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殺し屋レインのお仕事  作者: ナマケモノ
3章 悪魔の暴走編

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聖騎士襲撃作戦②



レインはヒドラにより3人聖騎士が引っ張り出されたのを確認し、いつものように幻覚で自分の姿を消す。



レインは自分よりも強い相手の勝ち方を知っている。それは相手が自分を認識する前に仕留めることだ。

世間一般では騎士道精神に反するなどと言われるだろうが、レインは騎士ではない暗殺者だ。


目と鼻の先まで近づいたとこでエルザの攻撃がイノケンティスに命中し、吹き飛ばされていく。



残った2人を大きく囲うように幻覚の結界を展開する。


この空間内では相手の感覚を惑わし、視界、音などのあらゆる感覚に偽りの情報を送り込むことができる。


レインの接近に聖騎士2人は気づいていない。

レインは標的であるドロアスの首を一撃ではねる。

ドロアスの首がモーゼスの周囲に転がるが、幻覚によりモーゼスは異変に気づく様子がない。



レインはモーゼスの幼い容姿を見て、罪悪感が湧いてきたがそれを振り払い、モーゼスに対して最大火力の剣技を叩き込む。


しかし…


ギィィィィィィン!!

そう甲高い音がなり、レインの剣は防がれてしまった。


何か妙な結界のようなものだ。

だが、ただの結界でレインの攻撃は防げない。


モーゼスは自分の術に干渉され、レインの存在に気づいた。


モーゼスは目を細めてレインを見るが、近くに転がるドロアスの首を見て状況を察した。


「はは…。この国で僕に喧嘩を売るような馬鹿がまだいたんだ?」


モーゼスはレインよりも身長は低いが見下すような視線をレインに向ける。



「君を始末する予定はなかったんだけどね。ここであったことを全て忘れて帰ってくれない?それなら命までは取らないであげるよ?」


レインは溜め息まじりにそう言った。


「ほう…。お前は僕を殺せると?」

怒りを含ませながら、モーゼスはそう言った。



「こればかりはやってみないとわからないけどね~」



「ふっ…。君では僕を殺せないよ。今攻撃をはじかれたのがわからないのか?」

レインはあの結界を観察してもどういったものなのか理解できなかった。少なくとも魔術の類いではない。



「そうだね。なら、標的だけ殺して帰るから見逃してくれる?」

勿論、そんなことがあるわけない。

そう思いながらもレインはそう言った。


「それは無理だ。こっちにも面子というものがあるのさ…。聖騎士がやられた上に下手人を逃がしてさまうのは僕の名誉が損なってしまうからね。」


「なら…仕方ないね…」


モーゼスとレインの間に静寂が流れる。


相手の技が一切わからない。

レインは小手調べとして土人形と幻覚を用いた分身を5体作成し、モーゼスに攻撃する。


少し遅れてレインも続く。

 


しかし、レインの目の前の人形は5体とも一瞬で粉々になった。


「……は?」

そして、その攻撃でレインの右半身も吹き飛んでいた。


レインは悲鳴を上げるのを必死で押さえ後退る。


一撃で分身はすべて破壊され、レインも致命傷を負ってしまったのだ。


レインは瞬時に止血し、アスモデウスの権能である肉体再生で右半身を元に戻す。


(死んでいた。アスモデウスが憑依していなかったら、俺は一撃で死んでいた…)


背筋に冷たい汗が流れるのを感じる。



「…………再生した?」

モーゼスは現状を見てそう呟いた。



レインはその呟きに反応する余裕はない。

今の一撃を分析しなければまたやられる。


アスモデウスの権能も無制限に使えるわけではない。権能を行使しずぎると意識をアスモデウスに持っていかれ、最終的に自我が消滅してしまう。


肉体の大部分が破損し、アスモデウスの魔力で修復した。



(次あれを食らえばヤバい…。)


あれを食らった際に強い魔力波が自分に衝突するのを感じた。

その魔力によって自分の身体が捻れ、損傷したのだ。



(だから…対処できないことはない…はず)

1人で任務に当たっていたなら間違いなく撤退する。

しかし、それは出来ない。


エルザも奥で戦闘している上にまだ使用人、奴隷の保護も完了していない。



「反則かよ。その技…。」

レインは自分が思った正直な感想をモーゼスに述べた。


「そう感じるのも無理はない。これは神から与えられた私にのみに許された強力なスキルだ。」


「神?……スキル?」

レインはスキルという単語に聞き覚えがなかった。


「浅学だね。スキルというのは聖騎士の候補生となった従騎士が神から与えられる特別な力のようなものだ。国によっては異能と呼ばれているね。」


「だが…そこまでいいものではない。スキルを1つも習得できないものもいれば、状態異常の耐性がついたり、攻撃力を多少増加させるものが主流だ。」


確かにそれくらいなら然したる脅威にもならない。


「だが…僕は有象無象な奴らとは違う。僕のスキルは聖騎士という分類の中でも特に秀でた力なんだよ!」


なるほど…

レインは少し合点がいった。


このモーゼスという少年。魔力量はかなりのものだが、立ち居振舞いを見るだけなら腕の立つ騎士だとは思えない。そしてこの若さだ。


彼が四騎士と呼ばれるのはこのデタラメな【スキル】とやらのおかげだろう。そうレインは考えた。



「君は身体を再生できるようだが、そう何度も再生できるかな?」


(このガキ鋭い…)


モーゼスはそう言って構える。



レインは幻覚を展開し、スキルの正体を探ることにした。接近戦を避け血操術を使用し、血の槍で中距離からモーゼスに攻撃を仕掛ける。


レインの攻撃は正体不明の結界に阻まれる。


(クソ……)


モーゼスは先程と同じ攻撃でレインに攻撃する。


しかし、モーゼスは幻覚で写したレインの姿に攻撃する。モーゼスはレインの幻覚を見破ることができていない。



「ちっ……」

モーゼスはそれを見て舌打ちする。


レインはそれで悟る。相手をある程度視認していないとあれは使えないのだと。

しかし…レインのその考えは間違いだった。



レインの射出方向を悟らせていない。だが攻撃はやはり通用していない。

攻撃方法を模索しているとモーゼスは攻め方を変えてきた。



「煩わしい……」

モーゼスがそう言うと今度は周囲に一体が一瞬で火の渦に変わる。


(ヤバい!!)


レインは間一髪で逃れたが、火が腕に燃え移ってしまった。

それにより幻術が解かれる。


さらに厄介な事にこの炎は消えなかった。

レインは諦めて腕を切断し、再び再生する。


(あの炎もヤバいのか…)


モーゼスの周りには今も炎が消えることなく燃え盛っている。



「水龍砲」

レインはモーゼスの頭上から竜と化した水を叩き落とす。

しかし、また謎の結界に防がれる。



先程までは物理での攻撃だったため、魔法ならば可能かと考えたが結局防がれてしまった。


しかし、レインは少しだけ気になったことがある。


水龍弾は結界により防がれて粉々になってしまったが、その粉々になったただの水はすべてモーゼスに降りかかった。



モーゼスはそれを魔法によって乾かしている。

だが、突破口が見えないのは変わらない。



「中々やるね…君。僕を相手にしてここまで持ちこたえられる相手は久しぶりだね。」

パチパチと拍手しながら、近寄ってくる。

どうやらまだ余裕があるようだ。



「名乗りなよ。君が死んだとしても僕が覚えていて上げよう。」

そう言ってきた。


「レインだ。」


「ほう…。血操術を使うのに家名がないのかい?」

モーゼスは不快感を顕にして、そう言った。


(やはりこいつ知ってるのか…)


「それは失礼。今は本当にそう名乗ってるんだ嘘をついたわけではない。」


レインは本当の名前をもう一度名乗る。


「本当の名前はレイス…。レイス=クロードだ。」

そう名乗った時、モーゼスから笑みがこぼれる。



「お前のことは知ってるよ神童。ならば…僕の相手として不足はない。」


そう言って、モーゼスは自らの剣を抜き放つ。


「聖教十二騎士 序列4位 モーゼス。歴代最年少の聖騎士だ。」

「そして!!ランスロットを超え、王国最強の騎士になる男だ。」



小さな少年らしからぬ威厳に満ちた声でそう名乗り挙げた。


「お前が4位って……。それより上の3人はどれだけ化け物なんだ…」

レインはそう呟いた。


「序列で格付けされているからそう思われてるけど、僕はあの3人に劣っているなどと一度足りとも思ったことはない。」

モーゼスは少し不快感を滲ませてそう答えた。



「僕のスキル【空想創造(イマジンクリエイト)】は僕の努力によって進化する余地が無限に残されているスキルだからだ」


「空想創造……ってまさか…」


「ああ。僕が脳内で思い浮かべた事象を現実に反映させる強力なスキルだ。あの世への土産話として持っていくといいよ。」


(いや…反則だろう…。何だよそれ…。)

理不尽な現状に頭を抱えたくなる。


(空想か……。なら魔法の理論は一切関係なくイメージした魔法をそのままノータイムで放出するような感じか…。)

レインはそう推察した。


「!!」

(ちょっと待て!!そうか…イメージか。なるほどな…)

レインがそう考えて少し笑う。



「何がおかしい?」

モーゼスは怪訝な顔をしてレインを見る。


「いや?何でもない…早くやるぞ!」


レインはモーゼスの攻略法を思い付いた。




◆



攻略法がわかったところでそれを完遂するためには一定時間モーゼスの攻撃をしのぎきらないといけない。


「赤霧」

レインは血を微細化させて、霧状にしてモーゼスと自分の周囲を覆う。



その血でできた霧を各方面に凝縮させてモーゼスに打ち付ける。


モーゼスの結界がそれを防ぐ。

連続的に繰り返される攻撃に嫌気が差し、モーゼスは霧ごと一帯をなぎ払う。


それにより一瞬で霧が晴れる。



「ぐあっ!!」

この声はモーゼスだ。


地面から棘状にした血刃がモーゼスの足を串刺しにする。


モーゼスは棘状の血刃を破壊し、即座に傷を修復する。


「わかったぞ!私の視界を奪い、結界の覆われていない地面から攻撃していく気だな。地面に結界が貼れないと思っているのか!」


(今ので地面への対策はされた。おそらく以降は地面からの攻撃は効かない。)



後方を見ると、ヒドラが倒した従騎士達の亡骸が積み重なっている。この血を利用しない手はない。

レインは密かに血を集める。


その間にモーゼスが攻撃に転じる。


自分とレインを囲う水球を作成し、こちらの身動きを封じてくる。そして、そこに雷を打ち下ろす。


しかし、レインの身体はアスモデウスにより強化されている。その効果で電撃の耐性をある程度獲得している。


手足を痺れさせながら、レインは水球に身を馴染ませていく。真っ赤に染まった血液の塊はモーゼスから支配権を奪いそのままモーゼスに攻撃する。


モーゼスは血を空間から一瞬で消去する。


「ちっ!」

レインはそれを見て舌打ちをする。


空中にいるレインに狙いをすまして地面からマグマを吹きおこしレインに攻撃する。


レインは幻覚が溶けており、諸に命中してしまう。


「ギャアアアアア!」

これまで感じたことのない。骨すら溶かす高熱にレインは悶絶する。


レインはまたマグマが付着した部位をすかさず切り落とし、更なる痛みを感じる。


このままでは死んでしまうためアスモデウスの魔力を使い、骨から順番に再生していく。



「ハァ…ハァ…」

レインが息切れしていると頭の中から声が聞こえる。


『倒し方はわかったが、万事休すってところか?』

アスモデウスはそう問いかける。


「まだだ…。」


『お前は必要以上に私の力を使おうと思っていないな?』


「ああ。これ以上お前の力を体に貯めるとお前に意識をもってかれそうだからな。」


『単刀直入に言う。私に身体を預けよ。勝たせてやる…』


「………………」


『お前に憑依してまだ数日しか経っていない。故にお前は私の力を完全に引き出せていない。私に身体を譲るなら、お前が望む結果を約束しよう。』


「………………」


『信用できないか?安心しろ。約束は守る。』


「はあ………」

このままでは確実に負ける。

レインはそう直感した。


「わかった…。でも必ず返せよ。」


『ああ……。必ずな…』

声しか聞こえないが、その表情ニヤついてるように見えた。


命と一時の自我。比べるまでもない。

(この選択は誤りなのかもしれない。)

でもそうでもしないと打開できない状態ではあった。


レインは初めてアスモデウスに身体を明け渡した。








当作品を読んでいただきありがとうございます。

拙い文章ではございますが、楽しんでいただければ幸いです。

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