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【第80話 グランドオープン】

 電力とパチンコを手っ取り早く理解してもらうために、雨森と弥生も江差まで案内して、実際のパチンコ屋へ連れてきていた。デメタはそのままでは入れないので、リュック型のケージに入れて連れていった。



「これがパチンコなんですか? このカラクリを動かすために雷札が必要なんですね?」



 弥生が恐る恐るパチンコ・花の慶次のハンドルを回した。



「これは魔力じゃなくて雷のような電気で動いてるのですか……」



 隣で打っている雨森は既に夢中でヘソに入賞させて保留四になっていた。



「この慶次殿とやらは随分と歌舞いておられますなぁ〜。デメタも着物が派手すぎて目が痛てぇと言ってますぜ」



「ゲコゲコ!」



「お? 金屏風! これってアツいんじゃないですかい?」



「ゲコゲコ!」



「ほら! デメタ! 煙管が出ましたぜ?」



「ゲコゲコ!」



「あ、当たった! 当たりやした!」



 ここから雨森は二十連チャンしていた。デメタが透明なリュックの中からゲコゲコと喜んでいた。一方、弥生は自販機や休憩室のマッサージチェアにも興味津々で電気について学んでいた。




 ◆




数日後、ビリーのパチンコ屋の改装が終わった。



異世界のお札や硬貨が使えるサンドはまだないので、昔ながらの貸玉カウンターで人員による貸玉方式で営業することにした。各台計数機もあえて作らなかった。ドル箱を積み上げていく古き時代のパチンコ屋だ。パチンコ千八百台、スロット二百台。目押しサービスも設定告知も店内マイクパフォーマンスもアドバルーンもイベント日も店内喫煙もある、昔ながらのパチンコ屋が完成した。



あとはどの台を入れるかを決めるだけだ。この日は台の選考会。ビリーとミーネルと来翔と雨森と戸田が話し合っていた。



「台の選択は戸田くんが一番詳しいだろ? スロットに関してはしばらくのうちは日本人しか打たないと思うから、全部四号機で良いと思うんだけどどうかな?」



地方へ出張していた戸田は久しぶりに南区へ帰ってみてビリーがパチンコ屋を開業しようとしていたことに驚いた。電力の問題まで全てクリアしていたのにはさらに驚いた。



「さすが来翔さん……まさか俺の留守中にこんな事になってるとは……。それに異世界で四号機を復活させるとか、このビジネスは来翔さんが考えてるよりも遥かに凄いことになりますよ! この南区はゲートから半日で着く街なんすよ! つまり、朝イチに並ぶには奥尻島に前日泊まるしかないっす。奥尻島に宿が必要になるっす。宿はすぐには増えません。そうなると江差からの定期便の船を増やすしか無いっす。江差〜奥尻島の船便がドル箱路線になると他の船会社も参戦するっす。船が増えると江差へ渡る異世界人も増えるっす。たった一件のパチンコ屋だけで、奥尻島と江差の街が変わるんす! それに、これは嬉しい誤算なんですが、日本語のパチンコ台がこちらでちゃんと異世界語に変換されるのもでかいっす! 来翔さんはそれを知ってたんですか?」



「もちろん。うちのインコのレフトは『ありがとう!』と教えてないんだよ。日本では『φτος!』としか喋れないのに、異世界だとちゃんと『ありがとう!』と変換されてたからね。パチンコやアニメを持ってきても異世界語に変換されるだろうなと思ってたんだ」



「スゲェーっす! そのインコちゃんは超お手柄っす! エヴァなんてプレミアのセリフも多いですから、ちゃんと聞こえる方が楽しいですよね!」



戸田は二日間かけて異世界人でも楽しめそうな台を選んでいった。日本の名古屋の中古パチンコショップへ行って大量に買い付けを行い、設置した。ビリーから当面の店長に任命された戸田はやる気になって、日本と異世界を毎日行ったり来たりしていた。



そんな中、ビリーが一人の若い男のドワーフを連れてきた。



「戸田、コイツもここで働かせるぜ。コイツはドワーフのドンコ。台のメンテをやらせろ。あと、釘師としてドンコを育て上げろ。ドワーフなら誰よりも上手い釘師になれるだろ?」



「はい!よろしくっす!ドンコさん!釘師は日本でも絶滅しかけてるんで頑張ってください!」



「本物の釘師の事は知らんが、まあやってみよう。弄っても良い台があるなら弄らせてくれ」



戸田は倉庫の奥にひっそりと置かれていたCR FEVERパワフルIIを指さした。



「コイツはかなり古くてハンドルもガタガタなんすよ。綺麗に直せますかね?」



ドンコがじっくりと台を観察してから答えた。



「うむ。やってみよう。ハンドルは付け替えても良いのか?」



「ハンドルは流用品で構わないっす!盤面の汚さはあえてこのままの方が味があって好きっす。直すのはハンドル周りと錆びた釘かな?」



「任せろ。ちゃんと店で稼働できるように仕上げてやる。こんな古い台でも客はつくのか?」



「はい!俺の読みではコイツは日本人客からも異世界人客からも一番人気になると思ってるっす!デジパチはこのくらい単純明快なものが一番ストレスがたまらないっす!出玉も多いし球持ちも良い。釘調整で甘くも辛くも出来るんでホール側にしても最高傑作だと思ってるっす!球持ちが良いのでこのホールではパワフルのレートを一玉=四百Qで行こうかと思ってます!」



若いドワーフが入ったことで、ボロボロの中古台でもメンテナンスして稼働レベルまで復元できるようになっていった。




 ◆




そして数日後。いよいよグランドオープンを迎えた。



 異世界パチンコホール・遠隔屋本店。



異世界という事で未成年も男も女も遊戯可能なパチンコ屋だった。グランドオープン当日は地元の異世界人も日本人も朝から並んでいて、二千台の台は全てお客さんが座っていた。



ホールを出てすぐの所には来翔が経営する古物商がひっそりと建っていた。換金窓口は四つ。地元の主婦をパートで雇っている。初日は来翔も換金所を手伝いに入った。



夜まで大盛況が続いた。



一日中マイクパフォーマンスをしていた戸田が声を枯らしながら来翔に呟いた。



「来翔さん! 最高っす! 俺、異世界に来て本当に良かったっす!」



「お互いに、いい時にC-Classを首になって良かったね! 僕も江差の宿屋を頑張るよ。ネーラもレフトもパチンコが楽しいらしいから、これからはお客さんとしてちょくちょく来るからね!」



二人の視線の先では、【小さなお客様専用】と書かれた島でネーラとレフトとデメタが懸命にハンドルを回していた。小さなお客様専用の島だけは各台計数機にしていた。ドル箱への詰め替えが物理的に不可能だからだ。



日が落ちた後、戸田はスロットコーナーへ移動して、心待ちにしていたお客さん達の台に設定5,6冊札を次々と刺していった。スロットコーナーに座っていた日本人客がその懐かしい光景を見て歓喜していた。



そんな光景を見ていたビリーが呟いた。



「こりゃあ、スロット専用のパチンコ屋も作るのも面白いかもな……」



「実はそれ、日本にもかつてはありましたよ。四号機と共に廃れましたけどね……」



「どうも俺にはわからねぇ〜。ここまで熱狂的になれる四号機をどうして日本人は捨てちまったのかをな……」



「話せば長くなるんで今日はあえて言いませんけど、五号機には緑ドンってのがあって、それにはビリーってキャラが激アツです!」



「なんだと!? 俺の名前が激アツキャラなのか!? それは打ってみてぇなぁ〜」



「五号機にも楽しいものは多いので、今後は取り入れても良いかもしれませんよ?」



ビリーとミーネルは早速、事務所にこもって二号店と三号店の検討を始めていた。



超満員のホールの中には、戸田の枯れたマイクの声が閉店まで響いていた。



「ジャンジャンバリバリ! ジャンジャンバリバリ!」




   




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