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あくまでも部長です ― 悪魔契約コーポレーション営業部 ―  作者: 白神ブナ


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第73話 魔界TV特番 

 窓口の職員が告げた。


「試用期間、約三か月です」


タルト先輩が、ここぞとばかりにスクープする。


「おおおーーーっとぉ! ここで、不意打ちの魔界婚姻届けチョップがきたぁーーーー!」


「タルト先輩、うるさいです。やめてください」


「ごめんね、チルちゃん。でもこれ、会社あげてみんな中継を見てるのよー」


「はぁ? オクト部長、いいんですか? こんなことされて……」


「想定内だ。窓口の職員さん、ありがとう。では、試用期間が終わったら連絡ください」


「はい、承りました。では、次のかた、667番でお待ちの方どうぞー」


わたしは、オクト部長に背中を押されて移動した。


「ちょ、待って、待ってください。部長!」


「いいから……となりのスタジオへ移動だ」


「スタジオ?」



 わたしはオクト部長と一緒に、隣のドアを開けた。


すると、さっきのカメラマンとタルト先輩も一緒に入って来た。

――照明がまぶしい。


そこはTVスタジオで、クイズ番組のような舞台セットが置かれ、キャストが座っていた。

そのキャストとは……

ノリマキ、ゼットセダイ、本部長。

一体何のバラエティ番組?


タルト先輩が大きな声で、番組のオープニングを告げる。


「魔界のみなさん、お待たせしました。いよいよ、試用期間が始まります。婚姻適性クイズ、スタート!」


軽快なテンポのオープニング曲が流れた。


挿絵(By みてみん)


「えええええ?! 部長、何が始まったんですか? これ」


「クイズ番組のようだな」


「え? 知ってたの?」


「悪いな、チル。俺たちの婚姻は特殊だ。よって、試用期間があることはコンプライアンス部から聞いている」


「なぜ、言ってくれなかったんですか?」


「これは、サプライズだ。しかも、会社あげての」


「会社あげての?! こんなサプライズは嫌です」


「これには、管理職の意向が反映されている。ただ試用期間があると聞いたら、お前は、がっかりするだろう?」


「がっかり……通り過ぎて、混乱しています」


「フッ……なら、サプライズ成功だな」


いや、全然。

成功って言わないで。


オクト部長がにやっと笑った。

まず、普通に怖いんですけど!

会社あげてのサプライズって……


「では、このクイズの説明をさせていただきます。司会兼ADを務めますタルトでーす!」


いや、自己紹介、遅いのでは……。

ってか、兼務なのか。


「婚姻試用期間は、主に三つの審査項目があります。

・将来像適応力審査

・金銭感覚審査

・共同生活適性審査

なんだか難しい言葉が並んで、わけわかんないっすねー。とにかく、この項目ごとに、ここにいる審査員が評価します。

審査員は、アン……本部長。あぶね、本名を全部読むところだった……。そして、コンプライアンス部から、ノリマキさん、ゼットセダイです」


「よろしく……。あんパン食べる?」

「よろしくお願いします」

「なんで、僕だけ呼び捨てなんだよ、タルト」


この審査員のメンツが怖い。

オクト部長、よくこれでオッケーしたものだ。


「チル、どうだ。三か月間、これで不安にならずに済むだろ」


「はい……? 確かに、知らない悪魔の審査員よりは、マシかも」


「そうだ、よく理解できたな。この状況で、今さらジタバタしてもしょうがないだろう。本部長、忖度無しで評価の方、よろしくお願いします!」


「ふふふ……まかせてー」


タルト先輩が番組をすすめた。


「では、第一問!」


ジャジャン!


「今日めでたく婚姻届けを出した二人ですが、初めて出会ったのはいつでしょう。

①入社面接の日

②入社式の日

③配属された日

さあ、シンキングターイム!」


時計のセコンドの音が響く。


カチカチカチカチ……


「はい、では答えを見てみましょう。本部長は①番ですね。ノリマキさんとゼットセダイが③番。では、正解は……オクト部長、どうぞ」


「①の入社面接です」


ゼットセダイは悔しがった。


「くっそー! こんなの、管理職がわかっていて当然じゃん。ずるくね?」


「ゼットセダイ君、言葉遣い。一応、これオンエア中だから……」


「やべ!」


それにしても……この番組って必要なんだろうか。

わたしは疑問に思えて来た。


「部長、このクイズ番組ってずっとやりませんよね」


「心配するな、今日は特番だ。本審査はこれから三か月、実生活で行われる」


そうなの?

心配が倍増しましたが……。


タルト先輩はカメラに向かって手を振った。


「では、みなさんまた、随時お会いしましょう!」


随時なの!?

来週とか、定期的にしてよ。


審査員たちも手を振っている。

わたしも、一応カメラに向かって、小さく手を振った。

オクト部長は……、こんなとき、笑うことはしないだろうな。

だが、ふと見ると……、


「そうだな。随時お会いしましょう」


「ええっ!」


カメラに向かって、営業用スマイルだ!


オクト部長は、にやけながらわたしの頭を胸に抱きしめて、


「これで、チルは俺のものだからな……」


カメラに向かって、宣戦布告した。


挿絵(By みてみん)


やめてーーー!

嘘でもいいから、笑って―!





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