勧誘とバトルと酒
「また来てしまった……」
今日は月光丸とクライを連れてカジノに来ていた。
オルストンは今日は依頼を受けているようだ。
聞いたところでは命に危険がなさそうだったので、手は出さないことにした。
レインは魔法の理論を座学で学んだことがなく、そう言った知識が豊富なオルストンには聞きたいことがいっぱいあった。
だから、死なれると困ってしまう。
今日の修練が終わり暇を持て余した。レインは懲りることがなく、この場に訪れた。
『おい!!ここはやめろ!!』
「何が不満なんだ?月光丸。」
『当たり前だ!ここは私が入れないじゃねえか!しかも、厳重な檻入れられて退屈で仕方ないんだ。』
「私も魔力封じの腕輪とやらで魔力を封じられると肉体の腐敗が進んでしまいますので……」
そうクライは申し訳なさそうに言った。
(致し方ないか……)
「なら腕輪を嵌める義務がなくて、猫が入店が可能なカジノバーならどうだ?」
これは以前行って、レインが醜態をさらした場所だ。
『それならいい。』
2人から了承をもらい入店した。
レイン達はポーカーで遊ぼうと思い、ディラーを呼ぼうと立ち上がると見知った顔と目があった。
「よぉ!レイン!!」
レインに声をかけたのはクローバーだった。
(このオッサンいつもいるじゃん……)
「オッサン。暇なの?」
「本当に失礼なガキだな。それはこっちのセリフだ。」
「僕は暇じゃないよ!最近まで本当に忙しかったんだから……」
「ああ、そういやそうだったな~」
「まぁいい。今日は1人なんだ。一緒にやるぞ。」
そうクローバーが言って、クローバーがクライを見た。
「んで誰だ?そいつ?」
「クライといいます。よろしくお願いします。」
クライはそう言って一礼する。
「レインと違って礼儀正しいじゃねぇか。それにお前かなり強いな。」
「そうですね。それなりにやれます…。」
クライはクローバーの目を見て言った。
「お前もトレントの兵隊ってことか?」
「いいえ?私はレイン様の助手というふうに見ていただければと……」
「ちなみに僕もトレントの兵隊になった覚えはないけどね」
レインは誤解がないようについでに言った。
レインとしては依頼を受けているだけだ。
「ああ?そうなのか?」
「まぁいい!それなら話がある」
そう言ってクローバーはレインに椅子をすすめる。
「お前。おれらのところに入らないか?」
「なんで?」
「ボスがお前に興味をもってなぁ…。それなりのポジションを用意するって言ってるんだ。どうだ?」
(僕みたいなガキを?)
「遠慮しておく。僕は誰かの下につくつもりはないからね。それに信用できない相手とは仕事をしないと決めてるんだ。」
「俺のことは信用できないか?」
「いいや?オッサンは傭兵団ではそれなりの地位にいるんだろうけど、全ての依頼を取り仕切ってるわけではないんだよね?」
「ああ。ボスがやってる」
「だよね。ならボスに伝えておいてよ。僕と交渉したければ、僕の前に来て直接言えってね。話はそれからだ…。」
「ハッハハハ。確かにな!わかった!そのまま伝えておく。」
◆
「今回は大富豪でいいか?」
「何?大富豪って?」
そう聞くと、クローバーは丁寧にルールを教えてくれた。
少し理解に時間がかかったが、何とかなりそうだ。
「今回も魔封じの腕輪を装着する。いいな?」
「かまわないよ。」
勿論こんなこともあろうかと魔封じの腕輪のレプリカを作成してある。それをクライに渡す。
そしてレインは本物の腕輪をつける。
(何で着けるかって?決まっている。スリルが足りないからだ……。簡単に勝ってしまう勝負なんてつまらないからだ。このドキドキがたまらないんだ。)
レインは前回の失敗から何も学んでいなかった。
そして、クローバーも腕輪を装着する。
(うん。間違いなく本物だ。)
「さて…始めるか……。」
そうクローバーが言うと、店員が近づいてきた。
「あの……。お客様申し訳ございません。お一人様相席をお願いできないでしょうか?」
店員の後ろには赤い髪をオールバックにした若い男が後ろに立っていた。
「後ろにいる兄ちゃんがそうか?」
クローバーは食いぎみに言った。
「え、ええ……。そうです。お願いできませんか?」
店員は姿勢を低くして頭を下げた。
「俺はかまわないけどよ!兄ちゃん。やるなら俺たち流のルールに従ってもらうぞ」
「かまわない。」
男は低い声でそう答える。
「ちょっと待て!俺たち流のルールって何だよ!!」
レインはどうしても確認しなければならない。
「決まってんだろ!!負けた奴はこのウォッカを一気飲みすんだよ。大富豪以外全員な!!」
「ふざけんな!前とんでもない目にあっただろ!!学習しろよ!!」
レインはそう言い放った。
お前が言える言葉ではないと月光丸は思った。
「あ?レインひよってんのか?ビビッてんのか?」
クローバーはそう挑発する。
「は?ビビッてねぇし!!オッサンのことを心配して言ってるんだぞ?」
「おいおい!!断る理由に俺を使うのはやめろよ~」
クローバーの表情がニヤリと笑う。
(ちっっ!!!)
「おい!オッサン後悔してもしらねぇぞ!!」
レインは怒りに満ちた顔で答えた。
レインは煽りに対する耐性がなかった。
「んで?あんたはそれでいいのか?尻尾巻いて逃げてもいいんだぜ?」
クローバーはそう赤髪の男に問いかける。
「あ?舐めてんのか?てめぇ…」
赤髪の男がドスの聞いた声で答える。
「やってやろうじゃねぇか!!」
赤髪の男にも煽りの耐性がなかった。
「あと、魔封じの腕輪は嵌めろよ。持ってんのか?」
「ああ。」
そういうと赤髪の男は魔力封じの腕輪を嵌める。
たしかに本物だ。
「おい。それよりよぉ…」
赤髪の男がドスの聞いた声で言った。
「これは全員が魔力を封じる腕輪をするのが条件だよな~」
男は眼光を光らせて言った。
「ああ……。そうだが?」
クローバーは、平静を保ちそう言った。
「その白髪のガキが着けてる腕輪。魔力を抑えられてねぇぞ?」
(!!!!!)
(馬鹿な見破られた!!?)
レインは驚愕した気持ちを表情に出さぬように必死に抑え込む。
「それ偽物だろう?そしてそれ以外の俺達3人のものは本物だ。」
男は眼光を光らせていった。
「………………。」
クライはぐっと黙る。
「おいおい。イカサマしようとしてたのか?おい!!」
クローバーはクライに詰めよった。
「ごめんごめん。それ僕のせい……」
「あ?お前の指示か?ガキ」
男がレインを睨み付けたが、レインは平然と答える。
「そうだよ。彼はカジノの中に入ったことがないからね~。こんなこともあろうかと僕が作っておいたんだ。でも封じ方が甘かったようだ」
「あ?それが通ると思ってんのか?」
「思っていないさ。ルールに乗っ取ってクライ。お前は不戦敗だ。勝負から降りろ。」
「申し訳ありません。」
「いや?謝らなくていい。それは僕が作ったからね。僕のミスだよ!」
「おい!俺はそれをお前が意図的にやったって言ったんじゃねえかって言ってんだよ」
赤髪の男はレインを睨み付ける。
だが、レインは人を殺すようか表情で赤髪の男をみる。
「俺が意図的にやった証拠でもあんのか?お前が勝負から逃げたいだけだろう?」
男とレインを目に目に見えないプレッシャーが包み込む。
「いいだろう!おい!ガキ泣かせてやるよ!!」
男がニヤリと笑う。
「やってみろや!!」
レインはブチギレいい放った。
そして殺伐とした空気の中ゲームは始まった。
大富豪は役の弱いカードから順番に出していき、最後にカードを出した人間が勝ちになり、次のターンはその人間から始まる。
そして最初に手札がなくなった人間が勝ちになるゲームだ。
ROUND 1
レインは手札を順調に減らしていった。クローバーは手札が悪いのか中盤になってもかなり多くの枚数を持っていた。
赤髪の男もかなり手札がなくなっていたが、レインが一足先にあがった。
「おおおおぅし!!!」
レインは嬉しさのあまり歓喜の声をあげる。
「チッ!!クソが!!!」
「手札が雑魚すぎんだろ!!」
2人が悔しがる声でレインの気持ちが高ぶる。
「じゃあ……。一気してくださいよ!一気!!」
2人とも迷うことなくコップを飲み干す。
「はぁ……はぁ……。まだまだこれからだ!!」
「ああ!!次やるぞ……。」
(2人とも威勢のいいことで何よりだ。)
このゲームのコインの割り振りはシンプルだ。勝った大富豪はそれ以外の人間から平民から25コイン、貧民から50コインを頂戴するルールだ。
たが、大富豪は最初に上がった人間が有利になるようにゲームの展開される。
ゲームが始まる前に大富豪の一番役の弱いいカードと貧民の一番強いカードを交換できるのだ。
そして2人は一杯目とはいえ、強い酒を一気に飲んでいる。明らかにレインが有利に進んでいる。
「おら、オッサン。一番強いカードくれよ。」
「チッ……クソッ!!」
クローバーは一番強いジョーカーのカードをレインに捧げる。
そしてレインはクローバーの3を差し出す。
「お!ジョーカーだ。ラッキー。」
クローバーの顔が屈辱に染まる。
ROUND 2もあっさりとレインがあっさりと勝利する。
2人は屈辱的な表情で酒を一気に飲み干す。
煽られたお返しだ。
「ちょっと弱すぎてつまんないな~。頑張ってよおじさん達?」
盛大に侮蔑の表情を作り、2人に言い放つ。
「この……ガキ……。絶対に泣かせてやる……うっぷ……」
赤髪の男は口を抑えてうずくまる。
そろそろ限界のようだ。
「はぁ!まだまだだ!!」
クローバーは前回も思ったがかなり酒が強い。こんな馬鹿みたいなルールを提案するわけだ。
ROUND 3もレインが勝った。
「ああ~。これじゃあ、つまらないな~。おじさん達弱すぎ……」
飲み終わった2人に声をかける。
「………………」
赤髪の男はもうしゃべれなくなっている。
「はぁ……はぁ……。クソ!!」
(このオッサンはやっぱりしぶといな。)
レインはクローバーを見てそう思った。
ROUND 4
今回は少しいつもと違った。
クローバーから来た一番強いカードがエースだった。
(え?嘘だろ?僕も今回そこまで強くない……。まさか……。)
悪い予感は的中した。
「うらあぁぁぁぁ!見たか!クソガキ!!」
そう言って赤髪の男が勝利した。
先ほどまで死んでいた顔に活力が戻る。
「クソ!!」
レインは都落ちとなり、貧民。つまり最下位に落ちる。
そして、トドメのウォッカの一気に飲み。
(ぐぅぅぅ……。やっぱりキツイ……)
ROUND 5
そして、最下位になったレインは一番役の強いハートの2を奪われてしまう。
返ってきたのはハートの3。
「悪いな~。」
ここまでの恨みを晴らすようにレインを煽る男。
「チッ!!」
レインはデカイ舌打ちをつき、手札をみる。
レインのカードはこのゲームが始まってから最悪な手札だった。
だが、まだレインは冷静だった。
(まだ、行ける)
中々自分の手札を捨てきれずにいたレインだが、8ぎりを使い強制的に自分のターンにする。
レインはこの時を待っていた。
「階段革命です。」
これにより役の弱いカードが強くなり、役強いカードは弱い環境に変化する。
「はぁ!!てめぇ!!!」
革命が起きた場合、一番困るのは強いカードを多くもつ大富豪だ。赤髪の男は朦朧とした意識のなか、悔しがる声をあげる。
(ざまぁないな……)
レインはこれまで知らなかったある感情に目覚め始める。
「…………」
クローバーは黙って歯ぎしりをする。
そして、レインが勝利した。
そして再び、クローバーが酒を一気に飲み干す。
赤髪の男は目こそ鋭くレインを見つめていたが、体に力が入らないようだ。
「はぁ……はぁ……。」
クローバーも息を荒くしながら耐えていた。
「どうしたの?おじさん。僕を泣かせるんじゃないのかい?」
ニヤリと笑い、レインが赤髪の男を見据える。
「く……くそがぁ……」
(キモチイイイイィィ!!!これが……これが……優越感ってやつか!!!)
今までレインは殺す人間をいたぶる奴の思考がわからなかった。早く仕事を終わらせることが自分のためにも相手のためにもなると思っていた。
だが今ならわかる。
そいつは相手の生殺与奪を握る状況を楽しんでいたのだ。今のレインと同じように
「僕は人に無理やり酒を勧めるような悪趣味はない。おじさんが「申し訳ございませんでした」と敗けを認めるなら、許してやってもいいけどね……」
「ふざけんなよ……。ふざけんなあああぁぁぁ!!」
赤髪の男が一気に酒を飲み干した。
バタンッ!!!
そう音をたててテーブルに蹲った。
(よし……。あと1人。)
レインは次の獲物のクローバーを見据える。
だが、不思議と負ける気がしなかった。
前回と今回。この男はゲームに一度も勝てていないのだ。
「もうやめてもいいよ。オッサン。もう金ないでしょ?」
レインはクローバーの持つ袋をみて言う。
「まだだ……。わかってんだろう?レイン。俺がそんなことでぇぇぇぇ!終わるはずかねぇってよぉぉぉ!!」
クローバーは上着をぬぐ。
(なんかデジャブを感じる……)
そしてレインはここから一度も負けることはなかった。
1時間後……
「さて、飯も食ったし帰るか。クライ、月光丸。」
そうして、酔っぱらい2人(1人は半裸)を置いて店をでる。
『本当にここは馬鹿ばっかりだな』
(それは僕を含めてないよね?月光丸?)
月光丸の返事は帰ってこなかった。
◆
カジノバーの2階の遊戯スペースにある男が向かう。その男の名はグレオール。オロチのスパイとして入り込んでいた獅童会の幹部だ。
そして、あるテーブルに近づく。
先ほどレインがいたテーブルだ。今は半裸のクローバーと赤髪の男が机にうつ伏せになっている。
グレオールは赤髪の男に近づく。
「何やっているんですか?ボス?」
先ほどレインとゲームをしていた赤髪の男。この男こそが【獅童会】のボスであるレドリックであった。
当作品を読んでいただきありがとうございます。
拙い文章ではございますが、楽しんでいただければ幸いです。




