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殺し屋レインのお仕事  作者: ナマケモノ
2章 トライザント 修行編

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首脳会談


私はレインの依頼を受けて月光丸ちゃんと一緒にクラウゼル公爵家に来ていた。


門の隙間からザックの姿が見えた。

トレントを休業しているのは本当らしい。


呼び鈴をならすと、ザックがこちらに気づいて近づいてきた。


「久しぶりだな。エルザ」


「久しぶりね。大変だったみたいね。」


「こんなことになるとは思っていなかった」

「全くどこでバレたんだか……」

ザックは悔しそうな表情をして拳を握る。


「情報をつかんだのは獅童会でしょうね。アイツら色んなところに情報網を張ってるから……。これからどうするの?」


「わからねぇ…。レイモンド様の指示に従うだけだが…。」

「俺の予想では無法都市から手を引くんじゃねぇか?まだこちらの損失はあの店だけだしな。」


(これはエルザも同意見だ。既に聖教側との紛争が始まりつつある状態だ。そんな中無駄な犠牲と労力を使うなんて到底思えない。)


「お前はどうするんだ?今はレインと一緒にいるんだろう?」

そう言って、ザックは月光丸ちゃんを見た。


「ええ。しばらくは彼と一緒にいようと思うわ。」


「アイツ何を企んでいるんだ?」


「今は未定だけど、彼は逃げることをやめるみたいよ」


「アイツまさかやつらとやり合う気か?」


「その可能性も考慮に入れてるって感じね。それで公爵に今後どうするつもりなのかを聞きにきたの。いる?」


「ああ。だが、まだ何も決まっていない。俺と同じようなことを言と思うぞ?」


「かまわないわ。公爵から聞くことに意味があるの」


「わかった。少し待ってろ。」


そう言って、ザックは屋敷に入っていった。



その後、公爵との面会は叶ったが、聞けた内容は同じだった。



門から出ると月光丸ちゃんが話かけてきた。



『あの公爵は未定だと言っていたが、ある程度方針は決まっているようだ。お前やザックという男が予想したとおりだ。』


この月光丸ちゃんは悪魔だ。レインが急激に成長したのはこの子を憑依させるのに相応しい体にするためだとか。

クライ君も悪魔らしいが、やり取りを見ていたところ彼よりもかなり上位の存在なのだろう。


『お前はレインの事が好きなのか?』


相手の心を読めるくせに聞いてくるのね


「あなたならわかるんじゃないの?」


『私は相手の感情と考えていることはわかる。だからお前の感情はわかるけど、お前がそれをどう解釈しているのかが知りたい』


「解釈?」


『ああ。好意的な感情を持っていても友情として捉えてるのか恋愛感情として捉えているのかは人それぞれだ。』


「それなら私もわからないわ…。」


 『何だ…。つまらんな……。』


何かムカつくな……。


 「随分と楽しそうなのね。悪魔なのに。」



『悪魔だってそういったことを楽しむ感性はあるんだ。』

そう言って、月光丸ちゃんは肉球で顔を掻いた。





そして、私はレインから頼まれた。もう1つの仕事をこなすため、リデル商会という場所にむかう。

例の造花の納品だ。


その商会は内装、外装ともに洗練されたつくりになっている。そして室内は人がかなり多かった。


さすがは今勢い乗っている新興の商会だ。



人だかりの多いところを避け、裏口から入る。


「すみません。納品にきました。」


すると奥の方から足音が聞こえてきた。


「こんにちわ!」

明るい声で扉を空けて、金色の髪と黒いカチューシャをした女の子が出迎えてくれた。


10代半ばくらいでレインと同じくらいの歳だろうか。人形のような美貌だ。とても可愛い。


「これをお願いします。」

そう言って、造花の入った箱を渡す。


しかし、少女はじっとこちらを見つめてくる。

私と言うよりは月光丸を見つめているのだ。


「あの…レインは一緒じゃないんですか?」


彼と面識があるのだろうか。月光丸を見て、知り合いだと判断したのだろう。


「ごめんなさい。彼、ちょっと手が離せないのよ。」


「………………そうですか!」

そう言って、少女はにこりと笑う。

ただ、不気味にも感じられた。

笑った表情を顔に貼り付けたようなもの。

そんな感じだ。


「お姉さんはレインとはどんな関係何ですか?」

そう問いかける少女の顔は目だけは笑っていなかった。


「仕事仲間よ……。何か伝言があれば言っておくけど……」


「私からはないですけど、お父さんが顔を見たがってたので、時間が空いたらこちらに来てもらえるように言ってもらえますか?」


「わかったわ。伝えておくね」


「お金持ってくるので、少し待っていてくださいね」

そう言って、少女は裏に一度引っ込んでいった。



『プッ。フフフフ。アイツ面白いだろう?』

そう月光丸が私に言ってくる。


『どこが?何か不気味な感じがして落ち着かなかったわ。あの子はレインとどんな関係なの?』


『さあ?直接聞いて見ればいいんじゃないか?』


チッと私は舌打ちをしてしまった。



「お待たせしました。確認お願いします」

そう言って金を確認し、去ろうとした。


そして、少女から最後に声をかけられた。


「伝言頼みますね」

後ろを向いているので、表情はわからない。


「ええ」


そう言って、私は馬車に乗り込んだ。




◆



1ヶ月前



地下のシェルターにある豪奢な家具が並ぶ1室にその男は昨晩に飲んだ酒が体から抜けきっていなかった。


【獅童会】のボスであるレドリックは頭を抑えながら、部下からの報告を聞いていた。


(くっそ!!あのガキ……。)


レドリックはオロチの件でグレオールからその少年、レインの話を聞いていた。

オロチをほとんど1人で壊滅させたトレントの新入りだそうだ。当然警戒はする。

情報を集めたかったが、何分上手くはいかなかった。だが、レインによく似た少年が獅童会が管理しているカジノに出入りしてるという情報が入った。


だから、レドリックは出来る限りその周辺をしばらくの間、生活区域にすることにした。そしたら意外にもあっさり捕まえられた。


だが、ここからが予想外だった。

レインと一緒にいた男がいた。

向こうはこちらを覚えていなかったようだが、あれは傭兵団の幹部の人間だ。


交流があるのだろうか。だが、傭兵団は金さえもらえれば何でもやるような連中だ。

【獅童会】【ナイトメア】と違い縄張り意識がなく、この都市の勢力争いには中立的な立場だ。


つるんでいても不自然な事ではない。


ひとまず、レインの人となりを知ろうと思っていたが、変なゲームに巻き込まれて、部下に介抱されて連れて帰られる羽目になった。



そんな感じで飲み過ぎてしまっため、珍しくぐったりしていだ。


だが……そんなことも言っていられない報告が飛び込んできた。


それはレッドドラゴンの元に潜ませていた部下からの報告だ。


「壊滅…?」


「はい。レッドドラゴンは完全に壊滅しました。」

そいつの腕は包帯でぐるぐる巻きになっている。


戦闘に巻き込まれたのだろう。


「誰がやったんだ?」


「クラウゼル公爵です。部隊を率いてアジトを襲撃されました。」


「クラウゼル公爵っていや…。無法都市を浄化させようとしてるって噂の貴族か。随分とタイミングがいいな。レッドドラゴンのリーダーが死んだ直後だろう?」


「ええ。あの時点でそれを知っていたのは我々とエプトリカ傭兵団とトレントだけでしたかからね」


(そう。リーダーの首はこのグレオールが確かに持って帰ってきた。)


「って事は、この3つのどこかに公爵のネズミがいるってことだよなぁ?」

レドリックは鋭い眼光で構成員たちを見る。

だが、ここにネズミがいる可能性は低いだろう。構成員のことはしっかりと調べ上げている。


「ひとまず、2つの組織のアジト周辺に住まわせているやつに聞いて見ますかい?公爵と通じているなら、その手の人間が出入りしている可能性がありますから」

そう言ったのは、スキンヘッドでサングラスをかけている獅童会の幹部ゴルドーだ。


「ああ、そいつらの話を聞いてからだな」


そして結果は1日経ってから出た。


「おそらく、黒はトレントですね。あそこにはここ数日騎士のような人間が出入りしていたようです。それに比べて傭兵団は幹部以外はレッドドラゴンのリーダーが死んだことすら知らなかったようです。」

そうグレオールがいった。


「なら、サクッと潰してしまいますかい?」

ゴルドーはそう言った。


「いや…。そう上手くはいかねぇだろう。あそこにはレインがいる。あの濃密な魔力と殺気は只者じゃあねぇ…。それにもう1人厄介なのがいる。」


レドリックはレインと一緒にいた白髪の少年を思い出す。


「ボスの言うとおりです。それに背後には公爵の軍もいます。獅童会だけで立ち向かうなら、少し分が悪い戦いになるでしょう。」

深刻な顔でグレオールが言った。


「グレオール、ゴルドー。【ナイトメア】と【エプトリカ傭兵団】のボスと話がしたい。」


「承知しました。」


(トレントが公爵側なのは確定だろう。そのトレントが短期間で5大勢力の2つを壊滅させた。奴らはもう勝負を決めにきている。)

状況は想定以上に厳しいのかもしれない。


(だが、思い通りにはさせねぇ…。この都市は絶対に守り抜く。)


レドリックは覚悟を決めて、拳を握った。




◆



3組織が集まる会合は、遣いを送った2週間後の今日となった。


遅くなった要因はエプトリカ傭兵団のボスが国外で長期の依頼があったからだ。



会合は無法都市中央部に位置する【ナイトメア】の支配領域である歓楽街の高級料理店の1室。



レドリックはグレオールとゴルドーを連れて、その部屋に入る。


「久しぶりだな。ババァ…」

そう言って、部屋に先に座っていた人物を見た。


その人物の見た目は白銀の髪と魔性のオーラを身に纏う美しい女性だった。実際の年齢は50代くらいだが、一切美しさが衰えていなかった。


「乙女に対して、ババァとは何だい?小僧」

そう言って、その人物は煙草を吸う。

背後には白いスーツを着た魔力量の高い屈強な男が2人いた。


その人物とレドリックの視線が重なり殺伐とした空気になる。

この人物こそがナイトメアのボスであるローザだ。


「アイツはまだか?」

そうレドリックは言った。

アイツというのはエプトリカ傭兵団のボスのことだ。


「アイツが時間通りに来る方が珍しいさね…。手紙は読んだよ。随分と大げさじゃないのかい?」


「それがそうでもねぇと思ったから、呼んだんだよ。詳しくはここで話すよ」


「そうかい……。」

そう言って、ローザは煙草を灰皿に擦りつける。


少しの沈黙の後、扉が開いた。

「お待たせ~。待った~」


重苦しい空気中の中に軽い声が入った。

だが、これはいつもの事だ。

入ってきたのは栗色の髪にサイドテールをしている女性だ。ベージュ色の傭兵服にこの国では製造されていない刀という武器を腰につけている。


そしてスペードとクローバーが背後に控えていた。


「随分珍しいね……。あんたが時間通りに来るなんて。どういう風の吹き回しだい?ジョーカー。」

そうローザが言った。


このジョーカーと呼ばれた女性がエプトリカ傭兵団のボスであり団長である。


(こいつがジョーカーか……強いな。)


レドリックはジョーカーと会うのが始めてだった。

元は自由国家オリビアのA級ハンターだったという情報は聞いていたが…。


「珍しくなんてないよ!!いつも通り!いつも通り!」


「いつも通りじゃないから言ってるんだよ!!」

ローザは少しだけ声を荒げて言った。



「まあまあ…。落ち着いて時間が勿体ないでしょう?」

何故かジョーカーがローザを宥める。

「こいつっ……。」

そう言って、ローザは軽く舌打ちした。


これがこの2人の距離感なのだとレドリックは思った。


「まぁ、揃った用だから始めるぞ。」

そうレドリックが始めるようとする。



「あ!!お前!!」

そう言ったのはクローバーだ。

(コイツ……)

「話を遮るんじゃねぇ…。殺すぞ」

そう言って、黙らせたが…


「そうだぞクローバー。静かに」

そうジョーカーが言った。


(さっきまではお前の方がうるさかったかどな!!)

その言葉を飲み込んでレドリックは話をすすめだ。

コイツらの相手をイチイチしてたら話が進まねぇ…


そしてレドリックは現状の説明を始めた。


トレントがオロチを潰したということ。これはみんな知っているだろう。


そこからトレントがクラウゼル公爵と繋がっているということ。そのクラウゼル公爵が無法都市の浄化させようとしていることを話した。



「クラウゼル公爵は王国内でも強い権力をもつ貴族だ。自身の軍を保有しているから、獅童会だけなら数の面で分が悪い。」



「具体的なプランを聞かせてもらえるかい?」

そう言ったのはジョーカーだ。


「ひとまずは連携してトレントを潰し、そこの人間を殺す。」

「そこから街の防衛強化と連携を密にして、公爵軍を迎え撃つ準備をしたい。」


「こちらからは攻めることはしないのかい?」


「現状ではな。」


「ならかまわないよ。うちは協力しようか。」

そう言ったのはローザだ。


「助かる。」

そう言って、レドリックは頭を下げた。


「うーん。」

ジョーカーは少し悩んでいた。


「公爵軍からの防衛は協力するけど、トレントの制圧はすこし気が退けるな~」

そうジョーカーが漏らした。


「理由を聞いてもいいか?」

冷静にレドリックは聞いた。


「だって、トレントは小規模の組織でしょう?そこを集団でリンチにするのはどうにもねぇ~」

額に手を当てながらジョーカーはそう言った。


「トレントが万全な状態なら公爵軍よりも厄介かもしれないぞ?」


「そうなの?」

(白々しい……。部下から報告は聞いてるだろうに)


「お前の後ろにいるクローバーなら、何でかはわかるだろう?」

そう言って、レドリックはクローバーを見た。

「あそこは2匹の化け物を飼ってる。片方はオロチを単独で壊滅に追いやるような奴だ」



「レインはトレントから依頼を受けているだけ…トレントの人間ではないよ」


(この女……やっぱり知ってやがったか。)


「レインの従者と呼ばれるクライも同じでしょう。つまり私達と貴方達のような関係よ。」

「そんな彼らが自分の命をかけてまでトレントを守ろうとするかな~」



「公爵が依頼したら受けるんじゃねぇか?」

そうだとしても、レインが公爵に協力しないわけではないだろう。


「それもどうかな~」


(ちっ…めんどくさいな。)

レドリックはそう思った。



「なら、トレントの襲撃の際は俺達の護衛としてついてきてもらいたい。それならどうだ?」

護衛なら自分からトレントを攻撃する必要がないからいいだろう?という代替案だ。


少しジョーカーは考えたが、その条件で飲んだ。



そしてここに3組織での1時的な同盟が成立した。


















当作品を読んでいただきありがとうございます。

拙い文章ではございますが、楽しんでいただければ幸いです。

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