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あくまでも部長です ― 悪魔契約コーポレーション営業部 ―  作者: 白神ブナ


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第28話 熱の理由

 朝、起きてリビングに行くと、オクト部長はもう起きていた。

シャワーはもう浴びたらしく、片手で髪をわしゃわしゃしながら、片手でコーヒーを淹れている。


「おはようございます」


「おはよう、コーヒー淹れたけど飲むか?」


「ありがとうございます。いただきます」


オクト部長の朝食は、毎日コーヒーと悪魔の総合栄養食チューブタイプだ。

目の前で、コーヒーを注いでる部長と、

昨夜、繁華街で見かけた部長は同じだ。

いや、同じはずなのに、違って見える。

……なんでだろう


「どうした?」


「へ?」


「何故、俺をじっと見ている。顔に何か付いているか?」


「付いているといえば、付いています」


「何だ」


「めがね……」


「いつもだが?」


「はい、かっこいいなぁと思って」


「ん!……、バカバカしいことを言うな! さっさとトーストでも食え。俺はもう、行くからな」


今、部長、赤くなった?

気のせいかな。


 オクト部長は先に、家を出た。

そう。

同居して、勤め先が一緒なのに、一度も一緒に通勤したことが無い。

いつも、「誰かに見られたら誤解されるー」とか、

「部下と一緒に出社する上司は、あってはならないー」とか。

言われるままに、「はい」と返事して来たけど……、

誤解って何。

何を、どう誤解されるんだろう。

タルト先輩だって、ふつうに遊びに来るし、わたしはいつでも自然体なのに。


昨日からいろんなことを考えていたら、頭の中が飽和状態。

もうこれ以上、考えるの、無理だ。

なんか……だるい。

胸の奥が、少しだけ重い

パン焼くか……食欲がないけど。


椅子から立ち上がったら、世界が180度回った。

え?

何……、


 どれくらい時間が経ったのだろう。

携帯の着メロが鳴っている。

目を開けたら、リビングの床だった。

携帯が鳴ってるけど、起き上がれない。

ま、いっか……

そのまま目を閉じた。


挿絵(By みてみん)


今度は、ガチャガチャと玄関の鍵を開ける音。

誰かが入って来る。

あの靴を脱ぐ音は……、オクト部長だ。


「おい、チル!」


あ、やっぱり、当たりだ。


「大丈夫か? 熱っ……。具合が悪いなら、何でそう言わないんだ!」


オクト部長が怒鳴ってる。

わたし、また、何かやらかした?


あれ、わたしをお姫様抱っこして、ベッドに運んでるようだ。

えー? これ、夢―? オクト部長、王子様みたーい。


わたしをベッドに寝かせてくれた部長。

ベッドを離れようとした瞬間、

気が付いたら、わたしは部長のシャツをつかんでいた。


「ん?」


わたしは、目を開けていた。


「行かないで」


「チル……気が付いたか」


「ごめんなさい。会社……」


「いい、今日は休め。有給休暇にしてやる」


「ありがとうございます」


わたし、何を口走ったんだろう。


「最近、仕事がハードだったから疲れたのかもな」


「すみません。役立たずで……」


「誰が、そんなことを言った」


「いえ、誰も……、自分でそう思いました」


「自己肯定感が低いやつだな」


「ごめんなさい……」


「何か不安なことでも?」


「……わかりません。なにかモヤモヤしているけど、それが何かわかりません」


「チルの悩みを解決する方法……。まず、問題解決力をつけたほうがいい……」


「問題解決力?」


「自分なりに分析をして、解決まで持っていく力だ」


あああー、具合が悪いのに能力の話か。

やだ、やだ、やだ、やだ。

あの人には、あんな優しい顔してたのに。


「やめて、やめてください。もう、頭の中がぐちゃぐちゃです」


「そうだな。……悪かった。今は、とにかく寝ることだ」


「ううううー」


何だか悔しい。


「ちょっと、5分ほど待ってろ。すぐ戻る」


オクト部長は、部屋を出て行った。


バタン


玄関ドアが閉まる音。

まじで、どこかへ行ってしまった。



あんなにかっこいいオクト部長だもの。

女なら、放っておかないよ。

そんな部長の家に同居して、こうして叱ってもらって、わたしって恵まれているんだ。

契約通りにしているだけだけど。



約束通り、オクト部長は帰って来た。

コンビニでいろんな飲み物やヨーグルト、プリンなどを山ほど買ってきた。

そして、


「これは、悪魔の回復薬だ。少し苦いが頑張って飲むんだ」


「ゲロゲロ! それ、知ってます。死ぬほど苦いやつ」


「大丈夫だ。この程度で悪魔は死なない」


オクト部長に渡された薬を、目を閉じて飲み込んだ。


「あとは、寝てろ。俺は会社に戻る」


部屋を出ようとした部長に、わたしは聞いた。


「オクト部長……わたしって……」


「なんだ?」


「部長に、支払ったの?」


「……対価の……話か」


部長は目を閉じてから、ゆっくりと開けた。


「お前は、あのトラブルの内容を、よく覚えていないのだったな。

安心しろ……支払いが無ければ、俺は今ここにいない。

……それだけは、確かだ」


だけど、払った記憶が無い。


「でも、わたし、どうやって支払……」


「おっと」


部長の人差し指が、わたしの口を塞いだ。


「前にも言ったはずだ。

すべては既に成ったことだと。どうでもいいことだ。

お前は何も心配するな」


「はい」


挿絵(By みてみん)


わたしは、目を閉じた。

部長がどうでもいいと言うのなら、どうでもいいんだわ。

もう、考えるのやめよう。

早く、元気になろう。



 それから、深い眠りに落ちて、目を覚ますと真夜中だった。

トイレ行こうかな。

ゴソゴソとベッドから降りようとすると、天井から声が聞こえた。


「どうした。まだ、夜の真ん中だぞ」


驚いて、腰を抜かした。


「きゃっ」


オクト部長が、天井にぶら下がって寝ていた。

片眼をあけて、わたしを見下ろしている。

そこ、わたしの部屋の天井ですけど?

……でも、いると安心だから、いっか。



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