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あくまでも部長です ― 悪魔契約コーポレーション営業部 ―  作者: 白神ブナ


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第26話 花占い(オクト)

 チルと一緒に公園に来た。

タルトという付属品も一緒だ。


「今日は鬼ごっこ、……の特別バージョン。お巡りさんごっこしまーす」


「え、ガチで?」


「先輩、引かないでください。わたしが逃げるから、二人はお巡りさんになって追いかけて」


「……俺もか?」


「部長も、お巡りさんですよー」


「別に嬉しくないが……、いいだろう」


「いいよー」


俺とタルトは、目と目が合った。

お互い、何も言わずに指をパチンと鳴らした。

悪魔の力で、完璧な警察官に、俺たちは変身した。


「わぁ、本格的。超かっこいいー!」


「おい、逃げないのか? 捕まえるぞ」


「僕も、チルちゃん捕まえよーっと」


チルは慌てて逃げ出した。

俺とタルトは、わざと二手に分かれて挟み撃ちをするふりをする。

捕まえるのは簡単だが、これは捕まえない方が楽しいと判断した。


「キャーキャー」

「アハハハハ……」


そこへ本物の巡査AとBが通りかかった。

まずい、また注意されるのか?


「こんにちは、自分のことを悪魔だと思っているお兄さん……ですよね」


「今度は、自分は警察官だと思っているのかな?」


ここは、大人しくしておく。


「はい、あ、いいえ……」


巡査たちは、にこやかに笑った。


「いいなぁ、お揃いだ」


「我々よりも、いい装備してますね」


「じゃ、ケガしないように遊んでくださいね」


俺は頭を下げた。


「はい、どうも……お疲れ様です」


はぁはぁと息を弾ませて、タルトとチルが戻って来た。


「部長! 本物のお巡りさんに、怒られたんですか?」


「いや、羨ましがられた」


「僕、こういうのじゃなくてさ……」


「あれ? 二人とも、ギブアップですか?」


「ちょっと本格的にやりすぎた。お前らで遊んでこい」


「チルちゃん、僕も。もう、ギブアップしていい?」


「うん、いいですよ。わたしはブランコで遊ぶから、見ていてくださいね」


ブランコをこぐチル。

俺はベンチで、チルを見守っている。

タルトは、ベンチの背もたれに座り、脚をぶらぶらさせている。


「部長って、チルとずっと同居してますけど、そんなに難しい契約なんですか?」


俺は腕組みしながら、チルから目を離さない。

ブランコに揺られながら、チルがこっちに向かって笑顔で手を振った。

俺は小さく、タルトは大きく手を振ってこたえた。


挿絵(By みてみん)


「お前、知っているんだろ。俺の契約者の願いは『お友達になって』……だそうだ」


「ん? それって、部長と友達になろうっていう意味ですよね? 変わった願いですねぇ~」


チルは大きく風を切る。


「物理的距離なら、もう条件を満たしていると思う。

だが、心理的距離と言う意味だとしたら、どうやって測ればいいのか。友達とは何だ」


「友達は、心理的距離が近いことですよ。測るって言うより、お互いに好きって感情があれば、もう友達だと思いますけど?」


俺は混乱した。


「好き……、感情……」


「起動したばかりのロボット……?」


好きという感情……盲点だった。

確かに、お互いの好意なしに親しくはなれない……

ひいては、“友達”にはなれないだろう。

……心理的距離。

好き。


俺はチルをどう思っている?


あいかわらず、チルはブランコで遊んでいた。

揺れるブランコ。


「好き……?」


「好き……?」


「好き、嫌い、好き、嫌い……」


上から、花びらがハラハラと降って来た。


「おい、タルト……頭上で花占いをするな」


最後の一枚が落ちて来た。


「あ、オクト部長。僕のこと、嫌いだってー」


何を今さら……。



 チルが走って戻って来た。


「帰りましょう!」


俺たちは、家に帰る道を歩いた。

チルは先頭を切って歩いている。

俺とタルトはその後ろに従った。


タルトが言った。


「部長って……、契約って言いますが……、もう普通に家族っぽいですよね」


「……?」


ますます混乱した。

友達……? 家族……?

その両方を満たす要件は、あるのか。


挿絵(By みてみん)



「タルト、……さっきから、思案してみたが……」


「なんすか?」


「チルは未だ、『面倒で手間のかかる部下』だな」


「へえ~?」


タルトは口元がニヤけている。


「チルの方は、オクト部長のこと、とっくに好きなのにね~」


「何……? 何故、お前にわかる」


「そんなの、見てりゃ気づきますって……」


そのときだった。

空気が、わずかに歪んだ。

前を歩くチルの横から、

突然、車が突っ込んできた。


「危ない!」


キキ―――ッ!


俺は、とっさにチルを抱えて、空中を一回転し、着地した。


スタッ


さながら、スーパーマンのように。

だが、例外なく指導はした。


「ボーっとするな!」


「……あ」


「しっかりせんか! 車道近くで気を抜くな! 危険はすぐそこだ!」


「すみません!」


「チルちゃん、大丈夫? 怪我してなーい?」


「すみません、大丈夫です」


「まったく……、油断してると、異世界に送られるパターンだぞ」


「ごめんなさぁい。ちょっと考え事してまして……」


「ん? 悩みか?」


「えーっと、部長と先輩の会話を聞いてました」


「……?」


「あの、違うんです」


「……? 何が」


「オクト部長のこと、好きじゃなくて……」


チルは、少しだけ視線を落とした。

何をわざわざ否定しているのだ。


「大好きなんです……」


「え?……」


「……たぶん」


挿絵(By みてみん)


言葉が、一瞬出てこなかった。

危うく、メガネがずり落ちそうになった。


衝撃的な発言をしたかと思うと……

緊張のあまり、チルは気を失った。


「えっ!?……えええーーー!!? ここで気を失うーー? おい、しっかりしろ!」


「嬉しいねえ、照れちゃうねえ、部長」


「嬉しくも、照れてもいない」


「照れ隠し、へったくそですねえ~」


「口を閉じろ!」


しょうがない。

こいつを抱っこして帰るしかないか。


まるで、……遊び疲れた子どもかよ。


気を失った部下を抱いて歩いた。

町はいつの間にか、夕焼け色に染まっていた。


……好きか、嫌いか。


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