【第130話 お寿司大好き!】
江差には、追分寿司という来翔の行きつけの寿司屋がある。各種宴会などもできる個室もある為、トカゲ人類であるLEONやエルフのリスタオールなども連れて行ける寿司屋だった。最終決戦以降、フェアリーが中々帰らないので、来翔は追分寿司の大将にかなり無理なお願いをしていた。
「すいません! 大将。無茶な注文をしてしまって……」
「いや、来翔さん! 実はね。このミニチュア寿司って職人の間では腕試しで作ることがあんのよ! オイラもこう見えて若い頃はミニチュア寿司で腕を磨いたもんなんだよ! 良し! 任せてくれよ。妖精さんたちでも食べられるサイズの寿司を握ってやろうじゃないか!」
来翔がフェアリー用の寿司を握れるのかを尋ねたところから、今回の妖精寿司の事が決まったのだ。
◆
ある日の夕方、来翔家の居候達とワタル家の家族が追分寿司に集まった。どちらの家にもフェアリーがいるからだ。
「こんばんは! ワタルさん! マーガレットさん! チックル! マーガレットさんは寿司は大丈夫ですか? 一応、火を通すネタもありますけど……」
マーガレットは笑顔で答える。
「私は刺身も大丈夫ですよ! だから、普通の寿司で構わないわ。私はワサビも平気なの」
「良かった! チックル用の寿司も今夜はちゃんと握って貰えるからね!」
チックルと他のフェアリー達も、大喜びで個室内を飛び回っていた。
そして、フェアリー用の小さな寿司がズラりと並べられた。米二粒の上には、きちんと様々な刺身がのせられていて、見た目も本格的な寿司になっていた。
フェアリー用の寿司を見たフェアリーたちが、大喜びで初めて食べる本格的な寿司を堪能していた。
まずはクノンが、とびっ子の軍艦を食べた。
「何これ! プチプチだ! 美味い!」
来翔もカッパ巻きを食べながら答える。
「それはとびっ子だよ。君たちでも食べやすいよね? イクラじゃ少しだけデカすぎるもんね」
次にチックルが、カニ味噌の軍艦を食べた。
「何これ! ただの泥なのに美味い!」
来翔はかんぴょう巻を食べながら答える。
「それは毛ガニのミソだよ。泥なんて言っちゃダメだよ」
続いてネーラがウニを食べた。
「何これ! オレンジのプツプツが美味い!」
来翔はシソ巻きを食べながら答える。
「それはウニだよ。この辺の海に潜ると沢山いるんだよ」
次はエリーがアワビを食べた。
「何これ! 硬いけど美味い!」
来翔は鯖のバッテラを食べながら答える。
「それはアワビだよ。それもこの辺の海にたくさんいるんだよ。本気で岩にくっついたら、大人でも剥がせないくらい力が強いんだ」
次はメモルがシャコを食べた。
「何これ! エビかと思ったら全然違う! 身がしっかりとしてて美味い!」
来翔はガリを食べながら答える。
「それはシャコだよ。ガレージの事じゃないからね」
等と、フェアリーはひとネタひとネタ食べる度に、来翔への質問が延々と続いていた。フェアリーたちにとって、追分寿司は聖地となっていた。
◆
そんな追分寿司での幸せな夕食を食べた数日後――ゲートが初めて出現したあの日よりも遥かに、江差町民を震え上がらせる大事件が勃発してしまった。
ラッキーピエロでバイト中の来翔は、厨房でチャイニーズチキンを揚げていると、カウンターの鈴子が来翔に向かって叫んでいた。
「大変! 来翔さん! 外にウニがいる! ウニです! ウニ!」
厨房から笑いながら来翔も答える。
「ハハハ! 栗だろ? 栗! 今、ちょうどシーズンだからね……この辺の山には栗の木が結構あるんだよ」
揚げ物中なので厨房から出られない来翔の腕を無理やりに引っ張って、鈴子が尚も叫んだ。
「栗じゃないってば! 良いからカウンターまで来てください!」
グイグイ腕を引っ張って来るので、来翔も渋々厨房から出て外を見ると、ラッキーピエロの駐車場には巨大なウニがノシノシと歩いて横切っていた。
「は?」
来翔はトングを落としてしまった。
◆
その頃、江差町のフェリー乗り場には、巨大なシャコと毛ガニがフェリーを取り合って暴れていた。毛ガニはフェリーをハサミで掴んで離そうとしないのを、怒ったシャコがカニの上に乗り、しこたま殴っている。そんな巨大なエビカニ合戦を、フェアリー達が笑い転げて喜んでいる。
「頑張れー! カニ!」
「マッハパンチで倒しちゃえー! シャコ!」
この異変は、上ノ国漁港にも起きていた。ユックリと海から巨大なアワビが数体上陸して、漁港に停められていた船や車を押し潰しながら進んでいた。
そんな街の異変を見た上ノ国基地の自衛隊が出動して、10式戦車で砲撃するが、巨大アワビには傷一つ付けられなかった。そんな巨大アワビと戦車部隊の戦いも、多くのフェアリーたちがゲラゲラと笑いながら応援している。
「アワビの殻は魔法障壁よりも硬いんだぞー! 頑張れー! アワビ!」
「10式戦車も撃て! 撃て!」
その頃、奥尻島の滑走路には、巨大なトビウオが不時着して死んでいた。
江差町、上ノ国町、奥尻島は、ゲート出現以来の異変に恐れおののいていた。
(第131話へ続く)




