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【第117話 唱えばいいよ!】

114話が抜けておりました!

申し訳御座いませんm(_ _)m

 広場でガマの油を買ったジムは、自分のタクシーに乗り込むと、一人の女性客をすぐに見つけた。


(お? 営業開始早々にありがたい!)


 ジムは、大人しめのシックなホッソリとした女性を乗せた。


「どちらまで?」


 女性客は小声で「岬まで。ウェストポイント灯台までお願いします」と告げた。


 ウェストポイント灯台とは、観光地でもなく何も無い岬にあるので、ジムも違和感は感じていたものの、営業開始一発目から長距離だったので、ラッキーと思ってタクシーを走らせた。タクシーの後方のトランク部分には、ピタリとデメタを貼り付けたままで。


 そして一時間後。タクシーは岬に到着した。


 女性客は料金を支払ってタクシーから降りると、灯台の中に鍵を使って入ろうとした。鍵穴が錆びて回らないのか、女性は扉の前で悪戦苦闘をしている。ジムは見兼ねてタクシーから降り、女性に近づいた。


「お客さん! 僕がやりましょうか?」


 女性がジムに振り返ると、その手には鍵ではなくナイフが握られていた。素早く、ジムの胸に突き刺した。


「え?」


 ジムは戸惑いながらも、力なくその場で倒れ込んでしまった。女性は振り返ることもなく、乗ってきたタクシーに乗り込み、その場から立ち去ってしまった。


 ジムは薄れゆく意識の中、ガマの油売りのガマガエルが必死でジムの元へ跳ね寄ってくるのが見えていた。


(カ、カエルくん………)


 そのまま、ジムは意識を失った。




 ◆




 ジムの胸にはナイフが突き刺さったままだったので、デメタは必死でナイフを抜こうと試みたが、ガマガエル一匹の力では、ナイフを抜くことが難しかった。まず口で咥えて抜こうとしても、ほんの少しだけナイフは浮き上がるが、リーチが足りなくて完全に抜くことが出来ない。小さな前足で掴もうとしても、なかなか掴めない。ご自慢の後ろ足では掴めはするが、掴めるだけで抜くことは出来ないのだ。


 困り果てたデメタは、自分の不甲斐なさに泣きながらも、何度も何度も咥えてみたり、前足で掴もうとしたりして、「ケロケロケロ……」といつもよりも弱々しく泣いていた。


 そんなデメタの元に、「ピヨピヨ!」と心強い声が聴こえてきた。


 デメタが涙を拭って空を見上げると、レフトが急降下してきていた。


「ゲコ! ゲコ!」


 レフトには唯一のスキルである『鷲掴み』がある。レフトは、泣いてるデメタを上空から見つけていたのだ。セキセイインコの目は、カメレオン同様に紫外線を見ることが出来る。デメタが泣いている理由も、すぐにわかった。


(あの人から血が凄く出てる!)


 紫外線を見ることのできるレフトには、人の流す血は、人間が見るよりも、より赤く、より光って見えるのだ。


 急降下したレフトは、そのままナイフを鷲掴みにして激しく羽ばたいた。それでもナイフは簡単には抜けなかったが、下からデメタがレフト目掛けて飛び跳ねた。


「ゲコッ!」


 レフトの身体にデメタが体当たりしたことで、ようやくナイフがジムの胸からカランと地面に落ちた。デメタが急いでガマの油を身体中から分泌し、傷口にペタペタと小さな前足で塗りこんでいく。


「ピヨピヨ?」


「ゲコ! ゲコ! ゲコ!」


「ピヨピヨピヨ?」


「ゲコゲコッ」


「ピヨ?」


「ゲコ!」


「ピーヨピヨ?」


「ゲーコゲコ! ゲコ!」


「ピピピピピ?」


「クワ! クワ! クワ!」


「チチチチチ?」


「ケケケケケケケケッ!」


「ピチクリピ!」


 およそ三十分後、ガマの油の回復効果でジムは目を覚ました。


「ゲコ! ゲコ!」


「ピヨ! ピヨ!」


 カエルと小鳥は喜んで小躍りしている。


「カ、カエルくん、もしかして、油で治してくれたのかい?」


 デメタはドヤ顔で「ゲコ!」と答えた。


 ジムは刺された箇所を自分で見てみると、衣服は見事に刺された箇所が切り裂かれていて、血で真っ赤に染まっていた。間違いなく刺されていたはずなのに、ガマの油の効果で傷口が完全に塞がっている。ただ、血を流しすぎたために、立ち上がることが出来なかった。


 ジムは救急車を呼ぼうとスマホを探したが、タクシーに置きっぱなしだったことを思い出し、項垂れてしまった。


「クソッ! タクシーごと持っていかれたのか〜。こんな所に人なんて来るかな?」


「ゲコ?」


「ピヨ!」


 今度はレフトがドヤ顔をして、どこかへ飛んで行ってしまった。


「ゲコ! ゲコ!」


 カエルが何故だか『心配するな!』と言っているように思えて、ジムも少しだけカエルと共に、この場でインコが帰ってくるのを待ってみることにした。


 そして、ジムは血が足りなくて眠気に襲われた。腕時計を見ると、AM11:30だった。


「もうすぐランチだね。カエルくん。僕に構わずに、この辺の虫でも食べてなよ。僕は少しだけ眠らせて貰うよ……」


 ジムは、気を失うように眠ってしまった。


 デメタは言われた通りに、岬にいたバッタ等を食べて、レフトが帰るのを歌を歌いながら待っていた。


「♪ケケケケケケケケ〜♪ クワクワクワ〜♪」


「♪ケケケケケケケケ〜♪ クワクワクワ〜♪」




 ◆




 すると、見慣れた車が岬まで走ってくるのが見えた。来翔だった。


「ゲコ! ゲコ!」


 車の窓からレフトとネーラが飛んできた。


「ピヨピヨ!」


「ゲコ! ゲコ! ゲコ!!」


「ゴメンね、デメタ。随分、待ったでしょ?」


「ゲコ! ゲコ!」


「そっか! 歌ってたら、すぐだったんだね!」


「ゲコゲコゲコゲコ」


「わかってる! ちゃんと車にはリスタオールも乗ってるから、この人は助かるよ!」


「ゲコ! ゲコ!!」


 デメタは飛び跳ねて喜んでいた。


 ようやく車が灯台まで到着し、中から来翔とリスタオールが降りてきた。すぐにリスタオールが回復魔法を唱えてくれる。


「デメタさんの応急処置が無かったら、間違いなく死んでましたわね。素晴らしいですわ、デメタ。レフトもよく知らせてくれましたわね。偉いですわ、レフト」


 デメタとレフトはドヤ顔をして、リスタオールの回復魔法を見つめていた。


 ジムは完全に回復して心地よくなったのか、柔らかな笑みを浮かべながら熟睡している。


 それを嬉しそうに、デメタとレフトが歌を歌いながら見つめていた。


「♪ピピピピピ♪」


「♪ケケケケケケケケ♪」




 (第118話へ続く)



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