い破り虫が腹を裂いて出てきた。



「あ…あああああ!!!」

激痛と恐怖でモーゼスは転げ回る。

それにお構いなしに虫達はモーゼスの身体を食い破る。



『おっと…いかんいかん。殺すわけにはいかない。』

アスモデウスはモーゼスの体内にいる虫を遠隔で全て殺す。



「な……な、にをし、た…」

既に虫の息であるモーゼスは虚ろな瞳でアスモデウスに問いかけた。



『お前はレイスの血を体内に入れてしまったんだ。その血を通して魔法行使しただけだ。』



血の霧や足元に命中した血操術での攻撃のことである。



『レイスはお前を守る魔力を貫通させて術を行使できなかったみたいだが、私の力が合わさればこうも容易くお前の体内を操れる。』


「う…うう。」

モーゼスは横たわって動くことができない。



『身体にはいくつもの寄生虫が潜んでいる。コイツらを強化させて、身体を食らいつくすように暴走させてやっただけだ。』


モーゼスはそれを聞いて青ざめる。

本来であればトラウマが残るレベルの体験だ。


『さて…種明かしもすんだことだしそろそろ仕事に取りかかるか…』



「お…おい…。何をする?」

ゆっくりと近づくアスモデウスに震えながらモーゼスは言った。


『安心しろ。お前は生かしてやる。ただ、今日起きたことのほとんどは忘れてしまうだろうがな…。』


「な…何を……」



『そしてお前はレイスの傀儡となって働けることになる。光栄に思え…』



「お、おい!やめろ!ゴホッ!ゴホッ…」

反論しようとするが身体から吐血し、意識が遠退いていく。



アスモデウスはモーゼスの頭を鷲掴みする。



『これが【完全催眠】というやつだ…。お前には幾つか誓約と命令を言い渡す。心して受け止めよ。』


「お…うう…。や…やめ」



モーゼスの意識は闇深くまで堕ちていった。

今後、この少年の精神が元に戻ることはなかった。




◆




『さて…終わったか…。』

アスモデウスは軽く伸びをする。



『あ…。こいつ…ぶち犯してやろうと思ってたのに気を失いやがった…』

アスモデウスはモーゼスが横たわるのを見てそう言った。


アスモデウスは視界を屋敷全体に拡大する。

『この身体だからな…。出来れば女がいいな…』



『お…いるじゃないか…。』

アスモデウスは屋敷の外、大量に馬車に乗り込む女性達に目をつける。

イノケンティス邸にいた奴隷や使用人だ。



『ひとまずは性力の補充しなければいけないな!』



レインの姿をしたアスモデウスは高速で移動し、屋敷外の道に降り立った。


アスモデウスはレインの顔でニヤリと笑う。



『おい!』

アスモデウスは馬車に乗り込む女達とそれを補助する男達に声をかける。


アスモデウスは女達を1通り見る。


『うーむ。お前がいいな。』

レインの姿をしたアスモデウスは銀髪の髪をなびかせた女に指を指して声をかける。


『ついてこい。』

そう言って袖を掴む。



「おい!何やってんだてめぇ!!」

ナイトメアの構成員がアスモデウスを殴りつける。


しかし、びくりともしていない。


『はあ…。』

アスモデウスは息を吐き、構成員の男を蹴り飛ばす。


アスモデウスは白銀の髪をした女の腰に手をやり、強引に引っ張る。

「やめて!!」



女がそう言うと、構成員達は一斉に襲いかかってきた。しかし、脆弱な彼らではアスモデウスを止めることはできない。


アスモデウスは構成員達に攻撃されてもビクリともしなかった。



『死になくなければ、黙っていろ。』

アスモデウスはそう周りに威圧する。



「やめなさい!レイン!!」

後ろからレインを呼び止めたのはエルザだった。


『ならお前が相手をしてくれるのか?エルザ!』

アスモデウスはそう言ってエルザを睨み付けた。


「……あなた…誰?」


『誰ってお前が大好きなレインだよ!まぁ外側だけな…。』


「が…がわ?」


『私はアスモデウスだ…。おい!お前らはもう行っていいぞ?』


そう言って、馬車に乗り込んだ女達に告げる。

アスモデウスは標的を完全にエルザに定めたようだ。


「アスモデウス?何で?レインは!?」


『また直に戻ってくるさ。』

そう言って、アスモデウスはエルザとの距離を詰めて腹に拳を叩き込む。


「ぐうぅ!!」

エルザはそれに耐えきれず、膝を落とす。


アスモデウスはエルザの首を掴んで地面に叩きつけた。

「う…うう。」


『安心しろ…。直ぐに済ませ……る』


そう言うとアスモデウスは苦しみ出した。

血の蔦がアスモデウスを縛り付けていたのだ。



『レイス…。貴様!!』

アスモデウスが吠えるようにそう言った。


「お前が俺の精神に干渉できるように俺もお前に干渉できるんだよ!」


レインの声と思われる声がアスモデウスの中から聞こえる。



『お前が手を出さないから、私がやってやるって言ってるんだ!』

アスモデウスは血の蔦を引き剥がそうとするが、動かない。


「そんなことを許すと思ってんのか!!」


『ぐぅ…。お前がどう思おうが知ったことか!私達悪魔は感情を食べてるんだ。私が好きなのは情欲。お前がそれを私に食わせねぇからだろ!!』



「だからって、エルザに手を出すのはやめろ。それは一線を超えてるぞ!お前!」


レインから声質の似た2つの声が言い合っているのが聞こえる。


『なら、こうしよう!この女には手を出さねぇからこれをどけろ!そして私の邪魔をするな!』

アスモデウスは血の蔦をバンバンと叩く。

アスモデウスはレインの拘束を解くことが不可能だと感じた。


「ふざけんな。さっさと俺の身体を返せ!」



『はは…!お前もわかっているはずだ。一度身体を譲り渡せば、気を失うまで身体の主導権がお前に移ることはない!!』



「なら、絞めおとしてやるよ!」

血の蔦が首に巻き付き絞め落とそうする。



『ぐぅぅ…。や、やめておいた方がいい…。ここにはもう他の聖騎士が向かって来ている。』

アスモデウスが苦し紛れにそう言った。だが、それは事実だった。



「え?」

エルザが慌てるように聖都の方向を見る。



『ここで気絶すれば、聖騎士達に捕らえられることになるぞ!!』



「ちっ……。」

悔しそうにレインは声を出して言った。


『私が譲れるのはこの女に危害を加えない点だけだ。選べ!ここでこの女もろとも殺されるか…。私の意見を受け入れるか!』


「………仮に俺がこの場で引いたとして、これからどうするつもりだ?」



『決まっているさ。向かって来ている聖騎士で性力を補充し、血祭りにしてやる。』


「いや、直ぐ逃げてくれよ。」

レインとしては任務を果たした今、早くここから離れて欲しかった。


『ダメだ。逃げるのはそれが終わってからだ。』

『聖騎士は今後必ず私とお前の障害になる。だから可能な限り潰しておく…』

アスモデウスは自分の意見を譲らなかった。



「はぁ…。わかった…。」

少し考えた末にレインがそう言った。



『契約は成った。ほら!さっさと引っ込め!』

アスモデウスは再び血の蔦をバシバシと叩く。


そう言うと、血の蔦が引っ込んでいく。


『フフフッ!さあて!蹂躙するか!!』


アスモデウスは聖都に向かって猛烈な勢いで走り出した。




◆




作戦開始後、オルストンは敷地内の戦況と聖都の様子を見守っていた。


レインが従えたヒドラの実力は凄まじかった。


レインからは毒での攻撃を制限されていた。なので、物理攻撃のみで従騎士達の相手をしている。


だが、従騎士達は成すすべなく蹂躙されている。


(これでは出番がないな…)



そう思い、レインとエルザの方を見る。


エルザはかなり優勢なようだ。

エルザは1対1でやりあっても勝てるとは言いきれないほど強い。オルストンはそう思っている。


特に接近戦に持ち込まれた時には…


エルザは勝てると踏んで、今度はレインの方を見る。


標的のドロアスはレインにより殺されている。


今はモーゼスと戦っているがかなり苦戦しているようだ。加勢に入ってもあのレベルの攻防ならオルストンでは相手にならない。

レインとモーゼスはそれほどの戦いをしていた。

その衝突はより強くなっていく…。



そこでその戦場からこれまでと違う。魔力を感じる。


(これはアスモデウスの魔力か…。もしかして、同化したのか!?)

あまりにも禍々しく強大な魔力だった。

オルストンはこの魔力に見覚えがあった。



この幻覚の結界は音、魔力、あらゆる感覚を消すことができる。

だから、普段どおりでであれば聖都見張る必要はない。



だが、強すぎる魔力の波動は完全に消すことができない。結界の魔力量を遥かに上回っているからだ。



魔力の波動はオルストンがいるところにも強烈に伝わってきている。それにより魔力が少し結界外に漏れ出している。



(マズいな…。これなら敏感な人間であれば気づくかれない。)



オルストンのその予感は的中した。

数キロ先から大きな魔力を持った人間がこちらに近づいてきている。


魔導具を使用し、その人間をよく見る。


(聖騎士か……)

オルストンは薄緑色の髪をなびかせてこちらに向かって走る女性を見て愕然とする。



オルストンはその聖騎士の情報は頭に入っている。

聖教十二騎士序列8位リーゼロッテ。

6匹の犬型の聖獣を操る聖騎士だ。



貴族推薦のイノケンティスより序列では劣るが、実力では上回っていると目される聖騎士だ。



面倒なのは今引き連れている5匹の犬型の聖獣。

彼らは強力でとても鼻が利くそのためこちらに向かって来たのだろう。


結界の外側で戦闘を行う場合、確実に聖都中にいる聖騎士と蹂騎士達にバレる…。


だから、できるだけ引き付けて…



そう考えていると邪悪な気配をさせた人間が猛スピードで屋敷から出ていくのが見えた。


(レイン君…。いや…あれは乗っ取られている!アスモデウスか!)



『これはもう要らんな!』


そう言って、レインの姿をしたアスモデウスが腕を横に振る。


すると幻覚の結界がたちまち壊されてしまった。


オルストンの顔が蒼白に変わる。

結界を壊したアスモデウスが飛行魔法を使い、迫りくるリーゼロッテを迎え撃つように向かった。



(マズい……。聖騎士達が感づいて集まってくる!)



「オルストン!!」

後ろからエルザが走って来た。


「レインが…悪魔に乗っ取られた!!」

慌てふためいた様子でそう言った。



「ひとまず標的の始末は終わった!!撤退しよう!!」


「でも、レインが!!」

エルザがそう言うと、エルザに魔導具を渡す。


「これはレイン君の幻覚の魔法が付与されている。これを使ってレイン君の回収を頼む!」


「あんたはどうするの!?」



「おそらく聖騎士達がここに集まってくる!僕は彼らの相手をする。」


「あんた一人では無理でしょう!」

エルザの指摘は当然だった。


「策はある。いいから早く行け!」



「わかった…。死ぬんじゃないわよ!!」

そう言ってエルザはアスモデウスを追いかけて行った。


オルストンは軽く息を吐く。

少しタイミングが早まったが、もしかしたらここが良いタイミングだったのかもしれない。



そう思ったオルストンは2日前から仕込んでいた企みを実行に移した。








当作品を読んでいただきありがとうございます。

拙い文章ではございますが、楽しんでいただければ幸いです。

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