レッドドラゴン掃討戦 ~ RESULT ~
財宝を大量に運びながら、広間に帰ってくると3人が談笑している様子が見えた。
(落ち着いたようで良かった。)
そう思い、レインは声をかけた。
「ひとまず下山いたします。その間に後ろにある盗難品からご自身が盗られたもののみを回収しておいてください。」
「こ、これは凄いな~」
リデルはそう言って、レインが作った水球を見た。
「これは王国の見習い魔法使いが使っているのを見て模倣したものです。大量の荷物を運ぶためにちょっとだけ工夫をいれてますけどね。」
「ふふっ!!ふわふわ~」
アリスは水玉に乗って跳び跳ねていた。
楽しそうで何よりだ。
水玉に魔力結界と防御結界を張り、移動させる。
結界を張ったのは魔物に襲われないためだ。
水玉で移動する際、狼型の魔物襲撃を受けていたが、結界があっさりと攻撃を跳ね返していた。
それでリデルとセリカは山から私物をピックアップし始めた。それを月光丸はじっと見ていた。2人が下心を出さないか警戒してのことだろうか。
(まぁ、…大丈夫だと思うけど)
そんなことを考えていると、アリスがレインの隣に座ってきた。
(近い……)
「ねぇ!レインはどこに住んでるの?」
「えっ?あー。ここから西側にある無法都市に住んでる」
「そうなんだ!遊びに行っていい?」
ケロッとした顔でアリスが言った。
「さすがに危険だと思うよ。あの盗賊みたいなやつらがいっぱいいるからね。」
「でも、レインが守ってくれるでしょう?」
「側にいたらね…。でも流石に目の届かないところで襲われたら大変だから」
「心配してくれてるの?」
顔を近づけて言ってきた。
「ま、まぁ…それは」
顔を赤くしながら言った。
「じゃあ、レインが王都に来てよ。私、王都に住んでるの!」
「王都か……」
レインはそう呟いた。
「王都は来たことある?」
「うん。数回程度なら」
レインが以前まで住んでいた屋敷は王都の郊外にある。だが、生活の活動範囲のほとんどは屋敷の周辺にある山や雑木林だ。王宮周辺の繁華街には任務の時以外では立ち寄ることはほとんどなかった。
「じゃあ、これから案内してあげるから来てよ」
(ええ……。急すぎる。僕はひとまずこの財宝達を持って帰りたいのに…。いやでもこれって、もしかしてデートの誘いだよね!だとしたら、断るのは非常に惜しいよね……。)
「僕からも頼めるかいレイン君。実は商隊の護衛達がみんな殺られてしまってね。帰りの護衛がいないんだ。僕たちが持っていた金貨はこの中にあるんだけど、それ全部もらっていいから……。どうだろうか?」
(うーん。でもこの金品を持ったまま王都に行くのもな…。荷物が…)
『なら、クライに任せてはどうだ?私も王都には行ってみたいからな』
月光丸はそう言って、チラッとクライを見た。
「レイン様。荷物の事は私が責任を持って運んでおきます。どうぞ行ってきてください。」
そうクライは口に出して言った。
「いいの?」
(何か仲間外れにするようで忍びない)
「かまいません。ただ私では来客の対応はできないので、早めに帰って来ていただけると助かります。」
クライは頭を下げて、そう言った。
「ま、まぁ……。君がそう言うなら任せるよ。」
「良いみたいなので、よろしく頼みます。アリスさん」
「……ア・リ・スと呼んでください。」
ムッとしながら、アリスは言った。
「ア、アリ…ス……」
レインは口唇を震わせながら何とか言えた。
(なんだろう…やっぱり気恥ずかしい。)
「はい!良くできました」
ニコッとアリスは笑った。
(なんで女の子の名前で呼び捨てにするときこんなに緊張するんだ…。)
その後襲撃された地点まで戻り、護衛達の亡骸を埋葬した。
自分たちのために死んだ。彼らを供養したいそうだ。
大量の荷物から必要なものを受け取り、屋敷までの運搬はクライに任せることにした。
(あ、そうだ。このまま王都に行くなら、連絡をしないと……)
そう思い、無法都市にいるエルザに連絡をとる。
『エルザさん。聞こえますか?レインです。』
『レイン君。どうしたの?』
『こちら殲滅完了しました。そこに捕らわれている方がいたので、王都まで護衛することになりました。報酬の受け取りに行くのが少し遅れますので、マスターに言っておいてもらえませんか?』
『了解。あと王都に行くなら、向こうで落ち合いましょう?母に会ってもらいたいの……。』
『承知しました。終わりましたら連絡ください。』
『はーい。』
それを聞いて通信を終えた。
◆
レッドドラゴンの本拠地は無法都市の東部に存在する宴会場があるようなホテルだ。
ここを襲撃するために王国随一の高位貴族クラウゼル公爵が殲滅部隊を連れて無法都市に訪れていた。
レッドドラゴンの本拠地から1キロくらい離れた距離に軍営を建てて会議をしていた。
その軍営には6人の人物がいた騎士風の鎧を来た男が2人、執事が1人、そこにエルザとザックがいた。そして、今回部隊を率いるレイモンド=クラウゼル公爵だ。
このレイモンド=クラウゼル公爵こそがザックのクライアントである。
レイモンドは静かに語りかけた。
「周囲の様子はどうだ?エルザ」
「現在は周囲に人の姿は確認できません。レッドドラゴンの構成員達は本拠地に集まっているようです。」
「内部の様子はどうだ?」
レイモンドは続けてザックに言った。
「かなりピリついてるようです。だが、こちらの事を感づかれている様子はありません。」
ザックは普段のバーテンダーの服装とは違い今は鎧を身につけている。そしていつもより顔が引き締まっている。
「よ今回は建物の出入口に兵を配置し、内部に私の魔法を使い、撹乱する。そして出入口から出てきた敵を包囲殲滅する。不足の事態があった場合は各々個人で動いてかまないよ。」
作戦は成ったこれから準備にかかろうとした時にエルザにテレパシーの通信が入る。
「ん?どうした?エルザ?」
動かなくなったエルザが気になってザックは声をかける。
「盗賊団の殲滅完了したって……。捕らわれてた人間を護送するから、ここに帰ってくるのは遅くなるらしいわ」
淡々とエルザが告げた。
「早すぎるだろあいつ…。もう見つけて殲滅したのかよ」
ザックは困惑しつつも顔が笑っていた。
「どうやら向こうは成功したようだな。もしかしてオロチを殲滅させた人間かい?」
レインモンドは静かにそう言った。
「ええ……」
「そいつは信用できるのか?」
騎士風の男がザックに問いかけた。
「今のところは…」
これはザックの本心だ。ただ曖昧な返事になるのはレインがどういう目的で依頼を受けてるかはわからないでいたからだ。
「エルザの方が接している時間長いだろう?どうだ?」
ザックはそう言ってエルザにふった。
「私は信用できると思っているわよ?」
「だそうだ。慎重で感の鋭いコイツが言うんだ。なら大丈夫だろ?」
そこでレイモンドが口をはさむ。
「その少年の素性はわかっているのかい?暗殺の手法は?」
「いや、報告できるようなことは何もわかっていません。申し訳ございません。エルザも任務に同行していましたが、あいつが戦っているところは見てないようなんです。」
そうザックはシラを切った。
「なるほど。何かわかればまた連絡もらえるかい?聖教側の人間だったら困るからな」
「承知しました。」
ザックはそう言って頭を下げた。
◆
(王都に向かうのは久しぶりだな…)
馬車の手綱をひきながら、物思いにふける。
護衛対象の3人は馬車の荷台で眠りについている。
『王都は思い出してしまうか?婚約者のことを。いや、元婚約者か…。』
唐突に月光丸が話しかけてきた。
『僕の記憶を勝手に見るなよ月光丸。恥ずかしい。』
『そう照れるな。あの時のお前は随分と相手の気を惹こうと頑張っておったようだからな…』
レインは短く舌打ちした
『あの娘との婚約は親同士が勝手に決めてきたんだ。相手からしたら本当に迷惑だったと思うよ。』
『貴族というのは大体の場合、そうなんじゃないのか?それに私から見た限り、あの娘は楽しんでおったと思うぞ?』
『そんな訳ないだろう?だって、あんまり面白そうな顔してなかったと思うし…』
『表情だけで人の精神状態は完全に把握できない。その証拠にお前自身もあの娘と同じような表情をしておったぞ。』
『…………。』
『お前はもっと人の心というのを学ぶべきだな…。精神干渉魔法の技量を伸ばしたいなら、そう言ったところも理解できるようにならないとな。』
『まぁ…。お前の言っていることは正しいのかもな』
僕は精神干渉魔法自体は使えるが、相手に対して複雑な命令を与えることがどうにもできない。
それは僕が精神というものに対しての理解が乏しいからだろう。
そんな時、エルザからテレパシーによる通信が入る。
『お疲れ様レイン君。こっちは終了したわ。明日は後処理があるから、明後日の昼辺りで落ち合いましょう。』
『了解しました。』
そう言って、レインは通信を切った。
当作品を読んでいただきありがとうございます。
拙い文章ではございますが、楽しんでいただければ幸いです。




