四騎士 モーゼス
無法都市の現3大勢力の1つ。
ナイトメアのボスであるローザは元は娼婦だ。
他勢力のボスである。レドリックやジョーカーのように武力で1組織の頂点に立った人間ではない。
彼女は類いまれなる政治力と商才でここまでのしあがってきた女だ。
そんな彼女はどうやって武闘派の獅童会と長年渡り合ってきたかと言うと、外部からの強力な傭兵や騎士を懐柔して組織に組み込んだからだ。
彼らの望みは金や女であることが多い。
ローザは彼らの欲求に出来る限りの対応して取り込み防衛力を強化してきた。
しかし、それでも一時期は獅童会によりナイトメアが境地に立たされていたこともある。
その時、ローザは聖教の聖騎士に頼ってしまった。
これが間違いだった…。
その聖騎士と従騎士達のおかけで獅童会を退ることできたが、彼らは別世界の人間。つまり無法都市外の人間だ。
つまり彼らが要求した女は無法都市の外に出ていくことになる。
さらに彼らの要求した褒美も凄まじかった。
二十人以上の娼婦達と莫大な上納金だった。
これのおかげでナイトメアの街は傾きかけた。
しかし、一度は応じることは難しいと伝えると今度は宣誓破棄による罪状でナイトメアに攻め込むと脅してきた。
ローザは仕方なくそれに応じるしかなかった。
金はまだいい。だが、連れいてかられた女性達はもう戻ってこない。その中にはローザの実娘も入っている。
それはその聖騎士が要求してきたのだローザの実娘を
さらに報酬をもらうと彼らはそこからナイトメアの防衛に加わることはなかった。
あれは長期的に守護してもらう約定で差し出したものだ。なのでそれを反故にされたことになる。
ローザは激しい憤りを覚えつつも何もできなかった。
その聖騎士の名前はイノケンティス
だがそれは後の祭りだ。
結局、金も娘も街も全てを失うことになると思っていた。
しかし、獅童会のトップがレドリックに代わってからは一変した。
このレドリックは好戦的ではあるが、無駄な争いを好まない男だった。
彼の目的は無法都市を掌握するなんてちんけなものではなかった。
この男の目的は国家転覆。
国の社会構造そのものを変えることを目的としている。いわゆる革命家という奴だ。
詳しい事情は聞いていないが、ローザはそれにのった。これは聖騎士に復讐を誓うローザにとっても益のある話だった。
その後、エプトリカ傭兵団が無法都市に潜伏して彼らと協力関係を築くことができ、さらには強力な傭兵や騎士を集めることにも成功した。
それによりナイトメアの繁華街は安定的な平和を保つことができた。
だが、失ったものが戻ってくることはなかった。
イノケンティス邸を部下に調査させたところ、連れていかれた娼婦達はかなり酷い扱いを受けているとのことだ。
それを聞くとローザの腸が煮え繰り返る思いだった。
エプトリカ傭兵団に依頼したが、難しいとの事だった。
理由は邸宅の戦力の充実さと立地。イノケンティスの従騎士が常駐しており、騒ぎを起こせば警備隊や聖騎士が直ぐに駆けつけてくる立地。
そんな中で攻めてもまず失敗するとのことだ。
なのでローザはイノケンティス邸の監視をしつつも泣き寝入りをするしかなかった。
それが、数日前にジョーカーがここに訪れてからは状況は一変した。
「あの依頼!え~と…。あれだよあれ!!聖騎士を殺害する依頼。受けてくれそうな人いたよ?」
いつものヘラヘラした態度と口調で彼女はそう言った。
「本当かい?でもどんなやつだい?」
だが、この依頼はかなり危険なものだ。
失敗された時、こちらの情報が漏れてしまえば危機にさらされる。
「レイン。」
「お前が前に言ってたやつか…受けてやる代わりレドリックを説得しろってことかい?」
「何だ~。話が早いね」
うんうんと頷きながらジョーカーは言った。
「そいつは成功させられそうなのかい?私はその小僧の情報は調べていなかったからね。」
「まぁ…私達よりは可能性はあるんじゃない?だって…さっき負けちゃったし私。」
頭をかきながらジョーカーはそう言った。
「ほお…。お前が負けたのかい?」
ローザの見立てではこの無法都市でもっとも強いのはこのジョーカーだった。
「いや~あっさり負けちゃったよ~。あの幻術は本当に厄介だ。」
「幻術ってことは幻覚魔法かい?」
「うん。後は血を操る術も使うね!」
血を操る術…?
ローザは国の裏世界に情報を張り巡らしている。
ローザはその術に心当りがあった。
「血を操る術って言ったか?」
「うん。あれは凄いらしいね。私はあれを使うことなくやられたちゃったけどね。」
(ふむ……。)
ローザは少し悩んだが答えを出した。
「お前の案にのることにする。」
レインというのはおそらく偽名。本来の名前はシリウス。
子供3人は既に遺体が見つかっているため、そう考えるのが自然だ。
「おっ!いいの?ありがとね~。」
血を操る術を使えるのは暗殺者の名家クロード一族の人間のみ。
王国には暗殺を生業にする3つの名家があった。
クロード、プロトン、ガレット
この3つは同格なようでそうではない。
実績と実力どちらを見てもクロードが頭1つ抜けているというのがローザの見解だ。
これであの強力な聖騎士から連れ去られたもの達を取り返すことができる。
そう期待していた。だが会談で来た人間はあまりにも若すぎた。
シリウスではない…。
ローザは内心落胆した。
だが、そうなると血を操る術を使用できる理由の説明がつかない。だからこの青年がシリウスの血族であることは間違いない。
それにこの青年はどうやら魔物を使役できるようだ。こちらの窓を覗く巨大なドラゴン。
コイツがいれば聖騎士とも渡り合えることができるだろう。
それにローザはこの青年から何か恐ろしいものを直感的に感じていた。シリウスじゃないからと言って、存外落胆することはないかもしれない。
ローザとしては依頼が完了できるなら何も文句はないのだから。
◆
聖騎士イノケンティスの屋敷は聖都の中心部から離れたところに存在する。
3階建てで広く奥行きのある立派な屋敷だ。
そして聖教のカラーにのっとった白で外壁と屋根の色が統一されている。
今夜が晩餐会ということもあり、ここにはイノケンティスとドロアスの従騎士達が集まっている。
ざっと100人はいる。そんなこともあり屋敷の敷地内は喧騒に包まれている。
しかし、彼らの上司にあたるイノケンティスとドロアスは屋敷の1室で重苦しい雰囲気に包まれながら、1人の聖騎士の対応をしていた。
「よくお越しくださいました。モーゼス殿」
そう言ってイノケンティスとドロアスは頭を下げた。
「こんなところまで呼び出して何のようかな!?僕も暇じゃないんだけど!?」
モーゼスは顔立ちの整った薄黄色の髪をした少年だ。この少年はイラついた感情を隠そうともせずにそう言った。
「私共としては同じ聖騎士としてモーゼス殿と友好的な関係を築きいたいと思いましたので招待させていただきました。」
そうイノケンティスは言った。
「見え透いた嘘を…」
モーゼスはそう言った。
「時間の無駄だから要件だけ言ってくれるかな?」
友好を望むイノケンティスに対して突き放すようにモーゼスが言った。
「いくらなんでも失礼ではありませんか?モーゼス殿」
会話を聞いていたドロアスがモーゼスにそう言った。その声には怒りの感情が漏れ出ていた。
「ドロアス…よせ」
イノケンティスはドロアスを制止する。
だが、ドロアスの発言がモーゼスの気に障ってしまった。
「おい!三下…。同じ聖騎士でも俺とお前達が同格だと思っているのか?」
「………………」
それを聞いてドロアスは黙りこくってしまう。
「滅相もございません。」
彼は聖教十二騎士序列4位のモーゼス。
聖教十二騎士にはそれぞれ強さや貢献度によって序列があるが、4位以上は別格の強さを持ってる。
故に上位4にんのことを【四騎士】と呼ばれている。
それはイノケンティスもドロアスも理解している。
仮にここで2人がかりで戦ってもあっさり敗北するだろう。
「お前達は国内における亜人奴隷の合法化…。これを推し進めようとしてるって話は聞いている。」
モーゼスの言葉を聞いて、イノケンティスが今回呼んだ目的を話し出す。
「なるほど…。知っていただいておりましたか、亜人は我が真なる人間種の管理下におかなければなりません。なので…」
「黙れよ。イノケンティス…。」
モーゼスが言葉を発した瞬間、大理石でできた前の机が粉々に破壊される。
(今…何をした?)
横で見ていたドロアスが戦々恐々としながら、机を見る。
モーゼスは剣を抜いた気配がなかったのだ。
そして、イノケンティスの顔からも冷や汗が垂れる。
「つまらんな……。お前達は」
イノケンティスとドロアスはモーゼスが放つプレッシャーに押し潰されそうになりながら言葉を聞く。
「お前達の道楽にこの俺を利用しようってか?ええ!?」
怒気を含んだ声がモーゼスの口から発せられる。
「と…とんでもございません!私は…」
「黙れよ…イノケンティス。発言を許した覚えはないぞ。」
「…………」
それを聞きイノケンティスは今回の目的が失敗に終わったことを悟る。
「弱く…そして醜いお前達が私と友好を望むなど分不相応だと自覚しろ…」
「申し訳…ありません……」
するとそこで屋敷内に巨大な轟音が鳴り響いた。
「な…なんだ!!」
ドロアスはそれを聞いて狼狽える。
するとイノケンティスの従騎士が走ってやってきた。
「何事だ!!」
イノケンティスは走って来た従騎士に叫んだ。
「ヒドラです!ヒドラが出てきました!!」
当作品を読んでいただきありがとうございます。
拙い文章ではございますが、楽しんでいただければ幸いです。




