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あくまでも部長です ― 悪魔契約コーポレーション営業部 ―  作者: 白神ブナ


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第10話 ポテンシャル(オクト)

 夜空の下で、二体の悪魔は話し合っていた。


「このまま帰りましょうよ、ノリマキさん。戻っても、どうせ呪文使われますし……もう正直、面倒です」


「ゼットセダイ君、すぐそういうこと、言う……」


俺は、マンションの屋上の手すりに腰を落とし、ヤンキー座りで二体の悪魔を見下ろしていた。

この姿勢が、一番相手を威圧できる。


「その通りだ」


「!」


挿絵(By みてみん)


ノリマキとゼットセダイは、俺の声に驚いて上を見上げた。


「何度来ても、俺はお前らを追い払う。『ここに居させて』という契約者チルの命令なんでな」


ノリマキが手帳を取り出した。


「契約者チルさん……ねえ……。オクト君、君だいぶ長いこと人間界に滞在していますね」


「長期滞在は、違反行為なのか」


「……ではないですが、正直、困ります。もっと短いスパンで多くの契約を取ってもらわないと……」


「それは、無理な相談だ。契約営業部は人間界にあり、長期を見据えた勤務を言い渡されている」


「上の方針なら、しょうがないか」


「でも、ノリマキさん、これ」


ゼットセダイは、契約リストブックを開いて、納得した表情をした。


「……ほら、見てください、ノリマキさん。オクトさんの契約者チルさんの情報ですが……」


「何かね」


「支払われた対価。この契約が秘めるポテンシャル、なかなか高いですよ」


支払われた対価?

よくある契約の文言だったと思うが……

遺産相続の……何だっけ?

雑に練習していたから、覚えていない。

契約リストブックを見て、ノリマキでさえ、一瞬黙ってしまった。


「……なるほど、『悪魔じみた』魂胆ですね」


「要するに、きっとオクトさんは、なるべく期間を引き延ばして、契約者を利用するだけ利用しようと……」


次の瞬間、


ボキッ!!


契約リストブックは、地面に落ちた。

ゼットセダイの腕がねじれていく。

ミシミシ……

地面に降りて、俺はゼットセダイに忠告した。


「勝手な推論を抜かすな。残りの手足もへし折るぞ」


俺は手を前に出し、ギリギリと回す動作を続けた。

だが、ゼットセダイは動じない。


「おいおい、調子に乗るなよ。クラシック風情がよ」


「ゴホン」


ノリマキが、俺とゼットセダイの間に立った。


「ほら……さ……、わたしたち喧嘩しに来たわけじゃないでしょ。

もう帰るよ、ゼットセダイ君」


腕を折られたゼットセダイは、片方の手で中指を立て、俺を見下した。


「ちっ!!」


「かーえーるーよ」


ノリマキは帰り際に言った。


「まあ、タルト君とオクト君のことはいいとして、チルさんまで放免することはできません。

なので……、ひとまず、監査は続くと、そう伝えておいてください。では……」


「それ、タイパ悪くないっすか?」


「いいの!」


二人の監査員は帰った。



 ノリマキの言葉通りに俺はチルに言った。


「……監査はつづく。伝えたぞ」


チルは足をバタバタさせて悔しがった。


「そんなの~! 振り出しに戻っただけじゃないですかー!」


「足をバタバタさせるチルちゃん、かわいいねー」


タルトの笑顔に、チルは泣いた。


「ありがと……タルト先輩……うぇ~ん!」


俺はソファに腰かけ、ゼットセダイの言葉を思い出していた。


“オクトさんの契約者情報ですが……、

この契約が秘めるポテンシャル、なかなか高いですよ”

“契約者を利用するだけ利用しようと……”


バカげている。

俺が、新卒の部下を利用するなど……。


すると、チルの白い手がやさしく伸びてきて、

俺の手を取った。


「オクト部長。助けてくださって、ありがとうございます」


タルトもチルの後ろで、ぺこりと頭を下げた。


「……」


ため息しか出ない。


「……せいぜい、お前のポテンシャルは、その呑気な笑顔くらいだ」


「ん? 何の話ですか?」


「いいや……」




 *調査官悪魔たちの帰り道。


「ああ、痛い……ノリマキさん、折れた腕、治してください」


「自分でやんなさいよ」


「ノリマキさん悪魔の力は、丁寧ですので」


「……仕方ないな。見せて」


「はい」


ゼットセダイは、ちょっと止まった。


「あ、ちょっと、ストップ!」


「えっ、何?」


「やっぱり、自然治癒させたいので、三か月ほどサボっ……療養していいですか?」


「なんて、小賢しい!」



 *魔界監査局オフィス。


とあるビル。

暗い廊下を調査官ノリマキとゼットセダイが歩いている。


「身勝手な契約放棄に、無駄極まりない長期契約……。ゼットセダイ君含め、自由奔放な悪魔ばっかりで、参っちゃうよ」


「えっ? わたしもですか?」


「我々の使命は、いつ果たされるのやら」


二人は地下室へと続く階段を降りて行った。


「指名ね……。そういえば、ノリマキさん。オクトって確か、例の奴の弟でしょう?」


「ああ……、そうだったね。彼も彼で、どれだけ人間界に居座る気なんだか」


「ですね」


「兄弟そろって、困った悪魔だよ」


地下廊下の灯りが消えた。


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