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あくまでも部長です ― 悪魔契約コーポレーション営業部 ―  作者: 白神ブナ


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第25話 反省とお詫び

 ヘラヘラしているタルト先輩。

それを、恐ろしい形相で脅しにかかるオクト部長。

なんで、こんなことになったんだろう……。

そこまでして怒る理由が、わたしにはさっぱりわからない。


わたしは、オクト部長の袖をつんつんと引っ張った。

部長はふりむいた。


「何だ、チル……」


「オクト部長、わたし、タルト先輩に何も意地悪されてません」


オクト部長は、ため息をついた。


「……本当に、甘いやつだな、お前は」


「僕もそう思う」


呑気にそう答えたタルト先輩を、オクト部長はつまみ出した。


「お前が言うな!」


ドサッ!


タルト先輩は、玄関の外に放り出された。


「わわっ」


「オクト部長、先輩に乱暴はしないで!」


「いいか、タルト。俺の契約者に免じて、これくらいにしておいてやる。しばらく、廊下で反省してるんだな」


タルト先輩は、肩をすくめた。


「運が悪かった……い、いいえ、()()悪かったです」


「おっと、言い忘れた。タルトもうひとつだ。いいか、当分の間、お前が俺の家で飲食することを禁ずる」


「ええー?!! それはないよーーーーぉ」


タルト先輩は、これには慌てた。

廊下に出されることより、飲食禁止のほうがショックなんだ。


「悪魔の力を使おうなんて、考えるなよ、タルト」


バタンと玄関ドアは閉められた。

ドアの向こうで泣き叫ぶ声が聞こえる。


「そんなっ、あんまりですよ、オクト部長。部長~~!」



その後しばらくは、ネズミのような叫喚が、マンション中に響き渡っていた。

でも、オクト部長は、いつもどおりにシャワーを浴び、缶ビールを開けた。


プシュッ!


缶ビールを持つ手。

ちゃんとケアされたネイル。


「あああーーー、家だぁ」


「お疲れ様です」


「ん……」


「もう、家で終礼はしないんですか?」


「ああ、……タルトを追い出すのに夢中で忘れていた。だが、俺がここにいれば、する必要ないだろ」


オクト部長は、ニヤッと笑った。

くっ! ヤバい。

カッコイイじゃないですかー。

あれ? なんでかっこよく見えちゃうんだろ。


挿絵(By みてみん)


タルト先輩の鳴き声。


ギー

ギギ―ッ


マンションの管理室から、電話でうるさいと注意された。

しかたなく、部長はタルト先輩中に入れた。


「家に入ってもいいが、お前さー、ちゃんと風呂入ってるか?」


「ありがと。でも、なんでですか?」


「俺の家に来て、チルと話すんだったら、清潔にしてくれ。はい、風呂場直行!」


「えー! やめて、やめて、部長! 僕、水苦手……」


「安心しろ、お湯だ」


「ギャー!!!!」


タルト先輩は、服のままでシャワーをかけられているみたいだ。

わたしは、オクト部長を止めた。


「部長、乱暴はしないでって、言ったのに……」


「乱暴はしていない。親切に洗ってあげている」


「もう、それ虐待って言うんですよ。やめてください」


「タルト、よかったな。俺の契約者が甘くて」


「チルちゃーん、ありがとうー。部長、もう勘弁してくださいよぉ~」



 翌日。

今日は定休日。

部屋のソファーに寝転んで、くつろぐタルト先輩。


「前にも言ったけどさぁ……、元来。悪魔って僕みたいなやつがスタンダードなのよ?」


「どういう意味ですか? 先輩」


「だからさ、人の心に付け入る狡猾な存在。叱られたのは心外だったなぁ」


そんなタルト先輩を見ていると、可笑しくなってきた。


「ふふふ……」


「ん? なあに?」


「ということは、やっぱりオクト部長って……

実は、とっても、とーっても優しいんですね」


「そーお? 部長、僕には、いじわる大明神じゃん」


部長がふりむいた。


「お前は、本当に反省しているのか?(……それとも、まだやる気か?)」



ソファーにちゃんと座り直して、タルト先輩は言った。


「じゃ、チルちゃんにお詫びしようかなぁー」


「お詫びか?」


「お詫び?」


タルト先輩は立ち上がった。


「そ」


そして、わたしにむかってこう言った。


「君のこと、たぶらかそうとしたお詫びに、願いをひとつ、なーんでも叶えて上げる」


「え?」


「おい!」


「『謝罪』って名目なら、力の乱用に当たらないでしょ?」


オクト部長は、小さくため息をついた。


「まったく……」


タルト先輩は、悪魔の力を発動しようと、右手を前に差し出した。

わたしは喜んで……その手を、ぎゅっと握った。

オクト部長が慌てて制止した。


「おい、チル……」


「先輩、嬉しい! じゃあ、一緒に公園で遊びましょう」


「え……!」


タルト先輩は、わたしの手を見た。

そして、ほんの一瞬だけ、名残惜しそうに目を細めた。



 公園に向かう道を歩く。

三人揃って歩くのは久しぶりだ。

タルト先輩は、どこか拍子抜けしたような顔をしている。


「なぁーんか、調子狂うんだよなぁ……」


「お前も早く、チルの言動に慣れることだ」


「は~い」


挿絵(By みてみん)


なんか、部長と先輩はブツブツ言っていたが、わたしはとにかく嬉しい。

公園に着いたら、ブランコで遊ぼうっと。


ところで、

……対価って、結局なんだったんだろう。

まあ、いっか!


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