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殺し屋レインのお仕事  作者: ナマケモノ
2章 トライザント 修行編

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トライザントの攻略


無法都市を脱出したレイン達は盗賊団が住み着いていた洞窟をベースキャンプとして活動することにした。


洞窟には盗賊達の亡骸は既になかった。

レインは盗賊団の討伐後、エルザに場所を伝えていた。

だから、公爵の兵隊が死体を回収と処理をしてくれたのだろう。


このトライザントは王国の騎士団ですら占領できなかった強力な魔物が跋扈する領域だ。このトライザントはさらに東の山脈に連なっており、その山脈はこの大陸最大の魔境と言われるリオール大森林と呼ばれている。


このトライザントとリオール大森林の境界線が神聖ブルガリア王国の国境線となる。



そんなトライザントでレインはこれから1人で探索の準備をする。


ベースキャンプの位置を確認してから、各々仕事を頼んだ。


エルザには月光丸を預け、公爵の元に向かってもらった。

公爵に現状の確認とこれからのことを聞くことが目的だ。しかし、内部情報を漏らしたくない公爵はエルザに対して情報を公開しない可能性が高い。そこで相手の精神を読む月光丸を連れてってもらった。


クライには無法都市の情報収集と、獅童会の拠点調査を依頼した。


そして、オルストンには家造りと物資調達をお願いした。

家は材料となる材木があるため、すぐにできるとのことだ。

(いや……。普通はできないだろ……。)


レインはそう思ったが、オルストンに任せることにした。

このオルストン。変人だが、かなり有能で大体何でもできる。


レインが家に住まわせてからは、魔法はもちろんのこと、料理や家事もしてくれたし、建物の補修もしてくれていた。


それに比べて、何もできない自分が少し恥ずかしくなったぐらいだ。


イケメンで頭がよくて、家事もこなさせる。そんなオルストンは結婚すれば良い夫になること間違いない。


それ故に惜しい…。オルストンは変愛なのだ。

人間に恋愛感情どころか興味すらもてず、悪魔に恋心を抱いてしまうことが。



仕事を引き受けた3人と別れたレインはトライザントの中央部に向かう。

このトライザントは中央部に行くほど、強力な魔物が多い。


もちろん今日中に探索が完了できるとは思っていない。


これからトライザントに住み着く過程で行っておかなければならないことは3つ。


①魔物調教(モンスターテイム)


②中央部付近の一帯の調査


③トライザントの支配者の討伐もしくはテイム


難関は魔物調教(モンスターテイム)とトライザント支配者の討伐だ。


魔物調教(モンスターテイム)はこれまで行ったことがない。だからどれだけ時間がかかるかわからない。正直、今日はこれができずに1日が終わる可能性がある。


そして、トライザントの支配者の討伐だ。このトライザントには支配者と呼ばれる魔物が存在する。



こいつにはトライザント周辺を囲った魔物避けの結界すら通用しない。故にこいつは山から抜け出すこともある。


そいつは名前はヒドラ。三つの頭をもち、4つの翼を持つと言われている毒竜だ。生息地域はブルガリア王国のトライザント、リオール大森林、自由国家オリビアだ。


ヒドラは大型の魔獣ですら浴びると死に至る猛毒と脅威的な再生能力を持つ魔物だ。

大陸で確認されている竜の中でもかなり強力だ。毒と再生能力に関しては竜の中で最も高いと言われている。


だが、そんなヒドラにも他の竜に比べて劣っていると言われるところがある。それは知能が低く、物理攻撃と毒を吐く以外の攻撃ができない。

つまり"魔法が使えない"ということだ。


強敵であることに変わりはないが、そこに付け入る隙が存在するとレインは思ったのだ。


だが、こいつと戦うのは今ではない。





レインはトライザントの中央部に向かって歩いていると、狼型の魔物が複数襲いかかってきた。


この狼の種族名はジェットウルフ。

ジェットというのは宝石の名前だ。その名の通り黒い光沢をもつ美しい毛並みと鋭い牙をもつ魔物だ。ジェットウルフはトライザントの中では最も数の多い魔物だ。力は大したことはないが、知能と繁殖力が高く、警戒心が強い。


レインの前に表れたのは7体。

(多すぎる…。)


最初の一匹目の攻撃をかわすと、2撃目で全方向からジェットウルフが襲いかかってきた。

それを見て、血操術を使用する。短剣で切った傷口から血液が放出し、レインの周囲に網を形成する。


それにより、ジェットウルフの攻撃を全て防ぐ。


そして、血の網でそのまま7匹のジェットウルフを捕らえようとした。


しかし一足先に網から牙を離し、脱兎の如く7匹は逃走した。


「おい!待て!!!」


レインはすぐさま血の網を蔦状に変形させ、ジェットウルフを追う。

そして、なんとか7匹とも捕まえることができた。


ジェットウルフは警戒心が強い。レインの魔力を見て、勝てないと判断して逃走したのだ。


そして、直ぐ様血液をジェットウルフの体内に侵入させる。


捕らわれた状態でジェットウルフは暴れまわる。


血液は脳に侵食し、そこで感覚器官を乗っ取る。そこで精神干渉魔術を行使する。


いつもならこれで終わりだ。これで肉体の主導権をものにできた。でも今回はこれで終わらない。

レインは考えを持たない操り人形を作りたいわけではない。


この方法で操る場合、各々で思考する能力も奪う。それに常時魔力を行使する状態になるため、消耗が激しい。


現にオロチを襲撃した際、最後の方は魔力が残っていなかった。


レインはしっかりと自分自身の意思で思考する魔物を手懐けたいのだ。レインの魔力を抑えられるうえにその生物の本来もつ力を発揮できるかからだ。



そして、脳の主導権を得た状態で遺伝子の書き換えを始める。


生物を支配するのに必要なのは恐怖だ。


無法都市の経験からレインはそう思っていた。力の強い人間が弱者を支配する光景を何度も見てきたからだ。


だが、それでは効果が短いのだ。

だから遺伝子の奥深くに自分の魔力を刻むのだ。恐怖の対象になるくらいに。そして今の痛覚が恐怖が遺伝子レベルで残るように。



そして、ジェットウルフ達の拘束を解く。


彼らはレインの前にきて頭を垂れる。


(よし!!成功だ!!)

レインはガッツポーズをとる。


しかし、レインは違和感にすぐ気付くことになる。

頭を垂れながら、彼らは震えていた。



レインは血液を介して、命令を送る。

近くの木を登れと言う司令だ。


そうすると、震えながらも彼らは近くの木を登り始めた。



(これは……酷いな。恐怖によって筋肉が硬直しているのか…)


そして一匹が木から足を滑らせて、地面に転倒した。

その狼は下を向いてトボトボと歩いてきた。


(…………これは失敗だな)


ひとまず、7匹を目の前に集める。


見張りをする司令を与えて、レインは横になって考える。


(彼らのような集団には必ずボスが存在する。彼らはどうやって率いているのだろうか…)


(やはり、種族が違うからこういったことになるのか?)



そう思い、精神干渉を使いってレインを同胞だと錯覚させた。そして、遺伝子に刻んだ恐怖心なくした。



そうすると、今度は上手くいった。

運動能力にも問題がなく、命令にも素直に従うようになった。


(でも……)


これではレインがいない時に仲間の人間を襲ったりする可能性があることに気づいた。


仲間の人間を全て同胞だと錯覚させることもできるが、それは魔力を消費が大きくなるうえに錯覚というのは長い時間が過ぎると醒めてしまうケースもあるからだ。


(それに他の…僕の親しい人たちの言うことは聞かないだろう…。彼らにとって僕がボスという位置付けになる。)


そこでレインはあることを思い出した。


(…位置付け…か…。それは役割…)





『本来秩序を維持するだけの役割にすぎないのに人間は勝手にそれに縛られるんだ。……勝手にだ。』


これはかつて月光丸がレインに言った言葉だ。



「役割の刷り込み。そしてその役割を守るような遺伝子を再形成することができれば…。自然な形で命令に従うようになる……かもしれない」



(……これでやってみるか)


そして、命令を聞かせることができた。


(ここからどうなるかわからないけど、ひとまずこれでいいだろう。だが、これはジェットウルフの知能が高いから成功したようなものだ。)


本来の魔物は役割を正しく理解するような知能がある方が珍しい。だから、知能の低い魔物は別の方法を試すか知能を向上させる必要がある。


(まぁ…今日はこれで十分だろう。)


空は既に日が沈み始めていた。

ベースキャンプから出たのは朝だったのに、随分と手こずってしまった。

テイムに時間がかかってしまうのも問題点だ。



(ひとまず、彼らにとっての僕の役割を果たすか。)


レインは自分を狙う気配に気づいていた。


空から鳥の魔獣がレインに襲いかかってきたので、その魔獣の頭を切り落とした。


かなりの大きさだったため、7匹のジェットウルフに分け与えた。




◆



レインはジェットウルフ達を連れて、ベースキャンプに戻った。


その道筋で鳥の魔獣を3匹程度仕留めたので、それも

運搬している。



洞窟に入るが、オルストンの姿は見えなかった。


千里眼を使用して、辺りを見渡すと少し離れたところにオルストンがいるのを発見した。いつものように本を読んでいるようだった。



近づくとオルストンは勢いよく振り向いた。


「レイン君か。お帰り」

「ただいま…」


「どうしたの?」

不思議そうにオルストンはレインに聞いた。


「いや……。本当に作れると思っていなかったからさ……家。」


近くに流れる清流の側に大きな家が建っていた。

木製ログハウスだ。しかも2階建て。


「水源が近くにあった方がいいと思ってね。こっちに建てたんだよ」


「何でもできるんだな。お前」


「ハハッ。本当に何でもできるなら僕はこんな状態にはなってないよ。」


(それはそうか...)


「クライくんはまだ成果が出てないみたいだから、戻らないって……」


レインは少しため息をついた。

「くそ真面目が……。」


『クライ。あんまり、無理するもんじゃないよ。大丈夫なのかもしれないけど、肉体は人間なんだから……』


『しかし……』

焦っているかのような声だ。


『食事と寝るときくらいは帰ってこい。それに情報収集なんてそんなに早く成果が出るものではないんだから...』


『はい……』


(なんかお母さんになった気分だ。)


「戻ってくるって。」


「それは良かったよ。」


「クライには休息は必要だ。あいつが肉体を手に入れてそれなりに時間が経ったけど、やはり死体の肉体は強度が弱いようだ。」


「やっぱりそうなんだね。」

やはりオルストンは知っていたのか。


「ああ。まだ大丈夫だろうけど、今年中には新しい肉体が必要になるかもな。」


「それなんだけどさ……。僕に憑依してもらうことはできないのかな?」

オルストンは重い口を開けてそう言った。



「…………多分、できる。僕が協力すれば」

レインは少し考えてそう言った。


「レイン君はクライ君が僕に憑依すると何か問題とかあるかい?」


「人手が減るのは痛いけど、存在が消えるわけではないしね。月光丸とクライがいいと言うなら……」


「本当かい!!!」

そう言うと、勢いよくオルストンは立ち上がった。


「いや~。悪魔のことを知るにはやっぱり自分に悪魔が憑いてもらうのが一番だと思ったからね~」


「でも、……多分と言ったよ?危険はある。」


「フッ。魔法研究に犠牲はつきものだろう?」


(イカれてる……。いや、それを言ったら僕もか…)


「また全員が揃った時に聞いてみればいいよ。」



「わかったよ。あと、僕は明日から何をすればいい?」


「魔道具って作れる?」

レインはオルストンにそう聞いた。


「物によるけど、材料さえあれば大体作れるよ」

それを聞くと、レインは1つのノートを出した。


レインはディランに頼んだ教本で魔道具を自分で作るつもりだったが、オルストンができるなら話が早い。


「これ作れる?」

ノートを見せながら、レインは聞いた。


「作れるよ。材料が少しいるけど……」


「じゃあ、出来るだけ多めに作ってよ。金は領収書をくれたら払うよ。手間賃を多めにつけて」


「それはありがたいよ。でも何に使うんだい?」


「彼らに着けようと思ってね」

レインがそう言うと7体のジェットウルフが出てきた。


「テイム。成功したんだね!!」


「まだ改善の余地は大幅にあるけどね」

レインは苦い顔でそう言った。


「わかった。材料が集まり次第取りかかるよ」

オルストンはそう言って、メモを取り出した。





当作品を読んでいただきありがとうございます。

拙い文章ではございますが、楽しんでいただければ幸いです。

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