【第118話 軟禁じゃなく監禁】
114話が抜けておりました!
申し訳御座いませんm(_ _)m
リスタオールの回復魔法で完全回復したジムが、Tdカンパニーの拠点として借りている一戸建てに来て、来翔から説明を受けていた。
「ジムさんには悪いですが、このまま死んだ事にしてもらいます。ワタルさんは勇者の権力で地元の警察にレベッカさんと行って下さい。地元の警察からジムさんが亡くなったとモナさんへ連絡するように伝えて貰ってください。おそらく遺体確認にはモナさんがすぐに来ると思うので、モナさんへ連絡する前に、この子のスキルで他人の遺体をジムさんに偽装して下さい」
そう言って、来翔がワタルへ紹介したのは、『変化』のスキルを持ったフェアリーのロンプーだった。
「勇者さん、よろしくね!」
ロンプーが挨拶しても、その姿はワタルには見えていない。もちろんレベッカにも見えていない。なので、チックルが同時通訳をしてくれている。
「私の変化は幻影なんかじゃないよ? ちゃんと本人と同じ顔、同じ体格、同じ匂い、全部が同じに変えられるんだ!」
チックルからの同時通訳を聞いて、ワタルとレベッカがかなり驚いていた。試しにロンプーは、レフトの事を文鳥に変えてしまった。文鳥になったレフトは、本人も文鳥になりきって喜んで飛び回っている。
「凄い……完璧な文鳥だ!」
「鳥は鳥にしか変化出来ないよ。だから、そのジムの遺体を偽装するなら、人間の遺体が必要だからね!」
「大丈夫。安置室には遺体は沢山あるから」
「わかった〜。やってみる〜」
ワタルとレベッカとチックルとロンプーは、地元警察へと行ってしまった。
◆
ワタルが地元警察へ出かけたあとも、来翔からジムへと説明が続いている。
「ジムさんには申し訳ないけど、我々はかなり前からカリーナ派閥の人に監視を付けさせて貰ってたんです」
「えぇ、ようやくあの広場で雨森さんがいつも行商をしていたのかがわかりましたよ。あの広場から、モナの事を監視されていたのですね?」
すると、雨森がそれを否定した。
「あっしはモナさん担当じゃありゃせんぜ。あっしはカリーナでさぁ。モナさんとジムさんは、たまたまあっしのガマの油を買いに来てくれたお客さんだったですよ。ほら? カリーナさんのマンションには、いつもモナさんも出入りしてやしたよね? その流れで、お二人さんがあっしの元へ来てくれただけでござんすよ」
「ちなみに、モナさんには別の人がちゃんと監視で着いてますんで、安心してください。と言っても、今のモナさんはカリーナという最強のゾーンの魔道士に完璧に守られてるので、世界一安全な女性なんですけどね……。ところで、ジムさんはモナからカリーナのスキルについて何か聞いてませんか? 我々が知ってるカリーナのスキルは『スタミナ』と『魔攻up30%』くらいしか知らなくて……」
ジムは、モナとの最近の会話を思い出してみた。
「そうですねぇ〜。確か……殺し屋を雇う時に、そんな話をしたような気がします……。ハッキリとは覚えてませんが、モナがタクシー運転手をしている私なら、裏の世界との繋がりもあるんじゃないかと聞いてきたんです。そして、その時にモナから『カリーナさんが最近、深読みできるようになってやりにくくなった。判断力スキルは本人も嫌がっていたけど、私の方が困ってるの』と……。これって参考になりますか?」
それを聞いていたトンプソンが、ほくそ笑んで語り出した。
「なるほどな。あの時か……。マーガレットを拉致した時に、カリーナは作戦リーダーを殺害して、勝手な振る舞いをしたのさ。その時に、俺がカリーナの犯したミスを論理的に語ってしまったのだ。話の途中まではいつものように反抗的だったのが、ある瞬間から急に冷静になったのだ。間違いなく、あの瞬間に判断力スキルが派生したのだろう。判断力スキルが芽生えたことで己の過ちを理解できてしまい、異世界に行って俺がボスに今回の事を報告する前に、潜水艦ごと沈めようとしたんだろうな」
ジムのもたらしたカリーナのスキルの正体は、ここまでのカリーナの行動を全て理解できるものだった。トンプソンとデビットはカリーナの事をよく知ってるだけに、今は以前と違って、ただの蛮族だったカリーナではなくなっていることを確定づけられ、かなり困った顔をしたデビットがトンプソンへ尋ねた。
「トンプソンさん、あのカリーナが判断力を身につけたと言うことは、このアポロン計画も見破られる可能性が高くないですか?」
「それでもやるしかないだろう。我々では総出でかかっても、カリーナには勝てん。木べらの戦士よ。お前なら、物理と魔法が効かないカリーナとどう戦うのだ?」
来翔は、腰の業務用杓文字六十センチを撫でながら答える。
「僕にはコイツ以外の戦い方を知りません。本当に殴ってもダメな時は、さすがの僕も死ぬしか無さそうですね……。だからこそ、アポロン計画は必ず成功させましょう!」
アポロン計画について何も知らないジムは、興味津々に計画について尋ねてきたが、トンプソンはジムのことを完全に信じてないのか、デビットと来翔に口止めをした。デビットも来翔も、それに従った。
「そうですか。アポロン計画については、僕も知らない方が良さそうですね。それでは、あと一つだけ教えてください! 僕はいつモナと連絡を取り合えますか?」
「えっと……カリーナのスキルが判断力とわかった以上、アポロン計画の準備が整うまでは、ジムさんにはこの屋敷で軟禁ではなく監禁させてもらいます! ジムさんが死んだことにしないと、モナの表情や行動で必ずバレます! 今のモナはカリーナに隠し事があっちゃ、モナ自身がヤバいんです。本当に言いにくい事なんですが、カリーナ打倒のためには、ジムさんには本当に死んでもらいたいくらいなんです」
温和だと思われていた来翔からとんでもない言葉が飛び出してきたことで、ジムもかなり動揺してしまった。
「ら、来翔さん!? まさか、僕を殺さないですよね? 今、サラッと怖いことを言ってませんでしたか?」
そんなジムを見て、トンプソンとデビットが大笑いした。
「ハハハ! 傑作だな、木べらの戦士よ! お前のこと、優しいオッサンだと思われてるみたいだぞ?」
デビットも笑いながら、ジムに説明をした。
「ハハハ! ジム。ここにいるトンプソンさんと来翔さんでは、来翔さんの方がゾーンからもトカゲ軍からも恐れられている、地球人最強の戦士なんだよ? 知らなかったのかい? コチラのトンプソンさんも、かつては来翔さんに惨敗して敗走させられてるんだよ? ほら? トカゲ軍を最初に人類で撃退した人と言えばわかるよね?」
ジムは、数年前のトカゲ軍の侵攻の事を思い出していた。
「あ! 確かそんなニュースを見たような……」
来翔は恥ずかしそうに杓文字を撫でながら答える。
「ジムさんが誤解するからやめてくださいよ。僕はハンターとして当たり前の仕事をしただけなんで、ちょっとオーバーにマスコミが騒いだだけなんですよ」
その場にいる来翔以外の男たちは、来翔が本気で無自覚な事に、より一層恐怖を感じてしまった。
そんな最強の戦士から絶対監禁と言われたジムは、素直に受け入れるしか選択肢は無かった。
「わかりました。そのアポロン計画までは、屋敷で大人しくしてますよ」
こうして、ジムには客間を一室与えられ、軟禁ではなく監禁される事になった。
◆
それから数時間後。警察から連絡を受けたモナが、遺体確認のために所轄の遺体安置所で号泣していた。
カリーナは、突然早退したモナが遺体確認に行ったのだと、判断力スキルで看破していた。モナが会社から飛び出していくのを眺めながら、ほくそ笑んで、産まれてくる赤ちゃんに付ける名前を考えていた。
(女の子かしら……男の子かしら……早く産まれてこないかな〜?)
(第119話へ続く)




