表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あくまでも部長です ― 悪魔契約コーポレーション営業部 ―  作者: 白神ブナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/74

第51話 B9フロア(オクト)

 ――その頃……



俺は、ふと手を止めた。


「……遅いな」


タルトの隣の席が、空席のままだ。


「おい、タルト、チルは戻ったか?」


「まだなんですよ。迷子になっちゃったんじゃないっすかー」


「地図は持たせた」


「部長が描いた地図、……見ましたけど、抽象画のようでしたよ」


「何を言う。……悪魔たるもの、勘で魔界を歩けなくてどうする。あれぐらいでじゅうぶんだ」


「……でも、帰ってきませんねぇ」


「……」


タルトの言うことも一理ある。

俺の芸術的な地図で、迷子になったか?

もう、12時だ。

あいつなら、「お腹すいたあぁ」と言って戻って来てもいい頃だ。


「部長、僕が探しにいきましょうか?」


「いや、いい。お前がチルを見つけたら、どこか遊びに連れ出すだろ」


「いやーん、そんな、僕って信用ない?」


「まあな」


おれは、OJTへ内線電話をかけた。


内線の通信音が鳴って、OJTが出た。


―「はい、OJTです」


「営業部のオクトだが」


―「お疲れ様です」


「うちの部下が、今日、面談でそちらに行ったと思うんですが……、まだ終わりませんか?」


―「営業部……、ああ、チルさんですね。まだ来てませんよ。こちらから、オクトさんに電話しようとしてたところです」


……来ていない?

……あり得ない。


「なっ……。すみません。ちょっと探しに行きます」


―「え? 営業部は出たんですか? まさかの迷子ちゃん……?」


「話は、あとで……」


電話を切ると、俺は急いでオフィスを出た。


「部長、どちらに……」


「すぐ戻る」


俺はロビーまで走った。

そして、エレベーターに乗り地下6階のボタンを押した。


チン!


途中、地下1階でエレベーターが止まった。

急いでいるのに……。

本部長が乗って来た。


「おや、オクトくん。どちらへ?」


「本部長、OJTに行った新入社員が戻って来なくて探しに……。すみません」


「誰が?」


「チルです。……見かけませんでしたか?」


「君……妙なこと言うね。ちゃんと見ていたの? 君の部下でしょ?」


「……そうですね」


チン!


地下6階でエレベーターの扉が開いた。


「では、探しに……」


「あ! そういえば! OJTの魔女とチルさん、このエレベーターに乗ってたよ。たぶん……」


おかしい。

さっき、OJTでは、チルが来ていないと言っていた。

本当に、本部長は……チルを見かけたのか?

それとも、見たのは事実だが、偽物を見たか……。


「本部長……、わたしはここで降りない方がいいみたいですね」


「そうそう、たぶんね。ほら、ここを見て。B9ボタンを誰か押した跡がある」


B9ボタン。

普段は、現れないボタンだ。

資格があるものが乗らないと現れない。

本部長は、ブルーのペンライトを胸ポケットから出し、エレベーターのボタンを照らした。

すると、新しく付いたと思われる悪魔特有の指紋が浮かび上がった。


「しょうがないねぇ。君の部下を、ちゃんと見てあげてね。……最後まで」


そう言って、本部長はB9ボタンを押した。


「……すみません、お手数かけます」


「うん、用事が済んだら、甘いもの奢ってね」


「お安い御用です」



 魔界B9フロア。

冷たい……いや、“温度がない”廊下だった。

この先に、いくつかの部屋がある。

ここを探す。


「本部長、ここって……」


挿絵(By みてみん)


「そうだねぇ、たぶん、この辺かな? あ、オクト君、この部屋。先に入って待っててくれる?」


「本部長は?」


「僕、やっぱりお腹すいちゃったから、パンの自動販売機、探してくる」


「えええーーー!? B9フロアにもパンの自動販売機、あるんですかぁー? ってか、チルを探すのを優先してください」


「うん、だから……、この部屋から、よく見えるよ」


「え、よく見える? ここって……」


「取調室だよ」


「!」


俺は、部屋の中に入った。

入って左側の壁が、マジックミラーになっていて、隣の部屋の様子が見える。

そこにいたのは――


“迷子になっているはずのチル”だった。

OJT魔女が座っている、その対面側。

チルは取り調べを受けていた。

ついに、ミスって本契約したことが問題になったか?


「オクト君、僕、ちょっと買いに行ってくるけど、何か欲しいものある?」


「音声……」


「ん? なに?」


「ここの音声、聞こえませんけど?」


「あ、ああ、ごめん、ごめん。はい、ここスイッチね、ポチっとな」


本部長は、ドアを閉め出て行った。


OJT魔女の声が入って来た。


「チルさん……“選ぶ”準備はできてる?」


いきなり、衝撃的な発言だ。

契約内容に触れている。

これは、対価の話だ。

無理だ。

……あいつには、まだ理解できていない。

記憶もないはずだ。

そんなことを聞いても、首をかしげるか泣き出すだけ。


だが、チルの口が動いた。

何かを言っている。

小声でよく聞こえない……。


「チルさん、……はっきりと、大きな声で言いましょうか?」


チルは、顔をあげた。

一瞬だけ、迷ったように見えた。

そして、


「はいっ!!!」


挿絵(By みてみん)


キーーーーーン!


部屋のスピーカーが音割れを起こした。

俺の耳も壊れるかと思った。

あのバカ……。

大きいにもほどがある。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ