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あくまでも部長です ― 悪魔契約コーポレーション営業部 ―  作者: 白神ブナ


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第30話 無自覚無双

 「あの、すみません。わたし、具合が悪いので、用件を早くおしゃってください」


「おっと失礼、チルさん、病欠でしたね。さっそく、本題に入りましょう」


ノリマキは、ゼットセダイに目配せして、タブレットを開かせた。


「契約内容を確認しにきました。“友達になる”契約の履行状況は?」


「……はい」


「現在、当該契約は、履行されていると判断できますか?」


挿絵(By みてみん)


言葉が、出ない。


「えっと……その……」


頭の中が真っ白になった。


友達って、何だっけ。


「答えてください」


「……わかりません」


正直に答えた。


一瞬、沈黙。


「ふむ……理解不足……ですね」


ノリマキの淡々とした声。


「では、次の確認です」


ゼットセダイがタブレットを操作する音。


「契約内容の変更の有無について、質問します」


「変更……?」


「契約対象の変更ですよ」


その言葉に、胸がざわついた。

オクト部長がいないのに、変更も何も……。


「オクト部長からタルト君へ、契約変更が行われましたか?」


「……!」


ネズミ姿のタルト先輩の目が、一瞬だけ鋭くなった。

聞いていたの?

さっきの会話。

タルト先輩が『それメモリーオーバーだよ』って話。

でもどうやって……。


「変更は……してません」


ここは、はっきりと言った。


「今後、変更の予定は?」


「ありません」


理由は分からない。

でも、自信を持って、そう答えた。


「……そうですか。ゼットセダイ君、入力してください」


「はい、……」


「チルさん? 現契約は、引き続き維持されます」


「はい」


「なお、当契約は現在、重点監視対象です」


「え?」


「不履行、もしくは契約逸脱が確認された場合、即時介入します」


冷たい声だった。


「以上です。……引き続き、監視していますので」


二人は、すっと立ち上がった。


「失礼しました。ゼットセダイ君、帰るよ」


わたしは、ノリマキに聞いた。


「あの、オクト部長の留守中を狙って来たんですか?」


ゼットセダイが、わたしに突っかかってきた。


「……何だと? それじゃ、まるで僕たちが悪者みたいじゃねぇか」


「あの! たぶん、たぶんですけど! ここに置いてある小さなぬいぐるみ」


わたしは、チェストに置かれた、フクロウのぬいぐるみを指さし、手に持った。


「これって、先日いらしたとき、置いていきませんでしたか? 

忘れ物ですよ、お返しします!」


挿絵(By みてみん)


「な、なんだと?……。こいつ……」


「さすが、オクト部長の秘蔵っ子です。よくわかりましたね」


「ノリマキさん! いいんですか? 言ってしまって……」


「バレたらしょうがないでしょ。じゃ、これは撤収しますね、チルさん」


……マジか。

あてずっぽうで言っただけなのに、本当だった。


「じゃ、オクト部長によろしく。帰ります」


「この、クソガキがっ!」


「かーえーるーよ。ゼットセダイ君」



そのまま、部屋を出ていった。


バタン


ドアが閉まった。


シーン……


「……はぁー」


タルト先輩が、大きく息を吐いて、ポンと元の姿に戻った。


「心臓に悪いって……。でも、すごいね、チルちゃん。なんで盗聴器のことわかったの?」


「タルト先輩……」


「ん?」


「さっきの……当てずっぽう」


「え?」


「本当だと思わなかった……。あぁ、こわかったぁ~!」


わたしは、今頃になって、腰が抜けて、ぺしゃんと座り込んだ。

タルト先輩は、少しだけ笑った。


「え? まぐれなの?! チルちゃん、無自覚のエスパー、怖―い」


「わたしも怖ーい。うぇーん」


泣いて、思わずタルト先輩に抱きついた。

タルト先輩が、わたしの頭をなでてくれる。


「よしよし、怖かったねー……。これさ、オクト部長に言いつけた方がいいよ」


そして、つまらなそうに、タルト先輩は付け足した。


「それと、………契約変更しないって、言ったことも……報告しな」


「……」


「自分で選択したんだね」


「盗聴されているってわかってから、それどころじゃありませんでしたよ。何を答えたのか、覚えてなーい」


「え……、それ、マジ?」


「わたし、何か言ってましたぁ?」


「チルちゃん……」


タルト先輩は、震えながら笑いをこらえている。


「それって、無自覚無双ってやつよ?」


そして、すぐにいつもの顔に戻った。


「それよりさ!」


急にテンションが上がる、先輩。


「プリン食べよ、プリン!」


「切り替え早いですね……」


「生き延びたご褒美だよ」


「何と戦ってたんですか」


「あいつら」


即答だった。


思わず、笑ってしまう。


「ふふ……」


「笑った」


「はい」


なんだか、少しだけ、安心した。


(……何かをはっきり言えたっぽい。覚えていないけど、なんで言えたのかな。ま、いっか)


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