表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あくまでも部長です ― 悪魔契約コーポレーション営業部 ―  作者: 白神ブナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/39

第9話 契約履行の監査

 壊された玄関ドア。

その上に立って、二体の悪魔はあいさつした。


挿絵(By みてみん)


「コンプライアンス部監査チーム ノリマキと申します」


「同じく、ゼットセダイです」


コンプライアンス部、監査チーム?

OJTで習った。確か……

主に、契約内容や条文の監査をする部署だ……


ゼットセダイと名のった若手が、続けた。


「我々、二人合わせて、その名も……」


「いや、わたしたち、そういうの無いでしょ」


まさかの、ボケとツッコミ。


「コンプライアンス部、監査チーム連中が、何の用だ」


「おや、おわかりですよね。オクト君。そして、チルさん」


「!」


な、名前を知っている。

思わず、わたしは部長の後ろに隠れた。


「名前くらいで驚くことはないでしょう。君をはじめとする、悪魔の個体情報は、我々監査チームでおおよそ把握済みです」


「ほんとですか?」


「羽の形、尻尾の先の形、角や耳の形まで……」


「じゃあ、オクト部長の好きな物とかも、わかるんですか?」


「……そーれーはー、ちょっとおじさんわかんないかなー。ごめんねー」


子ども扱いされた。

屈辱だ。


ノリマキはゴホンとひとつ、咳をした。


「本題に入りましょう」


彼らは、土足のまま、部屋の中を歩きはじめた。


「先日、妙な契約が成立しました。締結させたのはオクト君、契約者はチルさん、あなたですね。まず確認します。この契約は本当に意図したものですか?」


ゼットセダイが後を続けた。


「新人が誤って作成した可能性があります」


「えっと、それは……」


「重要文書の誤りは、減給の対象です」


オクト部長が、一歩前に出た。


「いや、誤りではない」


強く出た部長に、ノリマキは薄笑いした。


「通常、契約は人間と結ぶものです。悪魔同士の契約は極めて稀」


ゼットセダイはタッチパネルを出して、データを確認した。


「友達契約はデータベースに前例がありません」


ノリマキは、歩きながら部長の後ろに回った。


「オクト君。あなたは部長です。新人と契約を結ぶ合理性は?」


ゼットセダイは、タッチパネルをスクロールした。


「上司と部下の同居。これは公私混同の可能性があります。つまりこれは……」


ノリマキは、部長の背中で囁いた。


「友達契約ではなく、上司による囲い込みでは?」


「違います!」


気が付いたら、わたしは叫んでいた。


「では、オクト君。説明をお願いします」


……少し沈黙。


「新人の教育責任は部長にある。契約は事故だ」


「オクト君、正直者でよろしいですねー」


「褒めていただきありがとう。だが、契約者の願いは履行する」


「間違いと認めたのに?」


「履行すれば、事故では無くなる。既成事実だ。問題ない」


ゼットセダイは反論した。


「合理性がありません」


オクト部長は、メガネをくいっと上げた。


「俺は合理性だけで契約しない。契約成立なら、それを遵守する。それだけだ」


すると、コンプライアンス部が履行状況を確認しはじめた。



 ゼットセダイが、タッチパネルである画面を出す。


「履行履歴」


・スーパー

・警察

・公園

・滑り台


ノリマキはその履歴を見ていた。


「……」


オクト部長も


「……」


わたしも


「……」


ノリマキが聞いた。


「これは、……友達活動ですか?」


タルト先輩が、ここで弁護に入った。


「えっと……あれー? 僕までよく写っているねー。すごいっすねー。これは、間違いなく友達活動です」


ノリマキは、タルト先輩の方をにらんだ。


「そういえば、君。タルト君だね? 契約者が心を入れ替えて、どんどん善の方向に向かっていると、報告がありました。悪魔として、忌々しき事態です」


「ああ、あの社畜ね。なんだか断捨離したら、スッキリしちゃったみたいで……」


オクト部長が小声で聞いた。


「チルと同行した案件か?」


「はい」


ノリマキはため息をついた。


「困ったね。オクト君といい、タルト君といい……。本来なら魔界へ送還するレベル」


「それで、誰が困っていると? 勝手にそっちが困っているだけだろ。用件が済んだのなら……」


「おっと、そう言う解釈は、新人教育上好ましくありません。チルさん、こちらの方へ来てもらいます。お話を伺って、……それからでしょう」


「ど、どうしましょう、オクト部長……助けて!」


部長は黙って目を閉じ……

そして、ゆっくり開けた。


「לך הביתה(帰れ)」



気が付くと、コンプライアンス部の二人は消えていた。

わたしは、信じられないものを見てしまった。

タルト先輩は、いつも通りだ。


「部長、もっと早く、呪文使ってよ~!」


「お前も、契約者のフォローしていたのか? 心当たりがあるから、俺の家に逃げて来てたんだろう」


「違いますよ~。チルちゃんが心配で付いてきたんですよ~」



 わたしは、ひょっとして……と思い、窓の外を見た。

ノリマキとゼットセダイは、マンションの外にいる。


「はっ」


「追い出されちゃいましたね。ノリマキさん」


「そういえば、彼、クラシックタイプだっけ……」


わたしには、彼らの会話が手に取るように聞こえた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ