表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
78/87

【第77話 射幸心の塊の装置】

 江差港に着いた来翔とビリーとミーネルはタクシーで宿屋・繁次郎へと到着した。



「なかなか、すげぇ宿屋じゃねぇか! 来翔!」



「まあ、元になってる家は日本国が僕一人のために建ててくれた新築物件でしたからね」



「まさかここまで本格的な宿屋だとは思わなかったぜ……俺はてっきりアチラにもあるような簡易宿だとばかり思ってたからな。ちなみに、最大で何人泊まれるんだ?」



「満室で五十人かな? 雑魚寝部屋もあるんで、すし詰めだともう少し入ります。まあ、早く入ってください。部屋まで案内します」



 来翔は二人を個室へ案内した。




 ◆




 荷物を下ろした後、三人はラッキーピエロでランチを食べた。鈴子がレジで来翔に声をかけてきた。



「もしかして、異世界のお知り合いですか?」



「はい。デカイ人がビリーさんで女性はミーネルさんです。日本語は話せないので挨拶等はできませんけどね」



 ビリーはカツ丼を、ミーネルはオムライスを食べながら来翔の説明を聞いていた。ネーラはひたすら通訳に徹している。



「結構、今から腹が減るような事をするんで、この店で満腹になるまで食べておいた方がいいですよ」



「なんだ? 戦闘でもするのか?」



「まあ、実際に見てもらった方が早いので、まずは食事を楽しみましょう」




 ◆




 ラッキーピエロを出ると、来翔は二人を江差のパチンコ屋へと案内した。



 店内に入った瞬間、騒音と光量に二人がたじろいだ。



「ここはパチンコ屋さんです! とりあえず、そこに座ってください」



 ビリーとミーネルは甘デジの海物語に座った。来翔がサンドに紙幣を入れて玉を上皿に流した。



「ビリーさん、そこのハンドルを回してみてください」



 ビリーとミーネルがハンドルを回すと銀玉が勢いよく飛び出してきたので、二人は思わず手を離した。



「うお! なんだこれは!」



「手を離さずにしばらく玉をヘソへ入れるように調節してみてください。このヘソに玉が入ると目の前の液晶が回ります。図柄が揃ったら当たりです。当たれば銀玉が増えます。増えた銀玉は景品と交換ができます」



 するとミーネルの台の液晶にマリンちゃんが現れた。ダブルリーチだ。



「ミーネルさんの台があと一つで図柄が揃います。これをリーチと言います」



 そのまますんなり444が揃い銀玉が増えた。ミーネルは時短中の違和感にすぐ気づいた。



「来翔さん、銀玉が減らなくなりましたよ?」



「それは時短と言って、しばらく玉が減らなくなります。今の当たりは単発といって連チャン確定ではないんです。確変という当たりなら連チャンが確定したり、当たりやすくなります」



 ミーネルは時短中に引き戻した。今度は確変だ。その確変が五連チャンした。ドル箱に銀玉を轟音とともに流した。



 勘の良い二人はすぐに気づいた。



「来翔、コイツはギャンブルだよな」



「ボス、しかも射幸心を煽りまくりのギャンブルです! こんなもの帝国法で一発で死刑レベルです!」



「まあまあ、二人ともとりあえず、ある程度このゲームを楽しんでみてください!」



 来翔もビリーの隣に座って打ち始めた。



 やがて演出の意味をすぐに覚えた二人はだんだんと興奮してきた。特にミーネルは目の色が鮮やかな青から、眩い程の金色の瞳へと変わっていた。ビリーもミーネルを煽っている。



「よし! いいぞ! ミーネル! お前のその先読みの能力を使って、この忌々しいマリンちゃんを何とか操作して、ダブルリーチを成立させろ! コイツ絶対にわざとさっきから外してやがるぜ!」



「はい! ボス! 私の先読みの能力で何とかします!」



 ところが、SANYOのテクノロジーは魔法を一切、受け付けなかった。マリンちゃんは安定してリーチを外しまくった。



「ダメです! ボス! このクソ女! まるで魔法を受け付けません! 魔素すら感じないのに、この私でも操作できません!」



 その時、ダブルリーチが外れたかのように見えて図柄がピョコっと一コマ戻って大当たりになった。



「や、やりました! ボス! ようやく私の魔法で図柄を一コマ戻せました!」



「あぁ、見事だ! ミーネル! 今のは俺様も見てたぜ! 間違いなく図柄が戻りやがった! これさえ出来ればもうハズレねぇ! どんどんやれ! ミーネル!」



 そんな二人を見て来翔が冷静に説明した。



「ルール上、魔力を使っても大丈夫なんですが、魔力の影響で何とかなるものでもないので、早めに諦めてくださいね。MPが尽きたら大変でしょ?」



 ところが通訳のネーラが腹を抱えて笑い転げていて、なかなか通訳が伝わらない。



「キャハハ! マリンちゃんに魔法かけてる〜! やめて! もうやめてー! 魚群を待って画面を撫でるお年寄りと同じじゃん! く、苦しい〜! 異世界人のパチンコ姿が面白過ぎて苦しいよ〜!」



 ビリーもミーネルもどんどんサンドへ紙幣を投入していった。



 結局この日は、何度かドル箱をいっぱいにすることはできたが、最終的には全て飲まれてしまった。ビリーは八万円の負け。ミーネルは六万円の負け。



来翔もまさか異世界人がここまでオカルト派だとは知らなかったので、少しだけ苦笑いをして終了した。




 ◆




 宿に帰った三人はロビーでパチンコについて語り合った。



「来翔、パチンコは面白かったが、何故、俺たちにあんなものを打たせたんだ?」



「ビリーさん、異世界でパチンコ屋をやってみませんか?」



 ビリーとミーネルが顔を見合わせて笑い出した。



「ガハハ! 馬鹿なことを言うな! 来翔! 帝国法の事はお前もわかってるよな? あんな射幸心を煽りまくりのギャンブルなんてバレたら即刻死刑だぜ? 確かに旧コナ国はならず者の街だったから、今の超法治国家にうんざりしてる国民も多い。だからといって俺様が義賊となって賭場を開くのは別だ。あんな派手な賭場は有り得ねぇ」



「もちろん、帝国法ではギャンブルはアウトです。でも、今、僕らが打ったパチンコはこの国ではギャンブルではないんですよ!」



 ビリーとミーネルが顔を見合わせて爆笑した。



「ガハハ! 何を言ってやがる! 勝ってた奴らは全員、換金してたじゃねぇか! あれは、どう見てもギャンブルだろ?」



 その瞬間、水槽のアインがニュッと水から口を出して語り始めた。



「ビリーとやら。今の来翔の言葉は本当のことだ。我が国ではパチンコはギャンブルとして成立していないのだ。パチンコ屋はあくまでも景品と交換しているだけなのだ。景品を受け取った客は景品を持って古物商へ景品を売っているだけなのだ。パチンコ屋と古物商には何の因果もない。たまたま近くで商売をしていたというだけなのだ。超法治国家だからこそ、これがまかり通る。パチンコ屋の傍で古物商を営んではならないという法律など作れるはずもないからな」



 ビリーとミーネルが唖然として顔を見合わせた。



 来翔がさらに付け加えた。



「これの許可を得るために、僕が総督に会いに行くんですよ。アインの言う通り、超法治国家だからこそ、この仕組みを強引に辞めさせることはできませんよね? これを三店方式と言います。ビリーさんがパチンコ屋を経営して、僕は古物商の方をやります!」



「来翔が換金所をやるってのかい? それはまた何故?」



 来翔は手提げ金庫を持ってきてビリーとミーネルに見せた。



「ご覧の通り、うちにはQ貨幣が集まります。お客のほとんどが異世界人なので。このQを消化できる異世界のマネーロンダリング先を探していたんです。そこでアインがこの三店方式を考えてくれました。ウチは換金所でQを消化できる。ビリーさんはパチンコ屋として儲かりますし、コナ国の国民からも感謝される。さらに、ビリーさんのパチンコ屋に日本ではもう置けない古い人気機種を輸出して置けば、日本からのお客さんも溢れます! これは間違いないです。貸玉のレートも四円じゃなくビリーさんの好きなレートにできますし、四十円とか四百円で過去の人気作を置けば日本からどっと客が来ます! 集まった円はウチに流してください。ウチはQを放出します」



 ビリーよりも秘書のミーネルが熱心にメモを取りながら整理していた。ネーラは懸命に来翔とアインの説明を通訳し続けている。



「まあ、明日は函館まで行ってマルハンという日本一のパチンコチェーン店へ行ってみましょう。江差のパチンコ屋さんとは規模が違います!」




 ◆




 それからビリーとミーネルは深夜までパチンコ屋についての相談を繰り広げていた。



 異世界語も話せるアインに色々と質問をしながら、ミーネルが必死にメモを取り続けた。アインは水からニュッと口を出しては補足説明をして、またスィ〜っと泳いでいく。



 魔族のミーネルは金色の瞳を爛々と輝かせてメモを書き続けていた。



 その横でビリーはすでに計算を始めていた。異世界最大の賞金稼ぎを束ねてきた男の商才が、パチンコという新たな獲物を前に静かに動き出していた。




   




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ