第17話 Forever Lie
Yoshiel様と、エモい絡みを見せたオクト部長。
「……勢いで弾いてしまった。これ、一曲だけだからな」
「みなさーん、サプライズゲスト、オクトでしたー。盛大な拍手を―!」
客席からの拍手が鳴りやまない中、オクト部長は舞台袖に歩いて消えた。
「あれ、部長。ここの席に戻んないですかね……」
「チルちゃん、部長は恥ずかしくて戻れないんだよー」
「意外と、繊細なんですね」
ライブの後半は盛り上がって終了した。
メンバーがステージから去った。
やがて、誰かがアンコールと声を上げた。
「「アンコール、アンコール、アンコール……」」
その中に、小さな声で「オクト」と聞こえる。
やがて、その小さな声は、だんだん増えて大きな渦になった。
「「オクト、オクト、オクト、オクト!……」」
タルト先輩まで、「オクト」コールをしている。
わたしは、呼び捨てに、ちょっと抵抗がある。
わたしはタルト先輩のあとに「部長」と付けた。
「オクト」「部長っ!」
「オクト」「部長っ!」
メンバーがアンコールに応えて、ステージに再登場した。
「「「わぁーーーーー!!!!」」」
オクト部長も仏頂面で、ステージに……
Yoshiel様が、マイクスタンドに立った。
「みんな、どうもありがとう。今宵はオクトに、もういっちょ頑張ってもらおうかなー」
「「「キャー!」」」
「……ギターは、もう弾かない」
オクト部長、ステージに出て来て、まさかの反抗期?
と、思ったら……
オクト部長は、ピアノの前に座った。
「え?」
「チルちゃん、あの名曲が聴けるぞ」
「名曲?」
「シーッ!」
静まりかえったアリーナ会場。
オクト部長のピアノは美しい旋律を奏でた。
そして、
♪壊れないふりをして
壊れていく音を 飲み込んだ
正しい顔を選んで
本当の声を 消していた
――それでも♪
ゆっくりと静かにYoshiel様が歌う。
なんだろう、この周波数……
さっきの音と、少し違う。
胸の奥に、まっすぐ届いてくる。
♪Forever Lie
繰り返した 偽りの中で
嘘でもいいから そばにいて
本当なんて 言えないまま
この契約が 嘘だとしても
手放したくない♪
凄い、何かわからないけど心が、揺さぶられる。
……それって
どういう意味なんだろう。
胸の奥が、ぎゅっとした
……あれ?
タルト先輩にハンカチを差し出されるまで、わたしは自分の涙に気づかなかった。
わたし、泣いてたんだ。
♪Forever Lie Forever Lie
嘘でもいいから そばにいて♪
最後はYoshiel様が、会場にマイクを向け、みんなで大合唱だ。
感動のなかでライブはおわった。
場内照明がつき、観客は出口へと向かった。
「えへへ、泣いちゃった」
「よしよし、いい子だねー」
「タルト先輩、やめてくださいよー、もー」
じゃれあっていると、スタッフが近づいて来た。
「関係者の方ですよね、楽屋でバンドメンバーがお待ちです」
「わーい! 関係者でーす」
タルト先輩、調子良すぎ……
楽屋に案内されると、
……空気が、止まっていた
真っ先に、目に飛び込んだのは……
Yoshiel様と、オクト部長の睨み合いだった。
椅子に座って、二人とも鋭い目をギラギラさせている。
「タ、タルト先輩、あの二人、めっちゃ睨み合ってる……」
「怖いね……」
他のメンバーも、この空気にビクビクしている。
「すげー圧だよな」
「やっぱ、兄弟だよな。目元似ているわ」
兄弟と言う言葉に、Yoshiel様とオクト部長は反応した。
ぴくっ!
「「似ていない……」」
え、もしかして「似ている」は禁句なの?
やっぱり、この兄弟は仲が悪いのか!
オクト部長は立ち上がった。
「案ずるな」
ひっ……何?
「Yoshielの目は、俺と違って愛くるしい!」
Yoshiel様の表情が変わった。
「いや、何、言ってんだよ……」
うん、うん、そうだ。
君たち、ほぼ同じ目をしてるよ。
「その目は節穴か? オクト」
え?
「オクトのほうが、優しい目してるけど?」
オクト部長は、言われて悔しそうだ。
「Yoshielのほうが……」
「オクトのほうが……」
なに、この二人。
ひいき目で見つめ合っていたの?
「とりあえず、ライブに来てくれてありがとな」
「別に……、不可抗力だった……」
「お互い、新メンバーと部下は大切にしたいだろ。一時休戦だ」
「仕方があるまい」
「かわいい部下たちだね。君がタルト君?」
「はい! DMありがとうございました!」
「いえいえ、君のおかげでオクトに会えた」
Yoshiel様は、わたしに視線を動かした。
「君もオクトの部下?」
「はい、わたし、オクト部長の部下で、同居人です。友達になる予定で契約してます」
「チル、余計なことを言うな」
「へぇー、チルっていうんだ。可愛いねー。契約者なんだ、オクトの。ふーん」
あれ? わたし、何か悪い事言ってしまったのかな……
「あの、オクト部長は、どうして今、バンドメンバーじゃないんですか?」
「チルちゃん、ストレートに聞きすぎだよ~」
タルト先輩も、オクト部長も固まった。
「物おじしない子なんだね」
Yoshiel様は、笑った。
タルト先輩「ここで★入れると、部長の好感度上がるよー!」
オクト部長「上がらん」
チル「え、上がらないんですか!?」
オクト部長「面白いと俺の好感度は比例しない……」
タルト先輩「出た、ロジックお化け。でも★入ったら嬉しいよねー」




